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0145・死霊術士とアンデッド




 Side:ハトホル



 <乙女騎士>のリーダーが挑発すると、敵がそれに釣られて大きな声を上げました。

 まあ、敵が出てきてくれる方が分かりやすくて良いのですが、このリーダーさんは分かっていて挑発しています。


 明らかに相手が居る方向に向かって喋っていましたし、これ見よがしな言い方でした。

 何と言いますか、この方は開拓者っぽくないのですよね。

 もっとちゃんとしている気がします。

 それこそ騎士のような……。



 「チッ! バカが挑発に乗りやがって。適当に無視してりゃいいものを……!」


 「何だと貴様! 我が国が侮辱されたのだぞ! 許せる筈がなかろうが!!」


 「そんな事を今ホザいてる場合か! それよりも上手くいってるんだろうな? やるべき事を忘れて挑発に乗ったんじゃ、後でどうなるか分からんぞ!!」


 「既に上手くいき、そして終わっておるわ! ワシに不可能などない!!」



 ローブを着た年寄りのような声の<アンズル>が自信満々に言っていますが、上手くいったとはいったい何でしょう?

 少々嫌な感じがしないでもありませんね。

 まさかとは思いますが、強力なアンデッドを用意していたのでは……?


 そう思った矢先、彼らの後ろから「ドスン!ドスン!」という音がしてきました。

 これは相当の重さの者が動いているようです。

 本当に嫌な感じしかしませんね。



 「ふはははははは!! これぞ<蠱毒の法>を用いて生み出したアンデッドよ! 本来の計画であればアンデッドで魔物を追いたて、オムテスの王都に雪崩れ込ませる予定だったが、こちらの方が素晴らしかろう!」


 「なに!? そのような大悪事を行うつもりだっただと!? 無辜の民を殺戮せんなどと企てるとは、ゼンス王国の者どもは鬼畜外道だな!!」


 「ははははははは! 弱者がようも吠えるものよ。戦争など敵を殺戮するものぞ、そうやって古より土地を奪ってきたのであろうが! 今もまた同じ事をしておるに過ぎん。お前達の祖先も我らの祖先も何も変わらんわ!!」


 「そんな問答な、ぐぶぁっ!?」


 「うはははは! 不用意にそやつに近付くからだ。そやつは<蠱毒の法>で作り上げたのだぞ! もはや<死霊術士>であるワシの命も碌に聞かん、完全なアンデッドぞ! その為に徹底的に森の魔物を殺して、付け加えたのだからな!!」


 『成る程。元々のアンデッドに付け加えてキメラ化した訳ですか。面白い発想ではありますが、よくもまあ無駄な事をしますね。アンデッドだから可能ではありますが、崩壊も早まりますよ。アレは』


 「確かにヌンの言う通り、アレはキメラだな。足が八本か? しかも頭は二つあるしさ。キメラなのにオルトロスみたいになってるじゃないか。足は八本でスレイプニルってか? 意味が分からん」


 『狼系が主体なのは分かりますが、ぎだらけの肉体です。アレを維持するのは難しいでしょう。しかし短期的なら効果がありますし、そうなると厄介ですね。結局は発展性の無い技術ですが』


 「長時間は保たないうえに、重さとか色々考えて作る必要があるからか。アレも頭が二つで前に重量が寄ってるから、足を八本にして支える必要がありそうだし。確かにあまり発展性は無さそうだな」


 「何だと!? おのれ、我が研究を愚弄しおって! ゆけ、我が研究3号! 貴様を愚弄するこやつらを叩き潰せ!!」


 「「………」」



 あの頭が二つの狼アンデッドは喋る事が出来ないようで、吠えるような格好をした後に襲ってきました。

 それに対してイシスが前に出ると、薙刀で相手の顔を叩いています。

 どうやらそのついでに浄化したようですが、足りていません。



 「くそ。どんだけ瘴気を集めやがったんだ? 浄化出来たのは僅かだけだぞ、いちいち面倒な事をしやがって! すまんが、そいつらを捕まえていてくれ! こっちは時間が掛かる!」


 「お、おう! 分かった! こいつらを捕まえりゃいいんだな!! アンデッドはオレ達にゃ無理だから、そっちは任せる!!」


 「すまねえが、頼むぞ! オレ達じゃアンデッドに対しては戦力になりゃしねえ!」


 「私達も奴等を捕縛するぞ! なんとしてもここで捕まえるのだ!」


 「チッ! 他にアンデッドは無えのか!? このままだと押し潰されるぞ!!」


 「全て使って研究3号を作りだしたに決まっておろうが! 全てを使わねば完成せんかったわ! ワシが<蠱毒の法>を完成させるのに、どれ程の苦労をしたと思うておるのだ!」


 「んなもん知るか! このままじゃ数の差で捕まるしかないんだぞ! あんたこそ分かってんのか!?」


 「ふん! 全て研究3号が打ち倒すに決まっておろうが! アレは多くの生き物を殺させ、その負の感情も瘴気も多量に吸収しておる。並のアンデッドと同じではないわ!!」


 『瘴気を意図的に生み出し、それを自身の作ったアンデッドに強制的に注入したという事ですね。その辺りが限界とも言えるのですが、応用が効かず硬直する技術なのですよ。だからこそ私は切り捨てたのですが』


 「うぉっと、危ない。切り捨てたって事は先が無いのか? それとも何がしかの制約でもあるのか?」


 『あれは確かにキメラ化させて、短時間でも凄い力を与えられると錯覚するのでしょう。しかし瘴気の本能からは逃れられないのです。今もイシスが対抗できているように、キメラ化した肉体を全て有効に活用はできません。それが限界なのですよ』


 「成る程、な!? っと危ない。しっかしバステトとハトホルも手伝ってくれてるのに、簡単に浄化が終わらないのも難儀なものだな」


 「グルォァァァァァァァァッ!!!!!」


 「くそ、てこずってる間に何かが来たぞ! 魔物を殺したとか言ってたが、まだ残ってたらしい!」


 「アレはクェルベアーじゃねえか!! あのプッツン熊がなんでこんな所に出てくんだよ! しかもこいつデカ過ぎるだろ!?」


 「くそ! 後ろからグボァッ!?」


 「おいだいじょ、ゲビッ!?」



 ゼンス王国の兵士か何かが次々に殺されていますが、恐ろしいほどに大きな熊ですね。

 私達は頭が二つのアンデッドと戦っていて手が放せませんので、向こうは皆さんに何とかしてもらいましょう。


 流石にアンデッドは私達で何とかするのですから、向こうは任せるしかありません。

 それにしても瘴気がなかなか減りませんね?

 今までのアンデッドと同じではないのでしょうか?



 「くそっ! ヌン、このアンデッドおかしいぞ! 何でここまで浄化の効きが悪いんだ!? 今までのアンデッドとこいつが違いすぎないか?」


 『おそらくですが、素体のアンデッドに何がしかの改造を施しているのだと思われます。だとするとかなり厄介な代物になっているかもしれません。一気に魔力を使って浄化をした方が早いでしょうね』


 『結構な魔力を使ってるわよ? それ以上ともなれば、魔力が枯渇しかねないじゃないの。それに、今までに比べて倍以上の魔力を必要としてない? 一対一って感じじゃないわよ』


 『確かにそうですね。二対一とか三対一という感じがします。凄く瘴気が削れにくいうえに、このアンデッドの瘴気が非常に多いようですし。いったいどうなっているのでしょう?』


 「ヌンが言ってた改造なんだろうが、いったいどんな改造をしやがったのやら、な!」



 再び噛みつきをしてきたのですが、すんでのところでイシスは避けたようです。

 イシスが目の前で囮となってくれているから浄化が出来ますが、私はあんな所で戦うなんて恐くて出来ません。


 よくイシスはあんな戦いが出来ると思いますが、それよりヌンが黙ったままなのが気になります。

 何かを考えているのでしょうか?


 それがまともな事ならいいのですが、ワザと私達に経験させる為に手加減とかしてませんよね?

 ヌンならやりかねないと、前にイシスが言っていたのですが……。


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