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0144・ゼンス王国の元凶と神




 Side:???



 「オムテスの東の果てに行かせておった者が帰ってきたらしいが、どうだったのだ?」


 「はい。帰ってきた者は一名、それも<死霊術士>には関わらずに監視しておった者のみにございます。その者が申すには全ての者が辺境のウィーグン家の者に捕まったとの事」


 「なんだと? アンデッドの為の死体を200は持って行けと命じた筈だぞ。それで失敗したというのか?」


 「ハッ! 何でも開拓者の何者かがアンデッドを浄化したとか何とか聞いたそうですが、それ以上は探れなかったのと、急いで報告する為に戻ってきたそうでございます」


 「探れなかっただと? そやつが手を抜いたのではなかろうな?」


 「閣下のお怒りは察するところではありますが、監視の者は公爵家の影でございます。彼らが探れぬと申す以上は難しいかと。……呼びますか?」


 「監視者は我が家の影であったか。……話が聞きたい。責は問わぬ故、疾く参るように申せ」


 「かしこまりました。……おい、三の七を呼んで参れ」


 「ハハッ!」



 家令の命を受けた執事が部屋から出るのを見送りつつ、少々策を変更せねばならんかとも考える。

 今もまだ、あの王はゴネているが、もはや我が国は止まれぬし止められぬ。


 【死霊術】だろうが何であろうが使い、我が国を豊かにする為の土地を得なければならんのだ。

 我が国の土地は悪過ぎるし、多くの学者が散々に調べても土質を改善する事は出来なんだ。


 たとえ<ソーリャ>をどれだけ殺そうが、我が国の者が毎年飢え死にしておる以上、それを見過ごす事は出来ん。

 貴族として出来るわけが無い!


 後世においてどれだけそしられようとも、我らはもはや止まる事など出来んのだ。

 旗印にされる王には気の毒だと思うが、それでもあの強欲な侯爵家の者どもを纏めるには、欲で釣るしか方法が無い。


 それ以外に方法があればよいが、そんなものがあるのならば、先王陛下も父上も【死霊術】に頼ったりせんわ。

 たとえ手を汚してでも行ったのは、全て国の為ぞ。

 にも関わらず己に責が回ってきたら日和りおって。



 「失礼いたします」 「失礼いたします!」



 ノックの音がしたので許可をすると、先ほど部屋を出た執事と少々疲れた顔の者が部屋に入ってきた。

 どうやら急いで帰ってきたので、未だ回復しておらぬようだな。

 しかし早めに正しき情報を聞かねばならん。


 ここは我慢をしてもらおうか。

 とはいえ、我が家の影であれば情報が重要な事は知っておろうがな。



 「急いで帰ってきたと報告を受けたが、詳細を探る事が出来なかったという。何か理由があるのか?」


 「ハッ! どうもアンデッドを浄化したという者とギルド長が揉めたらしく、その者どもは依頼が終わるとすぐに領都を出たようでして、探る事は出来ませんでした。また、ウィーグン家の領都のギルド長は先代の妻でございます。探る事は難しく……」


 「成る程。それは探ろうとすれば見つかるであろうからな、仕方あるまい。しかしアンデッドを浄化したという者が分からぬのは痛いな。策はどうなっておった?」


 「まずはウィーグン家において新しく見つかったという鉱山を標的に致します。そちらに目を向かせている間に王都が襲われる予定だったのですが……」


 「王都の方にアンデッドを浄化した者が流れれば、その限りではないという事か。王都の方は確か……森にアンデッドを放して、王都の方へと魔物をけしかけるという事であったな?」


 「はい。鉱山の方に魔力量の多い者をあてがわざるを得ませんでしたので、他の場所ではアンデッドで通常の魔物をコントロールする方法をとっております。その方が魔力の消費は少なくて済みますので」


 「魔力の多い者……? ああ、あの不器用な女<死霊術士>か。なんでも魔力量は他者の2倍から3倍もあるというのに、何故か小さいものしか使役できなんだ者な。数だけは揃えられるので鉱山に行かせたのだったか」


 「はい。その者でさえ魔石を使って一時的に200が限度でございます。200と言ってもネズミであったりコウモリであったりが殆どで、後は小型の狼などですが」


 「アンデッドは大型の方が使いやすい。である以上は小型しか使役できん者はな……評価できん。いかに魔力が多かろうが、役に立たんのでは使えぬしな。鉱山のような閉所でなければ使えまい」


 「その者が捕まったとて然してこちらの情報は持っておりません。もう一人の方は伯爵家のボンボンです。高位術士ではありますが、術士として優秀なだけで貴族としては愚鈍ですので、情報の流出は無いでしょう。そもそも計画の概要も知らせておりません」


 「ならば問題あるまい。それで王都に行かせた方はどうだ? こちらは大丈夫な奴等か?」


 「そちらも捕まったとして問題の無い連中です。ですが死体集めと暗殺をしている方は捕らえられるとマズいかと。ダンジョンのあるチャルタンの町に行かせている者達です」


 「ダンジョンでアンデッドの為の死体集めと、強力な力を持つ開拓者の暗殺。死体集めはともかく暗殺はどうなっておる?」


 「私がオムテスを出る前は話題になっておりませんでした。あまり暗殺を行っておらぬのか、それとも見つかっていないのかは不明です」


 「そうか、分からぬならば仕方あるまい。あまり情報のやりとりなどをしていれば怪しまれるからな。よし、もう戻ってよいぞ。次の任務までよく休め」


 「ハッ! 失礼いたします」



 影の者が部屋を出たが、思わず溜息が吐きたくなるな。

 こちらの邪魔をしそうな者が全く分からぬとは……。

 これでは暗殺を命じる訳にもいかぬし、なかなか厄介な事だ。



 「別の者を行かせて調べさせますか?」


 「仮に行かせるとしても時間が掛かろう。ダンジョンのある町に行かせた者の中で、余裕のある者が居ればでよい。無理にやらせても仕方あるまいからな。それに他のところで話題になるかもしれん。ならなければ障害にはなるまい」


 「では、その旨を記した手紙を送ります」


 「うむ。国内の方はどうなっておる? それなりに反発はあったようだが……」


 「反発しているのは一部の男爵ぐらいで、己が儲からぬなら綺麗な方が良いという程度のようです。それよりもアンデッドを使った農業の方が不評で……」


 「我が国の土質が良くない以上は、より多くの場所で農業をさせるしかあるまい。それには今の人口では足りんのだ。民など言わせおけばよい、どのみち己が食えるとなれば黙る。侯爵家の奴等と同じでしかないわ」


 「では、このまま放置が最良でございましょう。文句を言うのならば食わぬでもよい、そう言えば飢える者から諦めます」


 「うむ。たとえアンデッドを利用して作らせた食料であっても、飢え死にするよりは遥かにマシなのだ。食えれば己らが愚かだと気付く。業突く張りの侯爵家の者どもにも続けさせろ、絶対に日和らせるな」


 「数が多ければ、それだけ作られる量も増えますからな。農業に関する研究結果は研究所にありますので、後はそれを元に<死霊術士>に農業をさせれば良いだけ。消費魔力の少ないスケルトンにさせれば十分でしょう」


 「うむ。戦闘ではないのだ、腐っているゾンビを畑に近づけるわけにはいかんからな。……それにしても、何故我が国の土だけがこれほどに悪いのやら。祖先が何かやったのであろうかな?」


 「そのような事は記録されておりませんが……」


 「冗談だ」



 しかしそう言いたくなる程に酷い。

 これだからこそ、隣接しておる北、南、東の三国の土地を奪わねばならんのだ。

 他の国への工作は上手くいっておるのであろうな?


 我々は止まる気などない。いや、止められぬと言うべきか。

 三国には申し訳ないが覚悟してもらおう。我が国の繁栄の為に。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:農業神



 やはりあの土地の愚か者どもは止めぬか。

 過去にあそこの土地にありし者どもは豊かであったが、それ故に己らを地上の支配者だとおごった。

 その結果、我ら神々が天罰を与え、あそこには豊饒ほうじょうを与えぬように封印を施したのだ。


 地上で<ソーリャ>と呼ばれておる者どもが散り散りになったのはそれが理由。

 その封を外し元に戻そうと思ったら、今度は野蛮な者が住み着いて国を興してしまうとは。

 おかげで封印を解く事も出来ぬ。


 そんな事をすれば、あの国の者どもは一気に流入する魔力や瘴気で歪み、生物として崩壊してしまうからな。

 封をした分の歪みを別の所に流しても良いのだが、それはあの愚か者どもが反省してからだ。


 ままならぬものよ。


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