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0143・三つに分かれて




 Side:ヌン



 「とりあえず話していないで三チームに分かれよう。それぞれで探すしかないだろうし、アンデッドを操っているヤツを探して捕まえないと、いつまで経ってもこの騒動は終わらない」


 「そうだな。アンデッドだって分かった以上は、オレ達だけじゃ無理だ。かといって【白魔法】が使えるヤツなんて殆ど居ないし、協力なんて絶対に無理だからな。あいつら王宮に勤めてて高給取りだし」


 「まあ、王族の方々が治療の為に囲っているのが大半だからな。仕方あるまい」


 「ウダウダ話してないで、さっさと分かれて行くぞ。ヌンは<猛襲団>の方を頼む」


 『分かりました』



 イシスがそう言うので私は<猛襲団>、つまりリザードマンと共に行く事になりました。

 おそらく<力の鉄槌>の者とイシスが揉めたので敢えてなのでしょうが、それは構いません。

 とりあえず私は私のやるべき事をしましょう。



 「おう、お前さんがヌンか。宜しくな。で、アンデッドどもはどっちだ?」


 『こっちです。というより、森の中に分散していますので、我々はこちらを担当というところでしょうね。その事から察するに<死霊術士>は複数居ると思われます』


 「チッ! オムテスの王都近くで破壊工作なんぞ、なかなか愉快な事をやってくれるじゃねえか。必ずオレ達が叩き潰してやるぜ! 行くぞ、お前ら!!」


 「「「「「おう!!」」」」



 五月蝿いですが仕方ありませんね。

 イシスが言うところの脳筋連中ですが、これはこれで煽れば役に立つでしょう。

 単純であるが故に。


 私は<猛襲団>の者を先導して森の北側を重点的に探して行きます。

 イシスは<力の鉄槌>と共に南側へと行きましたので、バステトとハトホルが中央部です。


 既に作戦は【念話】で決めてありますが、私が先導している<猛集団>とイシスが先導している<力の鉄槌>を使って囲む。

 というのが作戦の概要となります。

 半円の形が出来たら、後は歩調を合わせて中央の<乙女騎士>と共に進むだけ。


 それで逃がす事も無く全ての<死霊術士>が捕縛できるでしょう。

 しょせんは術士と言いますか、体力もない連中でしかありませんし。



 『ここをある程度先に進むとアンデッドが居ます。私がさっさと動かないようにしますので、慌てたりなどはしないようにして下さい』


 「お前さんが何とかしてくれるのに慌てるかよ。それより他の魔物だったらオレ達に任せときな。このままじゃ活躍も無しで情けない限りなんでな」


 『ええ。普通の魔物はお願いします』



 まあ、出てきたところで相手になどなりませんが、彼らにも活躍の場は与えなければいけませんからね。

 そこは構いません。揉め事など面倒なだけですし。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:イシス



 「ふーん。ってー事はオレ達は森の南側ってわけか。で、囲んでいく形で敵を追い詰める為に今こっちに進んでるんだな。中央が<乙女騎士>っつうのが納得いかねえが、揉めても仕方ねえ。諦めるか」


 「そうしてくれ。あくまでも中央を<乙女騎士>にしたのはバステトとハトホルに任せるからだ。北と南はオレとヌンなんでな、中央は分厚くしておきたい」


 「北と南を2の2にすると、中央がスカスカになっちまうからな。そりゃできねえし、んな事すりゃ中央突破されて逃げられるかもしれねえ。そいつはちょいとマズい」


 「だからこの配置なわけなんだ。っと、ちょっと思い出したんだが、すまんな」


 「あん? 何がだ?」


 「魔車を護衛してた犬っぽい獣人って、お前ら<力の鉄槌>のメンバーだろ? 残りは<ボーラン>と女の<アンズル>だったしな」


 「そうだが、あいつらがどうかしたのか?」


 「森に入る前に俺達に喧嘩を売ってきたんで、顎を殴って気絶させた。二度も俺達の行く先を妨害して、ザコは帰れとか言って来たんでな。殴って押し通るしかなくなったんだよ」


 「何やってんだ、あのアホどもは。どうせ女の<アンズル>の前で良い格好でもしようとしやがったに違いねえ。素直に金稼いで娼館にでも行けってんだ、まったくよう」


 「大半の娼館からは出禁喰らってますぜ、あいつら。我ら<リグン>の娼館からは随分前から出禁にされてますし、どうしようもない兄弟なんですよ。娼婦の<アンズル>からも嫌われてるみたいですしねえ」


 「<リグン>なのに<アンズル>の居る娼館に行くのか?」


 「あん? ……そうか、お前さん知らねえんだな。ヤるのは他の種族ともできるが、妊娠は同じ種族相手じゃねえとしやしねえ。だから娼館ってのは普通、別種族の所に行くもんだ」


 「ふーん、そうだったんだな」


 「まあ<ソーリャ>は少な過ぎて娼館には居ねえからな。かつての時代にはそれなりに居たそうだが、バカな連中の所為で狩られちまって数が少ねえ」


 「そうなのか?」


 「なんだ、お前<ソーリャ>なのに知らなかったのか。何でもゼンス王国が暗躍して<ソーリャ>を狩りまくってたらしい。噂じゃ<ソーリャ>の中に<死霊術士>が居たらしく、そいつらを捕まえる為に<ソーリャ>を狙ってたそうだぞ。割と有名な噂だ」


 「本当かどうかは知らないが、そういう噂がずーっとあるって事か。俺は【死霊術】なんて使えないから、昔の連中も全員が知ってた訳じゃないんだろうなー」


 「そうじゃねえか? って、アンデッドを片手間で倒すなよ。余裕過ぎるだろ」


 「と言われてもなぁ。俺達にとってアンデッドってのは、こんなもんなんだよ。まあ、強いって言ってもアンデッドに対してだけなんだが」


 「それで十分だろ。オレ達は逆にアンデッドは駄目なんでな、潰す以外にどうにもならねえ。唯でさえオレ達<リグン>は【魔法】の使えるヤツが多くねえしよ、困ったもんだぜ」


 「<リグン>は【魔法】が不得意って事か?」


 「不得意かどうかは知らねえな。ただ、オレ達<リグン>は魔力が少ねえんだとよ。だからウチに来たヤツの中で魔力の高いヤツには【魔法】を教えてる。上手くやれば【収納魔法】の使えるヤツが増えるからな」


 「確かに【収納魔法】が使えるかどうかで、儲かるかどうかは決まるって言ってもいいからな。使えるヤツが多いに越した事はないか」


 「おう。そういうこった」



 一応謝っといた方がいいかと思って俺がこっちに来たんだが、元々バカな奴等だったからかサラッと流されたな。

 殴っても問題ない奴等だとは思わなかったが、俺から言ったからかもしれないし、揉め事にならないなら何でもいい。


 このままさっさと囲んでしまおう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ハトホル



 『さて、そろそろ北と南もある程度進みましたし、私達も圧力を掛ける為に真っ直ぐ向かいましょうか。私とバステトで何とかしますので、皆さんはアンデッド以外をお願いします』


 「それは構わないが、本当に私達はアンデッドの相手をしなくてもいいのだな?」


 『構わないわよ。というより、怪我をされるくらいなら全部私達に任せてもらいたいわね。イシスも言っていたけど、腐っているアンデッドに傷つけられると病気になる可能性が高いのよ。だから身を守ってくれる?』


 「病気か……。まったくもってゼンス王国は碌でもないな。<ソーリャ>を拷問に掛けて無理矢理に【死霊術】を奪ったと聞く。それでゼンス王国から<ソーリャ>が居なくなったのだろうに、今度は他国の<ソーリャ>を拉致誘拐するようになったという」


 『本当に碌でもない連中ね。よくもまあ、そこまで悪徳な事が出来るものよ。蛮族国家か盗賊国家じゃないの』


 「はははははは、確かにその通りだな。今まで碌でもない国家だと思っていたが、確かに彼の国はやり過ぎだ。あれでは蛮族国家というのが正しかろう。他国の民を拉致するなど蛮族そのものだからな」


 「なんだと、貴様! 絶対に許さんぞ!!」



 アンデッドと共に居るのは知っていましたけど、挑発にあっさり乗るとは何を考えているのやら?

 ……それよりも<乙女騎士>のリーダーは気付いていて挑発をしていました。

 この方はいったい何なのでしょう? 本当に開拓者なんでしょうか?

 ちょっと引っ掛かります。


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