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0142・アンデッドの使い方




 Side:バステト



 やっぱり気付いてなかったのね。

 こいつら何か必死に倒そうとしてるなー、と思ったけどさ、幾らなんでも気付きなさいよ。

 相手の事も理解せずに、よく戦おうと思うわね。

 勘違いしていたら殺されるところじゃないの。


 こういう考え無しの奴等から死んでいくって分からないのかしらね?

 たとえ数が多くても、アンデッドは関係なく襲ってくるわよ。

 あいつら既に死んでるんだし。



 「ああ、そいつらはアンデッドで間違い無い。そもそも俺達は瘴気を感知できるんで、そいつらがアンデッドだという事は最初から気付いていた。とはいえ叩き潰せば倒せるって聞いてたんでな。そういう風に戦ってるのかと思ってたんだが」


 「ちげーよ! たしかにオレの得物はハンマーだが、別にアンデッドの事を考えてハンマーを使ってる訳じゃねえっての!」


 「オレなんぞ槍だぞ。流石にアンデッドにゃ効かねえし、話にならねえな。っつーか、通りでこのブラッディウルフに牽制が効かねえ筈だ。アンデッドなら無視するに決まってるぜ」


 「そうだな。私達の攻撃も、まるで意に介さないような感じだった。変だと思ったが、戦闘中なので頭の隅に追いやってしまっていたな……」


 『それよりもアンデッドのブラッディウルフがどれほど居るか分からないので、困った事になりましたね。そもそもゼンス王国がどういう方法でアンデッドを作り出しているか不明ですし……』


 「どういうこった?」


 『アンデッドを作り出すのは【死霊術】ですが、作り出されたアンデッドは魔力を供給する必要があります。まあ、放っておけばその内に通常のアンデッドになりますが、それまでは魔力で動いているのですよ』


 「魔力……」


 『そうです。通常のアンデッドは瘴気で動くアンデッド。【死霊術】で動くアンデッドは魔力で動くアンデッドなのです。という事は、何処かから魔力を補給していないとおかしい訳ですね』


 「それが道具なのか<死霊術士>なのかは不明なわけだ。道具なら放置できる訳で、それなら<死霊術士>は逃走してるだろう。術士本人が魔力を供給するなら、この近くに残ってる可能性がある」


 「成る程な。魔力を供給しなければ動けなくなるからか」


 『そうですが。それをそのまま放っておくと、元々持っている瘴気が呼び水となり、通常のアンデッドになる可能性は非常に高いです。とはいえ状況や環境によって幾らでも変わりますので、どのタイミングでアンデッドになるかは分かりません』


 「へえ、それが【死霊術】のアンデッドか。よくもまあ、んなものを使うよな。ゼンス王国の連中はよ」


 「そこまで知っているというのは、ちょっとおかしかねえか? お前、もしかして【死霊術】が使えるんじゃねえだろうな?」


 『使えますよ、使わないだけで。そもそも私は【死霊術】など必要としないので、知識欲として欲しただけです。その結果、使えないと判断したのが【死霊術】ですから、既にどうでもいいものでしかありません』


 「どうでもいいもの?」


 『そもそも【死霊術】というものには欠点があるのです。それは魔力を供給しなければ動かせないという事に尽きるのですが、それを【死霊術】では克服できません。ですので【死霊術】というのは大きな欠陥があるのですよ』


 「【死霊術】のアンデッドは魔力を供給し続けなければいけない。でないと動かなくなるか、最後には普通のアンデッドになってしまう。……それだけで厄介だと思うが?」


 『それでは統制のとれたものではありません。つまり敵国で大量の死体を用意して瘴気のアンデッドを作り出す事は出来るが、それはいつ出来るか不明のものであるという事です。それでは作戦というより賭け事に近いでしょう』


 「それは駄目だな。軍の者達は、そんな曖昧なものを作戦とは呼ばない。いつ通常のアンデッドになるか分からないのでは使えないとなるのも当然だ。場合によってはスケルトンかもしれない」


 「アンデッドはゾンビが厄介なのであって、スケルトンじゃ大した戦力にはならねえな」


 『代わりに魔力の消費はスケルトンの方が少ないですけどね。ただしアレは素手でも粉砕できる程度の強度しかありません。戦闘には使えませんよ』


 「あんなもん出してきたら、ゼンスの連中の頭を疑うわ。たとえ大量でも壊せば済むようなのを使うって、頭がおかしいとしか思えねえしな」


 「盾としてはそれなりに使えるとは思うが、その場合は10万とかを用意しなきゃ無理だろうしなぁ……。とてもじゃねえけど、そんな大量のスケルトンを維持なんて出来ねえだろ」


 「ならば然したる脅威にはならんな」


 『そんな事はありませんよ。腐った体のゾンビを数体用意して、輜重に突っ込ませればいいのです。それだけで食料が駄目になりますからね。戦争と考えれば脅威ですよ?』


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 三つのチームのリーダーも、その下っ端も黙ったわね。

 確かに食料を腐った肉で汚されたら終わりでしょうから、非常に厄介だと思うわ。

 戦場まで行って食べる物が無くなるなんて、耐えられるのかしら?


 まあ、どう考えても無理でしょうねえ。

 つまり、戦争で戦う相手よりも嫌がらせとして使ってくる方が凶悪ってわけね。それなら納得よ。

 私達には効かないけど。



 「それに、戦争している相手国の死者をアンデッドとして使ってくる可能性もある。それをされると最悪だな。味方同士の殺し合いに近い。士気もダダ下がりだろうし、厳しい事になるだろう」


 「色々考えても、やっぱり碌なもんじゃねえな。ゼンスの連中はよう」


 「あの国は死体を使うという事を何とも思っていないようだしな。何より、あそこは上の権限が強すぎる。特に公爵と侯爵の連中が妙に強い権力を持つので、王の命令すら軽んじると聞く」


 「公爵と侯爵? 一位貴族じゃないのか?」


 「ああ、そうえば知らないか。あそこの国だけ歴史的にそうなのだ。上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵とある。隣国と隣接している貴族は辺境伯というらしい。我が国でもその言葉は使いやすいので使っている者も多いが」


 「ふーん……。変わってるんだな」



 イシスは何か引っ掛かってるみたいね?

 とはいえ、そこまで表情も変わってないから、大した事じゃないんでしょうけど。



 「それより森の中のアンデッドをどうにかするべきじゃねえか? ブラッディウルフをどうするよ?」


 「なら、俺達は手分けしようか。三チームあるんだし、俺、ヌン、そしてバステトとハトホルでいいだろう。俺達がアンデッドはどうにかするが、そっちにはゼンス王国の奴等を何とかしてもらいたい」


 「それは構わないが、本当に良いのか?」


 「そもそも俺達はアンデッドが必要とする瘴気を浄化できる。東のウィーグン家でも鉱山に出たアンデッドを潰す仕事を請けてるし、その時の数は200だった。あの時より数は少ないだろうから、そこまで苦労はしないさ」


 「アンデッド200って、お前よく生き残って……いや、瘴気とかいうのを浄化できれば、アンデッドは倒れて動かなくなるのか。それなら問題ねえのかもな」


 「アンデッド200を倒したにも関わらず、報酬は250ルルだけだったがな」


 「「「「「「「「「「にひゃくごじゅう!?」」」」」」」」」」


 「そりゃ少なすぎるだろうが! アンデッド200だぞ!? 最低でも5000は貰わないと割に合わないっての! なに考えてんだ、東の奴等はよう!!」


 「元々は多人数に依頼するつもりだったからじゃないか? 一人頭250ルルだったんだろうよ。まあ、あそこのギルド長は多分だが、今ごろ別のに交代してるんじゃないかと思う」


 「それはそうだろう。そのままギルド長に居座り続けるなどありえ……ああ、あそこのギルド長といえばウィーグン家の者だったな。通りで……」



 何か納得できる部分でもあったのかしら?


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