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0139・王都の開拓者ギルドの騒ぎ




 Side:イシス



 子供達に追い掛け回されたバステトは逃げ切り、子供達には触らせなかったようだ。

 ちなみに触られても気にしない二人は、子供達が離れた後で【クリーン】を使っていたけどな。


 まあ、子供達の手だ、何処で何を触っていたか分からない。

 綺麗にしておくに越した事は無いだろう。

 それはともかくとして、飽きた子供達が離れた隙に、俺達も別の場所へと移動していく。


 電池が切れるまで動き回るような、無敵でパワフルすぎる子供達と一緒に居たくはない。

 あんなのにつき合わされたら、体力が幾らあっても足りないだろう。

 さっさと離れるに限る。


 王都の中を色々と見て回っているうちに表通りへと戻ってきた俺達は、ちょうど目の前にあった開拓者ギルドへと入る事にした。


 中に入ってどんな依頼があるかを確認しようと思っただけなんだが、入り口のドアを開けると中は騒がしく多くのグレイが声を上げている。



 「北の森が使えないってどういうこった! オレ達に仕事を止めろとでも言う気かよ!!」


 「そうだ! 北の森は稼ぎに行っているヤツが多いんだぞ! それを止めろっていうのは死ねって言ってるのと同じだ!!」


 「そうだ! そうだ!」



 何を騒いでいるのかは知らないが、北の森という単語は聞こえてきた。

 おそらく北の森とやらが使えなくなったんだと思うが、喚いているヤツが多すぎてあまり詳細には聞き取れない。



 「静まれ!!!!」



 誰かが大きな声を上げて一喝すると、流石に多くの五月蝿かったグレイも黙ったようだ。

 今は「シーン」と静まり返っている。



 「お前達が北の森に行けなくなって困るというのは分かる。しかし北の森で<ブラッディウルフ>の群れが確認された以上、お前達が行けば簡単に殺されるだけだ。現在ギルドでは腕に覚えのある者を集めて群れを狩るつもりでいる。我こそはと思うヤツは名乗りを上げろ!!」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 <ブラッディウルフ>という魔物を知らないから何とも言えないが、ここで騒いでいた奴等が黙る程度には強い魔物なんだろう。

 名乗りを上げろと言われたら黙るんだから、おそらく戦えば死ぬ可能性の高い魔物だという事は分かる。


 ヌンさんがさっきから五月蝿いので仕方ない、俺達が名乗りを上げるか。



 「すまない、俺達がその仕事を請けても構わないか?」


 「なに? ………この状況で名乗りを上げるなんて、なかなか見所があるじゃないか。お前の名は?」


 「俺はイシス。今日の朝に王都に来たばかりの者だよ。役に立つかどうかは知らないが、少しでも戦力が居た方が良いんだろう?」


 「まあな。見て分かる通り<ブラッディウルフ>と聞いた途端、尻込みする者どもばっかりなんでな。少しでも数が欲しいところだ。お前さん何処から来た?」


 「すーっと東からだ」


 「………成る程。〝ずーっと〟東な。理解した。ならお前も参戦してくれ、役に立ちそうだからな。それ以外に名乗りを上げない者はギルドを出ろ。これから話し合いをせねばならんので邪魔だ」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 先程まで喚いていた連中は、顔を見合わせた後でスゴスゴとギルドを出て行った。

 余程に<ブラッディウルフ>というのが恐いらしい。

 俺達は戦った事が無いものの、そこまで強い魔物とは思えないんだよな。

 ヌンさんが五月蝿いくらいだし。



 「おう、すまねえな。お前さんを利用するような真似しちまってよ。ただ、ああでも言わなきゃ連中は喚き散らすままだったからな。散らす為にはああする他なかった」


 「何か勘違いしてるようですが、本当に参加するんであって、適当に連中を散らす為に言ったんじゃないですよ? 自己責任なんですから参加出来ますよね?」


 「そりゃまあ、可能だが……。大丈夫か?」


 「戦った事が無いのでおそらくとしか言えませんが、大丈夫だと思ってますよ。厄介そうなのは鼻が良いって事ぐらいでしょう?」


 「それと群れるって事だな。まあ、そこは狼だから当たり前なんだが、他の狼と比べても慎重なんだよ<ブラッディウルフ>は。奴等は適当な傷を付ける立ち回りを延々と続けやがるのさ、嬲り殺しにするようにな。それ故に怖れられている」


 「成る程、狼をちょっと厄介にした感じなんですか」


 「ちょっとどころじゃねえんだがなぁ……っと、やっと来たか」



 ギルド長がそう言うのと同時に、複数の魔力反応が外からやって来た。

 結構大きな魔力反応も来ているので、なかなか優秀な連中が集まったらしい。


 もちろん魔力だけでは判別できないが、優秀なのは間違い無いだろう。

 その為にギルド長が集めたみたいだし。



 「おーっす。朝っぱらからオレ達を集めるなんて、いったいどうしたってんだ? ゼンスの連中でも攻めて来たかよ?」


 「ハッ! そうなったら稼ぎ放題だからどれほどありがたいか。奴等はアンデッドを使うしか能の無い連中だからな。オレ達なら即座に<死霊術士>をブツ殺すぜ」


 「我々がこの者どもと共闘せねばならんのは迷惑なのだが? ギルド長はいったい何を考えて召集したのやら」



 何か変な奴等が来たな?

 一人は見た目がライオンみたいなヤツなので、おそらく<リグン>という種族だろう。

 もう一人はリザードマンみたいな見た目なので、これは間違いなく<ボーラン>ってヤツだな。

 そして最後の女の声なのは、普通の<アンズル>だ。



 「ケッ! 相変わらず、お高く止まりやがってよぉ! お貴族様はお貴族様の世界に帰りやがれ!」


 「ふん、下らん。お前達の思うような世界ではないと、いったい何度言えば分かるのだ? あそこは欲望と悪意に塗れ続ける場所だぞ? むしろお前達が行けばよい」


 「お前ら、いちいち下らない言い争いをするな。……どうやら<力の鉄槌>と<猛襲団>に<乙女騎士>も揃ったようだな。お前達を呼んだのは他でもない、北の森に<ブラッディウルフ>の群れが居座っている可能性が高い」


 「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」


 「<ブラッディウルフ>が王都の近郊にねぇ………。いったい何処のバカだ? そんな工作をしやがったヤツは」


 「普通に<ブラッディウルフ>が集まるなんて、どう考えてもあり得ねえ。何処かの誰かがやらなきゃ、そんな事にはならねえな」


 「………そこの者は?」


 「こいつの名はイシス。どうも今日の朝に王都に来たばかりらしい。下の連中を黙らせるのに利用させてもらったが、どうやら本気で参加する気のようだ。自己責任だから問題なかろう」


 「後ろから攻めて来ないって保障がねえんだが?」


 「その可能性は低いだろ。お前らだって分かってる筈だ。もしコイツが<ブラッディウルフ>をけしかけたヤツなら、こんな堂々と紛れ込もうとなんてしねえよ。警戒されるのが分かりきってる」


 「まあ、そりゃそうだがよ……」


 「我々は何でもいい。手を出して来れば殺すだけだ。新人、理解しておけよ?」


 「了解、了解」



 俺は適当にヘラヘラしながら返事をした。もちろんワザとだ。

 向こうが殺気全開でこっちに突っ掛かってくるんだ、ならこちらはあっさりと流してやるさ。

 お前の殺気など屁でも無いってな。



 「ほう……」 「へえ……」 「やるな」


 「唯の〝新人〟という訳ではなさそうだな」


 「そいつは〝ずーっと〟東の方から来たんだと。本当に〝ずーっと〟東なら、王都の者より気合い入ってるのは当たり前だろうよ。そんな甘ちゃんじゃ、生きていけない所だ」


 「「「………」」」



 いちいちジロジロ見てくるのが鬱陶しいが、値踏みをされるのは仕方ないんだろうな。

 ちなみにヌンさんが参加したそうにしているのは、ゼンス王国のアンデッドである可能性があるからみたいだ。


 つまりヌンにとっては、本命の騒ぎはむしろこっちじゃないのかって事だな。

 田舎のウィーグン家で騒ぎを起こすのは少々疑問があったらしく、本命が別にあるんじゃないかという考えもあったらしい。


 俺はどうでもいいが、ゼンス王国に関わる可能性があるなら参加しないという選択肢は無い。

 俺達の目的というか指令は、ゼンス王国の野望を打ち砕く事だからな。


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