0138・王都到着
Side:イシス
ハトホルを正式に仲間に加えてから10日ほど経った。
現在は順調に西へと歩いており、今日で王都へと辿り着く。
正直に言って徒歩の旅としては早い方だと思うが、俺達は普通に夜も移動し続けたので、この結果はおかしな事では無い。
正確に説明しなければ誰もおかしいとは思わないだろうし、だからこそ俺達は気にせずに歩き続けてきた。
その間にハトホルの【魔術】の腕も向上したし、大量の草をゲットしたりと色々としてきている。
魔物もそれなりに倒して手に入れてきているし、<清浄銀>を編みこんだリボンをハトホルも首に巻いている。
ちなみに<清浄のスカラベ>はハトホルも身に着けるのを嫌がったので、未だに二つとも俺が身に着けたままだ。
そんな二匹とヌンと共に、朝焼けの中を西へと歩いているが、俺達以外にも歩いている者などは居る。
開拓者の中には王都で一旗上げようという者が居るらしく、そういう者は村で野宿をしながら王都に移動するらしい。
そういう者がお金を持っているわけも無く、村という安全な場所で野宿し、持っている保存食を少しずつ齧りながらの徒歩旅。
俺達はそんな苦労をしていないが、傍から見れば変わらないだろう。
途中からそういう奴等に見えるように、紛れるようにして移動してきたのもあり、俺達はそこまで目立ってはいない。
とはいえ一緒に居るのが猫のバステト、木製球体関節人形のヌン、牛のハトホルである為、別の意味で目立ってしまっているが。
そこに関しては仕方がないのでスルーしながら、俺達は西へ西へと移動してきたわけだ。
そして朝日が昇った現在、王都の門が見えてきた。
結構な分厚さをしていそうな石壁に、鉄の重そうな落とし格子の門。
その前に門番が四人居るな。
結構厳重な守りだが、王都と考えれば当たり前とも言えるので、なんとも言い辛い感じか。
他の町に比べても厳重なので何かあったのかと思うが、一国の首都ならあれぐらい厳重に守るのも当たり前ではある。
俺達はそこに近付いて門番に登録証を見せた。
「………お前以外は妙な傀儡と、よく分からん魔物が二匹か? そいつらは安全なんだろうな?」
「安全ですよ。そもそも相手の言っている事が理解できますし」
「本当か? ……お前ら、王都で暴れたりなどすれば容赦せんからな」
「ニャ」 「モウ」 「………」
「……本当に分かっているのか?」
「ニャ!」 「モ!」 「………」
「何か本当に分かってるみたいだぞ。そっちの傀儡も頷いてるしさ。初めて見たけど<魔物使い>とか<傀儡士>ってこうなんだなー」
「ま、とりあえず通っていいが、暴れたりして揉め事を起こすなよ。本当に問答無用で殺されかねんからな」
「ニャ!」 「モウ!」 「………」
「本当に分かってるように返事するんだよなー、不思議だぜ」
そんな事があったものの無事に門を通過し、そのまま王都の中へ。
町中の感じは普通というか、木造建築が多いな。
石造りの家が多いのかと思ったが、そんな事は無いらしい。湿気の問題かねえ?
石造りの家ってジメジメしていて湿気るっていうし、あんまり住む家として好ましい感じはしないんだよなー。
コンクリの家と似た匂いがする。
それはともかくとして、町中の人に話を聞いて宿を探さないとな。
周りに距離を置かれたりしている感じではないので、話し掛けてもおそらく答えてはくれるだろう。
後は本当の事を言っているかどうかだが……。
ここはヌンさんにお願いして、本当の事を喋っているかどうかを判断してもらおう。
「宿? それなら表通りを探せば見つかるだろうに、何でいちいち聞くんだよ」
「表通りにある宿はボッタクリが多いから気をつけろって言われたんですよ。だから良い宿があったら教えてほしいんです」
「ああ、そういう事か。………それなら、向こうの道を入って真っ直ぐ行った先に宿があるから、そこに泊まればいい。じゃあな」
「ありがとうございます。…………で、ヌン。どうだった?」
『駄目ですね。先程の男が教えようとしていたのはボッタクリの宿です。どうも先程の者の知り合いがやっている宿のようですが、そこを紹介したようですね』
「成る程。ならもうちょっと聞き込みをする必要があるな」
俺達はその後も精力的に聞き込みを行い、一時間ほどしてから宿を決めた。
表通りからちょっと路地に入った所にある、目立たない感じの宿だ。
一応ベッドが描かれている看板があるので、宿だという事は分かる。
そんな宿の入り口のドアを開けて中に入ると、カウンターには小さな男の子が居た。
俺達はその子に話し掛けて、一人用の部屋を確保する。
「すまない。一人用の部屋をとりたいんだけど、いいかな?」
「はい、大丈夫ですよ。………えっと、一人用、ですか?」
「そう。一人用で問題ないから一人用だよ」
「はあ……分かりました。一人部屋は一泊で70ルルですけど、何泊されますか?」
「王都に来たばかりで分からないから、とりあえず10日かな? 700ルル、銀貨2枚と小銀貨2枚ここに置くよ」
「えっと、銀貨が250ルルで、小銀貨が100ルルだから………はい、700ルル頂きました。………この台帳に10泊って書いて、名前をここに書いて下さい」
「全員分の名前を書いた方がいいか?」
「え? ……あ、はい。一応」
「分かった」
俺は宿の台帳に全員分の名前を書き、そして一人部屋を10日分確保した。
これで少しの間は王都に居られるな。
あまり長居する気は無いんだが、だからといって王都に来たヤツがすぐに出て行くというのも怪しい。
なので10日ほど滞在すれば怪しまれないだろうという魂胆だ。
そもそもの目的はダンジョンなのだが、そんなに早く急いで行っても仕方ないので、これぐらいの寄り道は問題無い。
宿を確保した俺達は、王都の町中に出て色々と見て回る事にした。
バステトもハトホルも大量に人型の生き物が居る場所に来た事が無いので、驚いているしキョロキョロと辺りを見ている。
朝でもなく昼でもない時間なので、人通りが多いからだろう。
朝の間はそこままででもなかったんだが、この時間になって急速に増えた感じだ。
俺達が店の前を冷やかしながら歩いていると、子供達が近寄ってきた。
村の子供達と同じく貫頭衣を着ているだけで、後は裸足で走り回っているらしい。
子供は何処でも変わらないなと思うが、同時に織が違うのが見れば分かる。
やはり王都では子供の服でも、しっかり織物として作ってあった。
目がある程度しっかり詰まっており、頑丈に仕立てられているのが見てすぐ分かる。
その程度には開拓地前の村である、オオスの村とは違っていた。
やはりアレは質の悪い物だったらしい。
とはいえ田舎の村にしっかりした織物を持っていっても、高くて村の者は買わない筈だ。
結局は安い物しか売れないんだから、ああいう質の悪い物しか行商人も持ってこないんだろうな。
もしかしたら王都の者だって質の悪い物が安くあれば買うのかもしれないが、王都ではそもそも質の悪い物は売っていないのかもしれない。
だから高い物を買わざるを得ないのかも。
案外そういう風になっているのかもしれないなと、子供達を見ながら思った。
「「「「「「「「「「わー!!」」」」」」」」」」
「ニャァァァァ!!」 「モ?」 「………」
バステトは触られないように逃げ、ハトホルは触られても気にしない。
そしてヌンは子供達からペシペシされている。
木製の人形が珍しいんだろうが、ヌンは一切動じていない。
追い掛け回されているバステトを見ながらも、猫だから確実に逃げ切るだろうなとも思う。
ただし逃げ切っても意味は無いんだが。




