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0137・ウィーグン家の話し合い・その2




 Side:ウェロヌ



 「結局のところ、婆ちゃんがやっちまった事は取り返しがつかないんだろ? そいつらは逃げちまってるし。もう今さら言っても仕方ないなら諦めるしかないんじゃないか? アンデッドが早期に居なくなっただけマシだと思うしかない」


 「それはそうなんだけど、開拓者ギルドも微妙な雰囲気になっているらしいし、なんとも言えないところかな?」


 「どういう事だ? 兄貴」


 「強制依頼にも関わらず、終了条件が設定されていなかった。それが理由で不信が起こってるんだよ。そのイシスという<ソーリャ>が言った通り、自分達を都合よく扱き使う気じゃないかっていうのが拭えないんだ」


 「ああ、婆ちゃんがやらかしたからか……。俺達みたいな騎士なら領主家に忠誠を誓うのが当たり前だけど、開拓者は違うからなぁ。あいつらは嫌な場所からすぐに離れるし、それが認められてる。昔やらかした所為だけど」


 「そうだ。その所為で開拓者が逃げ始めると、領主は止める事が出来ない。そもそも彼らは他国へすら自由に移動する事が可能だ。そのうえ兵役が存在しない。逃げられると追えないんだよね、厄介な事に」


 「それだけじゃないわ。貴族にとって都合の悪い事実を喋られても、開拓者の口を閉じさせる事が出来ないのよ。それが事実ならば、だけどね。そしてイシス達は母さんとの会話を喋ればいいだけ。それだけで他の貴族家から攻められる理由になる」


 「あー……開拓者ギルドの私物化ってヤツかぁ。伝統だか何だか知らないけど、そろそろ止めたら? 今までにも何度も議論はあったんだろ? 切り離した方が絶対に良いって」


 「そうは言うけどね。開拓者ギルドも領主家が持ってるって、色々と都合が良いんだよ。だから簡単には手を放せないのさ。領地にとって都合が良い仕事を割り振る事も出来るし」


 「けど、その所為でいつまで言われ続けるんだろ? だったらもう手放した方がスッキリすると思うけどな。結果としてウチが得をしていても、毎回親父が嫌味に晒され続けるんだぜ? しかも親父が引いたら次は兄貴だ。それを耐えるのか?」


 「………」


 「まあ、言えないわよね。そういう事もあって、ウチはずっと10位貴族家なんだし。嫌味を言われる程度には得るものも得てるから、余計に嫌味は強くなるんだもの。現状では仕方のない嫌味の量でもあるわ」


 「ええ。それ叔母さ……お姉さんの言う通りなんですけど、それの所為でいつまでも上がれないならと思わなくもありません」


 「そうよねえ。そもそも10位貴族家だからこそ許されてる事でもあるもの。そろそろ我が家も体裁は正しく整える必要があるわ。いつまでも開拓地だからという甘えは通用しないでしょう。特にハルマーの町は、もう開拓地でも何でもないし」


 「ここは一番早くに我が家の四代前の祖先が切り開いた地だからな。それから貧しくとも精力的に開拓を続け、今や八つの村を抱える領地となった。かつては開拓者ギルドを誘致しても成り手が居なかったが、今は居る。本格的に考えねばならんな」


 「正気かい!? 領主家と共に開拓者ギルドも使って盛り上げて行くのが、古くからのあるべき姿だろうに!」


 「やはりそれか……。これからの我が家の事を考えれば、きちんとした貴族家にならねばならんというのはカルロンやマルロンに妹の言う通りだ。もうそろそろ甘えは終わらせねばならん」


 「甘えじゃない、伝統だと言ってるだろう!」


 「立ち上げ時には両者が同じ家の元に纏められておっても、時が経てば変えていかねばならん。何処の領地も最後にはそうなっておる。伝統、伝統と母上は言うが、それは弱小貴族の伝統でしかない。だからこそ笑われるのだ」


 「それは……」


 「そろそろ我が家も変えていくしかないのでしょうね。このまま弱小領地のままじゃ、祖先に怒られてしまうし、それに遅いくらいよ。四代も前から切り開いているのに、まだそんな事をしているのかってなるじゃない」


 「オオスの村から手紙が来ていたと言っていたが、そこのギルド長と仲が良いから、などという事は無いでしょうな? あそこは開拓地の手前であり、ここ領都とは根本的に違いますぞ?」


 「………」


 「これは駄目だな。妻にやらせるのではなく、本部に言ってギルド長に相応しい者を派遣してもらうか。その方が中央も納得するであろう」


 「そんな事をすれば中央の手が入るだろう! いったい何を考えてるんだい!!」


 「逆に言えば、中央の手が入っておらぬからこそ、いつまでも疑われるのだ。ならば我らは叛逆や独立の意思無しと、中央にその態度を見せなければなからなったのだろうな。今までのままでは10位貴族家から上がるのは不可能だ」


 「クッ! 分かったよ! 好きにしな!!」



 そう言って母さんは部屋の扉を乱暴に開けて出て行った。

 相変わらず分かってなかったみたいね。

 兄さんも完全に見放したみたいだけど、それは当然よ。



 「はぁ……〝好きにしろ〟か。いったい何様のつもりなのであろうな? あれこそが我が母の本音だ。いい加減にウンザリするわ。父上が早く亡くなって私が若い頃に継いだが、それもあって自分の権限が強いなどと思い込んでおる。いや、自分が守り盛り立ててきたと思っておるのだ」


 「だからこそ自分の思い通りにならないのが気に入らないのでしょうね。そしておそらくだけど、オオスの村では上手くいっているのでしょう。開拓地の前の最前線だと正しく理解せず」


 「そこにも強く言って、村長の家の者とは関係無いギルド長を出さねばならんな。引き受けてくれる者が居てくれればよいが……。カルロン」


 「私が直に行って、見定めて来いと?」


 「領都ならまだしも、開拓地の最前線に王都の息が掛かった者が来るのはマズい。領都ならば陛下の息が掛かった者だ、これならばまだ許容できる。しかし開拓地の手前ともなれば、何処の貴族家が手を突っ込んで来るか分からぬ。それだけは出来ん」


 「開拓地からの魔物素材はバカにならないからなー。ウチで全て売り先を決めてるけど、それを懐に入れる連中に来られても困るって事か。実際に来たら、絶対にそれだけじゃないだろうけど」


 「そうね。痛くも無い腹を探られ続けるでしょうし、最悪は民心を離反させようとしてくるでしょう。陛下の息が掛かった者はそこまでされないだろうけど、他の貴族家じゃねえ?」


 「村人を甘い言葉でたぶらかすなど、当たり前にやってくるでしょうからね。入れても碌な事になりません」


 「では、私はカルロン様が視察に行かれる用意をしておきます。おそらく今回の事で、オオスの村には手を突っ込めるでしょう。元々はオオスの村からの手紙で始まっているみたいですし」


 「そうだな。あからさまに都合の良い者を入れても、村人の反発が大きい。できれば村の元開拓者辺りが良かろう。その程度なら貴族家に楯突いたりはせんだろうし、こちらの命にも従う筈だ」


 「他の村もそうだけど、村の自治に任せるなら反発は少ないんじゃないか? こっちにとっては情報網と兵士への引き抜きがメインだし、他はそこまで考えてないんだからさ」


 「そうだな。さて、手紙も書かねばならんし、そろそろ話し合いを終えるか。実力のある者が出ていってしまうという事が起きたが、代わりに母上にとどめを刺せたのならば悪くはないな」


 「とどめって言うのもどうかと思うけど、ギルド長に固執していたのは母さんだけなのよねー。そのうえ理由は伝統だからの一点張りだしさ。そりゃ誰も味方をしないわよ」


 「婆ちゃんも分家から嫁いできて、肩身が狭い思いをしたんだろうけどさ。今は自分勝手にやってるんだから、話が違うって理解してほしいもんだ。好き勝手にやってたら、嫌われるのは当たり前だろうに。分家出身とか関係ねえよ」



 そうとも言えるわね。

 母さんには本家を盛り立てるって事と共に、自分は分家の者というコンプレックスみたいなものがあったのかしら?

 母さんの実家は分家の中でも下の方だし。


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