0136・ウィーグン家の話し合い
Side:ウェロヌ
現在、兄さん達を含めて話し合いが行われている。
夕方なので母さんも居るけれど、その母さんは結構苛立ってるみたい。
全て自業自得だし、当たり前の事なのにね。
よくもまあ怒れるもんだと思う。
今はエーヴの報告中だから聞いているけれど、兄さんの不機嫌もあって場の雰囲気は良くない。
とはいえ私の所為じゃないから他人事だけどね。
甥達には申し訳ないけども。
「ゼンス王国の者達に聞き取りを実施した結果、ゼンス王国の国軍から命じられた特命の任務であったそうです。とはいえウィーグン領の鉱山をアンデッドで占拠せよという命令しか受けていないようで、それ以外の事は知らされていませんでした」
「そうか……。まあ、余計な事を教えたりなどすまい。そこは我が国も変わらぬから仕方なかろうな。少なくともゼンス王国が国家として我が領地への攻撃を命じた事は間違いあるまい。後は王都にこの情報を送るだけか」
「はっ。既に速駆け用の<トゥデル>を用意しておりますので、すぐに出発させる事は可能です。今から王宮への報告をお書きになりますか?」
「いや、それは後にする。……さて、妹よ。もう一度説明してくれるか?」
「兄さん……。まあ、いいけどね。イシス達の事でしょうけど、聞いたところで既に町には居ないわよ? おそらくだけど既にウィーグン家の領地からも出てるんじゃないかしら。ハルマーはウチの領地の西の端だし」
「それでもだ」
「はいはい。まず私が会ったのは開拓者ギルドでよ。その時には既に母さんと言い合いをしていたわ、依頼の内容が不当だと言ってね。ちなみに母さんは終了条件を明確にしなかったから、確かに依頼内容は不当なものだった」
「との事だが、母上。貴方はまた私を笑い者にしたかったのか? これでは領主家が開拓者ギルドを私物化しているとの謗りは免れんぞ。また、私は笑い者にされねばならんのか?」
「そんなつもりはない。そんなつもりが、あるわけないだろう」
「ならば依頼内容とはどういうものだったのだ? 妹よ、中身は?」
「鉱山からのアンデッドの一掃であり、一体も残さず全てのアンデッドを倒す事。これ自体は兄さんが命じた通りね、ただし終了条件が決まっていなかった。イシス達はそこを気にしていたの。つまりアンデッドがいる〝かも〟しれない、で永遠に扱き使われる可能性があると」
「そんな事はしないって言ったのに、あの<ソーリャ>は……!」
「母上、依頼の終了条件が決まっていないのは何故だ? 依頼は当然ながら、何をすれば達成かは予め決まっていなければおかしい。何故決まっていないのだ、それでは不審がられるのは当たり前だろう」
「まずは鉱山からアンデッドを一掃するのが先だろう。そうしなければ解決とは言えないんだからね」
「私は何故、依頼の、終了条件が、決まっていないんだと聞いている! 話を逸らすな!」
「………」
「はぁ………。で、ウェロヌ。その者達は鉱山に着いてどうだったのだ?」
「鉱山に着いたイシス達はあっさりとアンデッドを倒したわ。アンデッドが何も出来ずに倒れて動かなくなるし、収納する事で二度と利用させないようにしてた。おそらく【収納魔法】と似た魔法だと思う」
「その者達は白を持つ珍しい者達だった? それとも何かの魔道具ですか?」
「違うと思う。イシスの仲間である、木製の傀儡に宿っているヌンという者から聞いたけど、彼等が使っているのは【魔法】ではなく【魔術】だと言っていたわ。【魔法】のように色で決まっておらず、自由に使えるもの。それが【魔術】だと」
「ふむ。つまり我が家はそれ程の者達に悪感情を持たれたと? 依頼の終了条件を決めなかった所為で?」
「それだけじゃないみたい。イシスはオオスの村の開拓者ギルド長からの手紙を運ぶ仕事で、ハルマーの町まで来ていたと言っていたわ。そしてオオスのギルド長の手紙に「都合よく使えるヤツ」とでも書いてあったんだろうって」
「そんな事は書いていない。彼女はそういう者じゃないよ!」
「ならば後でその手紙とやらを見せてもらおうか? 場合によってはオオスの村に問い合わせねばならんからな。アンデッドをあっさりと倒せる者に悪感情を持たれたのだ、誰の責任かは明確にしておかねばならん」
「………」
「その後は中に入っていって、一日目は7割くらいのアンデッドを処理したわ。二日目は増えていたけど、残りを処理して奥に居た<死霊術士>を捕まえたってところよ」
「そういえば捕まえた女性の<死霊術士>以外は、全員が足に怪我をしておったと聞くが……どうなのだ?」
「はい。最初に捕まった男達は両方の足に、山の中で見つかった者達は片足に怪我をしております。ウェロヌ御嬢様の仰る通り、抉られた部分が火傷になっている傷でございました」
「もう、御嬢様っていう歳じゃないんだけどね」
「それはどうでもいい。それよりも、そやつらは歩けるのか? 駄目ならば連れて行くのに相当の苦労をするぞ」
「両足を怪我している者も、立ち上がって歩く事は可能なようです。ただし相当に遅いですので、逃亡の心配は無いかと。可能性があるのは女性の<死霊術士>だけです」
「彼女は心配ないわ。既に我が家に居るし、逃亡の可能性はゼロよ。ウチの子達も大歓迎しているもの」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
何で黙るのかしら、失礼ねえ。
皆ハッピーになれる素晴らしい場所が我が家よ?
何で呆れた表情で見られなくちゃいけないのか分からないわ。
「その分からないという顔を止めろ、分かっているだろうが。まあ、第一王女殿下もお前の所に居られるので、そこまでとやかくは言わんが……」
「第一王女殿下は気の毒だと思うけど、女性の方に走るのはどうなんだろうな? 嫁ぎ先だったモルドンの1位貴族家で、余程に酷い目に遭わされたんだろうけどさ」
「無理矢理ではなかったとか向こうは言っているらしいけど、第一王女殿下が男性嫌悪で女性好きになるくらいだから、相当の何かがあったんだろうね。深堀しても得しないから、私もマルロンも聞かないけど」
「その方が良いわ。今は落ち着いてるけど、当初は酷かったもの。夜中に魘されたり、絶叫しながら目を覚ましたりね。そもそも婚姻した相手が離婚した後に病死よ? 処分されたって丸分かりじゃない」
「その話は横に置いておく。それよりも我が領地から有用な者が逃げていってしまった件。母上はどのように責任をとられるつもりで? まさか何も無しで済むとは思っていないでしょうな?」
「分かってるよ! 前倒ししてお前の嫁にギルド長の座を渡しゃいいんだろ!」
「いったい、いつまで勘違いされているのか知らないが、既に私は貴方の息子ではなくウィーグン家の当主だ。本家の権力を握ったと思い込み、我が家の事を勝手に決めるのは止めていただこう。決定権は当主である私のものだ」
「そんな事は当たり前の事だろう! 私がいつ勝手にウィーグン家の事を決めたっていうんだい!?」
「では、母上の行動の所為で私が恥を掻いたのは何故ですか? 屈辱に塗れたのは何故だ? いったい誰の所為だと思っている!? また同じ事になりかねんと何故分からん!! どうやってアンデッドを退けたと聞かれたら、答えざるを得んのだぞ!!」
「………」
「素晴らしい実力の開拓者が倒してくれました。その開拓者はギルド長が激怒させてしまい、我が領地から逃げ出しており行方が分かりません。……なんて言える訳が無いもんねえ」
兄さんが激怒している一番の理由はそこなのよ。
そして分家だって、そういった先々を見通して動く。
にも関わらず分家出身の母さんがこれだものねえ……。
そりゃ兄さんが怒り狂うのも分かるわ。
何故ウィーグン家の為にならない事を感情的にやらかすのか。
そして感情的に動いている時点でウィーグン家を軽んじてないか? ってね。




