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0131・ハルマーの町に帰還




 Side:ウェロヌ



 母さんが強引な事をした所為だろうけど、朝っぱらからとんでもない言葉を聞く羽目になったわね。

 言いたい事は分かるし、イシス達の立場になったら当然だと言えるでしょうからね。


 しかし、それを本気でされるとウチは困るのよ。

 ここ数日で分かっているからね、イシス達には絶対に勝てないって。

 その中でも特に最悪なのがヌンになる。


 宿れる体の物に宿っているに過ぎず、そもそも殺すというか倒す方法が全く見当たらない。

 アンデッドを使う<死霊術士>のように複数で攻めて来ないものの、アレを幾ら倒そうとしても意味が無いのよ。


 しかも悠久の時を過ごしてきたと言うだけあって、それの片鱗が分かる程度には知識を持っている。

 私が相手という事で喋っている事は少ないでしょうけど、その知識量は相当な筈。


 どう考えても敵に回したらマズいのよねー……。

 このまま冗談でしょうって感じで話を流して穏やかに終わらせるのが一番良いんだけど、母さんのやった事が後々まで尾を引きそうな気もするわ。


 母さんは貴族って部分を強く考えすぎなのよ、本当。

 おそらくはバカにされてきた事によるコンプレックスなんでしょうけど、それを関係の無い者に八つ当たりのように押し付けるのはどうかと思うわ。


 そんな事をしているから、バカな奴等と同じ目で見られるのよ。

 バカなんて適当に放っておけばいいのに突っ掛かる。

 だからこそ昔、兄さんがそれでバカにされたんだからね。

 その所為で長く機嫌が悪かった。


 全て母さんが原因なのに、バカにされて耐えなければいけなかったのは兄さんなんだもの。

 そんな目に遭ったのは誰の所為だって考えたら、兄さんが母さんに隔意を持つのは当たり前でしょうに。


 母さんは分家の娘だから、余計に主家を盛り上げようとしなきゃいけないって思い込み過ぎなのよ。

 それこそが無駄な虚飾に繋がって、どうでもいい揉め事の元になってしまってる。


 あーあ、とにかくこんな事を考えてる場合じゃないわ。

 朝食も始まってるし、さっさと食べましょう。

 それに話せば分かる連中でもあるからね。



 「という事で、流石に殺されると色々と問題になるから止めなさい。それ以外で仕返しするなら文句は無いから。場合によっては、他の貴族家まで絡んでくるわよ」


 「面倒くさいな。それなら絡んできた奴らも一つずつ潰すか。どうせ場所さえ分かれば離れていても狙撃する事は可能だしな。遠くから撃ち殺されれば分かるまい」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 いや、ちょっと待って。

 遠くから狙撃って何よ? マジでそんな事が出来るの?

 ……あ、ダメだこれ。本気で止めないとマズい。

 なんでこんなバケモノが市井に居るのよ!?



 「いやいやいやいやいや、そんな事をされても困るからね? 普通に依頼完了の報酬を貰ったら出てっていいから。私が何とか母さんの相手をしておくから、その隙に出て行きなさい」


 「こっちに下らない事を言ってこなきゃ、元々何もしないって言ってるだろ? だが自分の欲が通ったら、新たな欲を押し付けてくるのが貴族だろうに。そこに1位も10位も関係あるかよ」


 「いやいや、そんな事はさせないし、ちゃんと私が出て止めるわよ。そもそも私が依頼の完了を証言するんだからね?」


 「そうなればいいけどな。しかし、貴族ってのは殺されるっていう自覚が無いのか? 民衆の蜂起で過去にどれだけ殺されてきたよ。にも関わらず、自分は大丈夫とか思い込んでるって正気か?」


 「………それを言われると何も言い返せないわね。確かに民衆が蜂起して貴族を打倒した事はある、それは我が国にも当然あるわ。にも関わらず忘れたのかと言われると、忘れていたんでしょうね。そうとしか言えない」


 『権力を持つ者というのは大抵において似た末路を辿るものですし、最後にはその権力を失うのですよ。残念ながら、その事実だけは変わらないのです』


 「新しい国に変わるのか、それとも民衆が政治をするようになるのかは知らんがね。貴族が欲深いなら、民も欲深いんだよ。根が同じ者である以上は、変わる事なんて無い。それが本質だ」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 何故かしら? こいつら見てきたように喋るわね?

 確かに貴族が欲深いなら、民衆も欲深いでしょうよ。

 同じ<アンズル>なんだから、根っこが変わるなんて事は無い。


 貴族と庶民は違うなんてバカな事を言うヤツが居るけど、私達<アンズル>の本質という意味では何も変わらないわ。

 そもそも魔法学というものは本質を見なければいけない学問。

 そういう意味ではゼンス王国の連中も変わらないのよ、まったく。


 何だか微妙な雰囲気になりつつも朝食を終わらせ、魔車に乗り込む前に捕縛した者達をイシスが綺麗にする。


 イシスは男達を持ち上げてから何かをすると、汚い物が全て下に落ちて行った。

 ただしズボンが邪魔で落ちないヤツは、イシスがそれを片刃の短剣で切り裸にしていく。

 男の裸なんて見たくもないんだけど?



 「言いたい事は分かるし、俺も見たくはない。ただ、この【クリーン】という【魔術】は汚れを全て浮かせて下に落とすというものだ。落とせなきゃ汚れは残ったままになる。だからこうする以外に無い」


 「それは仕方ありませんね。確かに下に落ちてもズボンで止まっていれば、それはくさいままですし……」


 「くさいままと裸、どっちがマシかという事ね。汚物のにおいを我が家の魔車に付けられても困るから、綺麗な方が良いわ。これに関しては諦める」


 「ああ、諦めろ。何でもかんでも上手くいく、もしくは自分の思い通りになる事など無い。<二兎追う者は一兎も得ず>というからな」


 「それは?」


 「分かりやすく言うと、欲のままに二つのものを追いかけた者は、その強欲ゆえに何も手に入らなかったという事だ。よくある事だろ?」


 「それはね。貴族だろうが庶民だろうが、要らない欲を出して失敗するなんて本当によくある事よ。あり過ぎて、今日も何処かで起こってるんじゃないの?」


 「我が国でも、よくありましたね。何処でも変わらない事なんでしょう、本当に」



 でしょうね。

 っと、綺麗にし終わったみたいだから、そろそろ出発しますか。


 それにしても、良い感じにリラックスしてきてくれてるわね。

 これはこのままいけば上手くいくかも……!

 そう考えれば気合が入るわ、頑張りましょう。


 …

 ……

 ………


 目の前にハルマーの町の門が見えている。

 ようやくここまで帰ってきたけど、ここからが長そう。

 まずは領軍の騎士団長と兵士長、それに家令のエーヴに立会いの下で引き渡さないとね。


 ここで生きていたと記録してもらわないと、勝手に拷問をして殺されても困るし、そうなると兄さんが間違いなく激怒する。

 それが連鎖すると、この娘を私の元に連れてくるのは難しい。


 せっかくイイ娘を見つけたのに、諦めるわけにはいかないわ。

 絶対に私のものにしてみせる。余計な奴等に渡してなるものですか!



 「私はウィーグン家のウェロヌ。騎士団長と兵士長、それに家令のエーヴを呼んできてちょうだい。この魔車の中にはゼンス王国の連中が乗ってるわ。……早く!」


 「は、はい!! かしこまりました!!!」



 慌てて走って行ったけど、そもそも我が家の魔車だって見れば分かるでしょうに。

 もしかして新入りかしら? 流石にそんな事は無い筈だけどね?



 「ここから騎士や兵士に引き渡すのか? まあ、町中に入って狙ってくる奴等が居ないとは限らないが……」


 『失敗したので、余計な事を言われる前に暗殺ですか? 可能性としては無いとは言えませんね。ゼンス王国がそこまでする国かは知りませんが』


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 この娘も含めて全員黙ったのが答えよね。どうやら、そこまでする国みたい。

 これはちょっと、真面目に対策を考えておく必要があるかな?


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