0130・全員の捕縛とハルマーの町へ
Side:イシス
とりあえず白い牛を<生物修復装置>に入れた俺達は、一旦惑星の方に戻るべく魔法陣の部屋へ。
そして惑星へと転移した。
「「うぐぐぐぐ……」」 「あぁぁぁぁ……」
呻いているアホどもをロープで縛り、俺は二人を担ぎ上げて走る。
男達は全員後ろ手に縛り、足も縛ってあるので動けないだろう。
そもそも片足を撃ち抜いているので、縛られていなくとも走れないしな。
俺は両肩に一人ずつ担いで【身体強化】を使って走っている。
流石に重たいので、それぐらいしないと大変なんだ。
ちなみにヌンには<死霊術士>を任せている。
何かあってもヌンならすぐに気付くし。
俺よりも監視役には適任なんだから、重要なヤツはヌンに任せた方が安全だ。
情けない気もするが、今は逃がさない事の方が重要だから仕方ない。
そんなこんなで素早く鉱山街に戻ってきた俺達は、町の連中が見張っている所に<死霊術士>を含めた全員を置く。
これ程までに入り込まれていたのかと驚く鉱夫達に、ここに居ないウェロヌの事を聞いてみた。
「貴族家の方なら宿の手配と魔車の確認に行かれたぞ? 特に魔車の確認は大変そうだからな。こいつら連れて行かなきゃいけないんだろ?」
「ああ、生きた証拠だからな。こいつらの所為で仕事が出来なくなって腹が立つ気持ちは分かるが、手は出さないようにしてくれよ。もし殺したりなんかしたら、貴族家が激怒するぞ?」
「流石に分かってるさ。殺したいほど腹立たしいが、かといって奴等からは聞かなきゃいけないんだろ? 流石に貴族を怒らせたいヤツは居ねえさ。目を付けられる方が困る」
「そうそう。それにあんたらの御蔭で誰も死んじゃいないからなぁ。これで多くが犠牲になってりゃ違うんだろうけど、誰も死んでない以上は貴族を敵に回す方が怖えよ」
「ま、とにかく俺達は早めに戻らなきゃならないんだが、今から出てもハルマーの町の夕方に間に合うかね?」
「んー……魔車ならと思わなくもねえが、こいつらが重いんで無理じゃねえか? というか、朝から出てもこいつらの所為で遅れるだろうし、一泊は野宿するのを覚悟するしかないと思うぜ?」
「それかハルマーの町に誰か遣わして、魔車と兵士をこっちに寄越してもらうかじゃねえか? 何台かに分けりゃ、その日の内に帰れると思うが……」
「こりゃ、野宿を覚悟した方がいいな。どのみち俺達なら何の問題も無いし、何とかなるだろ。ここでダラダラと時間を潰す事になるのも困る」
俺達はウェロヌに相談するべく宿に行き、ウェロヌに今から鉱山街を出る事を伝える。
魔車にはギリギリで詰め込み、俺達は外を走る事にした。
少しでも重さを減らす為だ。
ウェロヌが御者台に座り、早速とばかりに魔車を発進させる。
既に点検などは終わっていたので、その準備に時間は掛からなかった。
適当に食べる物を買ったらアイテムバッグに詰め込み、俺達はさっさと鉱山街を後にする。
俺には周りの風景を楽しんだりする余裕は無いが、それでも魔車の後ろをついていく。
行きと魔車の速度は変わらないが、多くを乗せているのでそれだけ負荷は掛かっている。
途中で何処かが壊れなきゃいいなと思いつつ、俺達は順調に進んでいった。
…
……
………
杞憂だったのかは知らないが、休憩を何度も挟みながらも半分以上は走破したところで夕方が来た。
流石にやはり一日で戻る事は無理だったらしい。
俺達は鉱山街で買っておいたサンドイッチのような食べ物を取り出し、それを食べつつ鍋を取り出して石を並べる。
この鍋も石も<物品作成装置>で作った物であり、石の形は長方形で作製した。
それを適当に並べて鍋が置けるようにし、その中に水を入れていく。
水は小樽に入れてあるので、柄杓のような物で掬って鍋の中へ。
そしてハーブと蟹と魚を入れて煮ていく。
出汁の元があればマシになるのだが、そんな物は無いので蟹が出汁の代わりだ。
木や炭を使わず俺が料理をしているのを見て驚いているが、俺はその驚きをスルーしている。
一度<時空の狭間>に戻って<物品作製装置>の部屋に行き、そこで色々な物を作ってアイテムバッグに入れているので、今の俺は料理が出来る程度の物は持っていた。
ちなみに俺達が居なかったからか、未だに牛の治療などは終わっていないらしい。
時間と空間が断裂しているからか、俺、つまり<時空の旅人>が居ない間は停止するようだ。
仲間だとまた違うみたいなんだが……。
ちなみに捕縛した連中は、現在全員が外に出されている。
何故なら漏らされても困るからで、魔車に入れる際には俺が【クリーン】を使う事になっている。
ちなみにだが、既に食事は無理矢理に終わらせた。
俺が木の皿を出し、そこにサンドイッチ風の物を置いただけだ。
連中は随分と腹が減っていたのか、犬食いをさせられていたが必死に食いついていた。
まあ、あんな事をしたのだから自業自得だ。それがたとえ国からの命令でもな。
国から命令されればテロが許されるのかといえば、そんな事は絶対にあり得ない。
そもそもテロはテロであり、一般人を標的にしたものだ。
それを許す事など出来ない。
まあ、決めるのはこの星の連中なんだが、戦争は軍人同士でやれとしか思わないんだよ、俺は。
たとえ戦争だと言い張っても、一般人を標的にした段階でテロだ。
そしてそれは自分達を貶める行為にしかならない。
鍋が煮えたので適当な椀に入れて食べようか。
バステトは深めの皿に入れて出したが、蟹に関しては身だけを出してやった。
方法? 鉄の鋏で切って出したら終わりだよ。一番簡単な方法だ。
ウェロヌも欲しがったので木製の椀とスプーンを出してやり、何故か女の<死霊術士>の分も出す事に。
何でだと言いたいところだが、まあ一回だけならいいかと納得する事にした。
食事後、俺達は適当に寝る事にして、熊の毛皮を敷いて寝転がる。
ここでもウェロヌが言ってきたので、仕方なく余っている熊の毛皮を渡す。
尚、夜の監視はヌンに任せるので問題なし。
「そもそもヌンは眠る必要も無いから任せて安心だ。ロープなんかを切ったとしても、すぐにヌンが気付くし、逃げようとすれば様々な場所を撃ち抜かれるだけで終わる。死にはしないが、痛みと苦しみにのた打ち回る事になるだろう」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
『という事で、私に任せていただければ問題ありませんよ。夜は暇なので、むしろ逃げてくれると楽しくていいですね。狩りのようなものです』
「「「「「「「………」」」」」」」
狩りの獲物にされたら堪らないからだろうな、捕まっているバカどもは大人しく寝転がった。
クソをする可能性があるので俺達は離れているが、しかしそこまでメチャクチャに離れている訳じゃない。
見張りという意味では離れられないのだから仕方ないが、それでも漏らすヤツが出たら離れよう。
臭い臭いの中でなんて寝たくないし。
バステトは既に丸くなって寝ているので、俺も目を瞑り寝る事にした。
今日も疲れたからか、すぐに寝入る事が出来るだろう。
…
……
………
朝まで目覚める事は無かったが、外で寝たからか朝日で目が覚めた。
人間の健康的な起き方って感じだな。
若干疲れが残っていない訳でもないが、それでも酷くはない。
「おはよう、ヌン。昨日の夜はどうだった?」
『おはようございます、イシス。特に問題などはありませんでしたよ。捕縛されている者達も眠ったままでしたしね。まあ、私が少し細工をしましたが』
『何をしたんだ? 幾らなんでも殺してないよな?』
『私がそんな事をする訳がないでしょう。ちょっと音を流しただけです、精神がリラックスできる聞こえない音を。その御蔭で朝まで起きる事が無かったのですよ』
「そうだったのか。ま、何も無かったのならいいさ。今日中にハルマーの町に戻れるだろうから、こいつらをウィーグン家に預けるだけだ。それで俺達の強制依頼は終了。さっさとハルマーの町を出るぞ」
『そうですね。このままだと一度だけだと言っておいたのに関わってきそうですし、こちらを使おうとしてきそうです。そもそもオオスの村のギルド長も手紙にそういった事を書いていた可能性がありますしね』
「俺達が使えるヤツだから都合よく使えって? オオスの村のギルド長の婆も碌なヤツじゃない感じだったからな。どっちも碌でもないし、さっさと物理的に離れるに限るな」
『無理矢理に引き止めてくる可能性も否定できませんがね』
「無理矢理? なら殺せばいい」
「流石に母さんを殺すっていうのは勘弁してくれない?」
おっと、ウェロヌが起きたらしい。
とはいえ聞かれていても問題ないから、どうでもいいが。




