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0129・掃除が終わって




 Side:イシス



 鉱山を出た俺達は鉱夫達に事情を話し、監視と確認に人員を割いてもらった。

 その御蔭で鉱山内にアンデッドが居ない事を確認し、アンデッドが全て居なくなった事をウェロヌが宣言した。


 その後、昨日宿に侵入した奴らも合わせて尋問したのだが、どうやら捕まえた奴らで全員ではないらしい。

 まだ居たのかよ……と思うが、愚痴を言っている場合じゃないな。



 「で、お前らの仲間は何処に居る? 言わないと今度は腕が酷い目に遭うぞ。既にお前らは両足を撃たれているが、更に腕もとなれば、まともに食事もとれなくなるな」


 「し、知らん。これは嘘じゃない。この鉱山街の外の何処かで、鉱山街を襲わせる為のアンデッドを生み出している筈だ。残っているのは三人で、その中に<死霊術士>も居る」


 「本当?」


 「は、はい。私は下っ端ですが、本国ではかなりの高位術士の方です。偉い方ですがプライドが凄く高い方で、正直に言うとあまり話したくないと言いますか……」


 「ああ、プライドが高いだけのクズって訳ね。そういう貴族家のヤツとか散々見てきたけど、それにそっくりなんでしょ? あいつら自分達がゴミだって理解してないのよねー」


 「それに関しては何とも言えませんが、あの方は鉱山の中など自分の高貴さが穢れるから、役立たずのお前が行って来いと……」


 「そういうヤツか。そいつが何処に行ったかは分かるか?」


 「いえ、私も知りません。というより、作戦があったとして、それに素直に従う方ではないと思います。貴族家の方ですから、貴族以外の者が何を言っても聞かれる事は無いでしょう」


 「そういうゴミが、よく鉱山街の外の仕事を引き受けたな」


 「ケッ! あの男の事だ、どうせ何もせずに遊んでるに決まってる。外に行ったとはいえ、むしろ自分だけ逃げる気で出たんだろうよ」


 「貴族家のボンボンなら十分に可能性はあるわね。それでも探して見つけなきゃいけないけど、探せる?」


 「鉱山街の外って言ったところで、山の中と考えると範囲が広すぎる。瘴気を感知する事は可能だが、広範囲を探し出すのは難しいぞ。魔力を探る事も出来るが、魔物の魔力とは判別が付かないんだよなぁ」


 「魔力はともかく瘴気が分かるだけで十分すぎるでしょ。貴方達ってどう考えても<死霊術士>の天敵よね? いえ、アンデッドの天敵と言うべきかしら?」


 「どっちでもいいが、この町を含めて任せられるか? 俺達は外に出た<死霊術士>を追う。契約には無いが、逃がして多くの町の者が死ぬなんて事は無いようにしておかないとな」


 「鉱山街には自警団も居るし、その者達を使って見張るから大丈夫よ。こいつらだって立って歩けるでしょ。手加減してたっぽいし」


 「かなり大変だろうが、歩けない事は無い筈だ。じゃあ、俺達は行ってくる」



 俺はそう言って鉱山街の外へと出ると、ヌンとバステトと共に逃げたヤツの行方を追う。

 町から見えなくなった所で出したのは<瘴気発見器>であり、アンデッドを生み出したならコレで分かる筈だ。



 『<瘴気発見器>を使えば分かるでしょうから、そっちの方が感知するより楽で助かるわ。そういう意味では作っていて良かったけど、元々は瘴気の集まっている所を探す為に作ったのよね?』


 『違いますよ。それは<ムンガ>が探せないかと先走って作った物ですが、結果として龍脈探しに役立った物、というのが正しいでしょう』


 「わざわざ蒸し返すのは止めてくれるか? それよりアンデッドを生み出しているなら瘴気の方向で……針の方向がすぐに定まったな?」


 『という事はそちらの方向でしょう、さっさと行きますよ。あまり時間を掛けても仕方ありませんし、こういう者は早めに捕まえておかないと面倒な事になったりしますからね』


 「だな」



 俺とヌンとバステトは針の向いている方向に走って行くと、ある程度移動した場所でアンデッドの反応を発見した。

 が、何故かそいつらは牛と戦っている。

 ……っていうか、この山には牛が居たんだな?



 「くそっ!! どうしてここにウェブルカウが居るのだ! お前達、早く何とかしろ!」


 「あんたがウェブルカウの群れを攻撃した所為じゃないか! 何で余計な事をするんだよ!」


 「グダグダ言ってる場合か! おらぁ!!!」


 「モッ!? ブゥモォォォォッ!!!」



 白い牛とグレイ三人が戦ってるが、剣を持っているグレイの剣が刺さり、白い牛は大きなダメージを負ったみたいだ。

 白い牛の体高は1メートル50センチくらいと、あまり大きい牛の種類じゃないらしい。


 それでもグレイどもを叩き潰そうと、突撃で撥ね飛ばした。

 あの巨体が突撃してきたら、そりゃ吹き飛ばされるし撥ね飛ばされるわ。

 大きくない牛だと言っても、それなり以上の体重をしてるからなぁ。


 そんな牛を他のグレイがかわしながら攻撃し、白い牛には更に剣が刺さる。

 アンデッドを使役する筈の<死霊術士>は完全に怯えていてパニックになっているのか、震えているだけだ。


 撥ね飛ばされていたグレイが起き上がったが、フラフラしているという事は相当のダメージを受けたらしいな。

 それでも死ななかったんだから立派だ。情報源という意味でもな。


 牛は何度も突撃をしていたが、傷と血を流しすぎたからか、遂に倒れて横倒しになってしまう。

 俺達も見ている場合じゃなくて、早く助けるべきだったか?

 でも極度に興奮している牛には言葉は通用しないからなぁ。


 ま、とりあえずは考えてないで、ゴミどもの足を潰すか。


 俺はヌンとバステトと共に、タイミングを合わせて【ヒートバレット】を撃ち込む。

 それは油断している連中の足をあっさりと抉った。


 ドス!ドス!ドス!



 「「「ぐあっ!?」」」



 突然の衝撃と痛みに声を上げるグレイ三人。

 俺達はそれを確認した後で姿を現し、まずは牛を助ける為に触れながら<時空の狭間>へと戻った。


 ちなみに牛を助けるのは、仮に助けても誰にも<時空の狭間>の事を伝えられないだろうと思っているからだ。

 バステトも元々はそういう意味で助けた部分はある。


 <時空の狭間>に戻った俺は、牛の体を【身体強化】で何とか持ち上げ、ヌンにも手伝ってもらいながら<生物修復装置>まで運ぶ。

 部屋まで運んでから気付いたんだが、この牛は<生物修復装置>に入るんだろうか?



 「大丈夫ですよ。もし装置以上に大きい存在であれば、その時だけ内部の空間が拡張されますので。それよりも早く入れないと、どんどん死に近付いてます」


 「やっべ! 疑問とか持ってる場合じゃなかった!」



 慌てた俺はヌンと協力し、牛を<生物修復装置>へと入れて蓋を閉じる。

 その後はヌンの言う通りに治療と最適化と言語付与に魔術回路付与を始めた。



 「なんでここまでするんだ? 言語と魔術回路は確実にやり過ぎだろう。もしかして仲間にする気か?」


 「そうですよ。この牛は何故か魔力が多いのと、ちょっと特殊な能力を持っているみたいですので、仲間にしておいた方が都合が良いと思いました。後で<肉体縮小化薬>を飲ませておくべきです」


 「なんだそれ? って、言葉から何となくは分かるけど、冗談じゃなくそんな物が存在するのか? 体を小さくするって、元の質量はどこ行ったんだよ」


 「バステトを見ているのに、まだそんな事に囚われてるのですか? 元の星の常識か知りませんけど、それは通用しませんよ?」


 「………そういえば、バステトも大きくなったり小さくなったりしてたな。という事は、大きくなったり小さくなるって変な事じゃないのか?」


 「変な事ではないですよ。珍しい事ではありますけど」


 「あ、そう……」



 何とも言い難い言葉が返ってきたな。


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