0128・新しい鉱脈の先
Side:ウェロヌ
私達は昨日撤退せざるを得なかった場所、つまり新しい鉱脈へと踏み込む。
やはり昨日と同じように数が多く、ヌン達が前で浄化している合間に【茶魔法】でアンデッドを牽制する。
相手を近付かせない程度の事は私にだって出来るし、流石にこれ以上お荷物な姿は晒せない。
プライド的にも。
私が【アースボール】などで押し退けて倒していると、近くに寄って来ていたアンデッドが倒れた。
おそらく後ろのイシスが浄化してくれたのだろうが、本当にあっさりとアンデッドが動かなくなるわね。
その圧倒的な【魔術】っていうのを使えたらどれだけ良かったか……。
我が国の【魔法】はゼンス王国に比べたら遅れてるし、そもそも他の国に比べて魔法使いの地位が低いのよね。
これは歴史的に力を入れてこなかった所為だと言われてるし、実際にそうだから反論の余地が無いのよ。
私だって国立魔法学院に通ったのにコレだもの。
こう見えて歴代でも上で、トップテンに入るほどの腕前なのよ、私。
それが全くどうにもならないし、相手にもならずにお荷物だなんてね。
今の若い子が私より上手いって聞いた事が無いし、やはり我が国の魔法学院は遅れていると言わざるを得ないわ。
だからアンデッドが出てきて困ってるんだしね。
ようやく新しい鉱脈の一部屋目が終わったわ。
イシスがすぐにアンデッドの死体……っていうのも変だけど、浄化されて唯の死体になったのを回収してる。
こうしないと邪魔だし<死霊術士>に利用される可能性もあるから仕方ないわね。
まだ四種族のアンデッドは出てきていないから良いけど、もし出てきたら戦えるかは疑問がある。
こいつらは関係なく戦いそうだけど、私は戦えるかどうか分からない。
敵もそこまでの外道じゃないと思いたいけど……。
「よし、死体の収納は完了だ。先へと進もう。まだ奥にアンデッドが居るのは、瘴気で分かってる。俺達から逃げられると思うなよ」
「………どういう事? 逃げられる?」
『魔力と瘴気を探れば分かりますが、瘴気を感じない魔力が4つあります。つまり生きている者が居るという事ですね』
「生きている者が? という事は、その四つの反応こそ犯人。っていうか<死霊術士>ね」
「そういう事だ。悪いが勝手に持ち場を離れたり、しなくてもいい事をするなよ? むしろ迷惑になるだけだ。もし挑発されても無視しておけ。敵は逃げられないんだからな」
「分かってるわよ。そもそもこういう時に挑発してくるなんて、間違いなく逃げ出そうとしてるじゃない。流石にそんなバカな狙いに引っ掛かったりしないわよ」
「ならいい」
一応で聞いたんでしょうけど、本当に私がそんな下らないトラップに引っ掛かると思ってそうね。
何だか腹立たしいけど、注意はちゃんと聞かないと。
流石に上位貴族のバカ息子みたいな事をする訳にはいかないわ。
慎重に進んで次の部屋、ここが新しい鉱脈の最奥だけど……確かに聞いた通りに四人いるわね。
真ん中左の黒ローブが<死霊術士>かしら?
後はみすぼらしい服だけど、立ち姿に隙が無いわ。まるでウチの騎士みたい。
「ハッ! 朝も早くから鉱山に入ってくるとはな。おかげで出る機会を失うわ、無駄に戦力を減らされるわ、碌な事になってないぜ。お前らを殺してさっさと脱出しないとな」
「俺達を殺したところで住民に見られるのは間違い無いぞ? ついでにアンデッドである以上、お前らがゼンス王国の者だって事はとっくにバレてる。何をしに来たのか知らんが、本国に戻ったら責任を問われるな?」
「チッ! 余計なお世話だ。お前ら如きに心配される事じゃない」
「そうか? アンデッドは浄化され、夜中に宿に侵入した連中は無様に捕らえられたぞ。十二分にマヌケじゃないか? ここまでやらかしたら責任を問われるのは当然だろうなぁ……」
「お前……! 覚悟は出来てるんだろうな? いや、出来てなかろうが、ここで殺す。お前ら今すぐ殺るぞ! <死霊術士>はアンデッドを突っ込ませろ!」
「「おうっ!」」 「は、はい」
あれ? ローブを深く被ってたから分からなかったけど、あの<死霊術士>って女性だったの?
これは捕らえてジックリと聞き出さないといけないわねえ……そう、ジックリと。ウフフフフ……。
「俺は逃げられないように入り口を塞ぐ。ヌンとバステトは好きに暴れてくれ。そしてウェロヌ、お前はとにかく死ぬな。何だったら入り口の外に出ててもいいぞ」
「こんなチャンスで逃げ出すわけが無いでしょうが!! 絶対に逃げないわよ!!」
「お、おう、そうか……。なら死なないように頑張ってくれ」
おっと。ついつい勢いあまって声が大きくなってしまったわ。
バレたら面倒な事になるから隠さないとね、デュフフフフフフ……。
早速ヌンとバステトがアンデッドを浄化し始めたわね、バタバタと倒れ始めたわ。
「何だと!? おい<死霊術士>!! アンデッドが倒れてるじゃないか、真面目にやれ!」
「は、はい! ……あ、あれ? なんで?」
「おい、アンデッドどもが立ち上がらねえじゃねえか! さっさとやれや!!」
「や、やってます! でも、何故か立ち上がらないんです!!」
「そんなバカな事があるか! お前がマヌケなだけだろうが! さっさとしろ!!」
「バカだな、お前ら。アンデッドは瘴気が無ければアンデッドにはなれないんだよ。俺達が浄化してるんだからアンデッドは普通の死体に戻るし、アンデッドにする為の瘴気がここにあるわけ無いだろ。マヌケ」
「な、なに!? そんなバカな!!」
「バカはお前らだと言ってるだろうが。本当に話を聞かない奴等だなー。だからバカなんだぞ? アンデッドが役に立たないんだから、実質ここでは四対四でしかないんだよ。理解したか? マヌケ」
「くそが! やっちまえ!!」
「「おうっ!!」」 「えっ!?」
あらら、相手が突撃をしてきたわ。
アンデッドが倒れた今、敵に出来るのは突撃だけだから当然かしら。
ここは私が格好をつけて【茶魔法】を!
ドス! ドス! ドス!
「「「うぎゃぁぁぁぁぁ!!?!!?」」」
ああ、うん……。
まあ、私の出番がある訳ないわよねえ。
何か知らないけど、敵の足に何かが当たった音がしたわ。
うん? あれ何かしら?
「疑問を持ったみたいだが、あれは【ヒートバレット】。簡単に言えば、熱気を直接ぶつけて抉るものだ。火傷と抉り傷を同時に与えるものだが、火傷を伴う所為で傷の治りは極めて悪い。何故なら抉られた後に火傷にされて、その状態で傷が固まるからだ」
「………それって、治そうと思ったら、もう一回抉る必要があるわよね?」
「その通りだ」
「うわぁ……」 「ヒッ!?」
おっ、あの娘なかなかイイ声を出すじゃない? ますます私好みの子ねえ。
兄様を説得して私の家、じゃなくて監視下におかないと危険だわ。
うん、是非その方向で行きましょう。
「さて、お前も抵抗するなら撃ち込むが……どうする?」
「て、抵抗なんてしません。抵抗しませんから、攻撃しないで下さい」
「なら、私が見ておくわ。大丈夫、私に任せなさい!」
「………まあ、いいか。それよりここが最奥である以上、これ以上のアンデッドは居ないと思うんだが?」
「……えっ? 何?」
「あのなー。お前さんがついてきたのは、依頼の完了の宣言をする為だろうが。で、ここが最奥でこれ以上は何も無い。外へ出て、後は鉱夫達と見回らなきゃいけないが、これで終わりだろ?」
「ああ、そうね。これ以上はアンデッドも居そうに無いし、終わりでいいんじゃない?」
「適当だなー」
適当っていうか、ここが最奥なんだからイシスが言う通り、もうアンデッドは居ないでしょう。
なら終わりでいいのよ、終わりで。
私はそんな事に構っているほど暇じゃないの。




