0125・アンデッド掃討 その2
本日と明日は、通常より2話多い8話更新とします
Side:イシス
坑道内のアンデッドを掃討する依頼を遂行中だが、とりあえず最初の大部屋のアンデッドは終了した。
50体も居なかったものの、数えて42体いたのだから結構な数がここに居た事になる。
俺達は左右に伸びる坑道を先に終わらせる事にし、まずは右の坑道へと出発。
今度の隊列は先頭がヌン、次がバステトとウェロヌ、そして最後尾が俺という並びになる。
これは別の所から来たアンデッドに背後から不意打ちを受ける可能性がある為、ここからはバステトか俺のどちらかが殿になる必要があるからだ。
そして殿に向いているのは<時空の旅人>である俺という事になる。
実際に俺が殺されれば全員が<時空の狭間>に戻されるが、バステトだと殺された後もこちらに居るままだ。
言葉は悪いが、バステトを最後尾に置いた場合、一気に攻められて連続して殺されるとウェロヌを守りきれない。
ところが俺の場合は殺された瞬間に時が止まるのだ。
これなら対処できる時間と余裕が生まれる。
そういう意味でも殿は俺の方が向いているわけだ。
もちろんウェロヌに本当の事など言ってないし、俺達だけで決めている。
わざわざ言う意味も無いしな。
先頭のヌンが順調にアンデッドを倒しているが、バステトもその後ろからアンデッドを浄化している。
それを見ながら羨ましそうに小さな声を上げているウェロヌ。
そもそもこいつは新しい魔法理論とやらを試しに来たんじゃかったのか?
口に出すと前に出そうで面倒だが、とはいえ後で文句を言われるのも嫌なので、行き止まりに到達した今の内に確認しておく。
「ウェロヌは新しい魔法理論とやらを試しにきた筈だが、それはいいのか? そもそも何色が使えるのか知らないが」
「あっ、そうだったわね。【魔術】が羨ましくてすっかり忘れてた。私が使えるのは青と茶なんだけど、茶じゃなくて青でアンデッドをどうにか出来ないかと思ってね。それを試したかったの」
『それならゾンビ系の場合は乾燥させてしまえばいいでしょう。そうすれば良く燃えるでしょうしね。スケルトンの場合は砕くしかないでしょうが、ゾンビの場合は工夫する余地がありますね』
「そっか【ドライ】で何とかしてしまえばいいって訳ね。確かに乾燥させてしまえば良く燃えるだろうし、体も脆くなるから簡単に壊せるようになる。うん、私が思っていたのよりも上手くいきそう」
『元々はどんな方法を考えていたのよ? 青って事は水にまつわる【魔法】なんでしょ?』
「私が一番に考えていたのは茶と青の【複合魔法】よ。要するに泥で攻撃しようというものね。上手く行けば足なんかに絡みついて、アンデッドの動きを悪くするっていうものだったんだけど……」
『それでは青と茶の色を持つ者しか使えませんから、汎用さに欠けると思います。それなら青か茶のどちらかにした方が良いでしょう。基本の【魔法】の使い方を工夫した方が良いのでは?』
「新しい【魔法】じゃなくて、既存の【魔法】の使い方を工夫かぁ……。そんな事、考えた事もなかったわ。既に誰もが考えてきた分野だもの、今さら私がそこに進んでも意味が無い。そんな風に考えてたわね」
『そもそも茶って土系なんでしょ? 石とか扱えないの? イシスとヌンが前に話してたけど、石を投げるって何だかんだと言って強力なんでしょ? だったらそれを目指せばよくない?』
『もしくは石で押し潰す、ですかね? まあ、これからの研究次第でしょうし、今は大人しくしていてくれると助かります。私達でも助けられない可能性もありますしね』
「流石に私も死にたくないから、大人しくしておくわよ。貴方達が役に立たないなら私がって思ってたけど、簡単にアンデッドを倒していくんだもの、私の出番なんて何処にも無いじゃない」
それがちょっと不満なのかもしれないが、本人も死にたくないらしいので大人しくしてくれるだろう。
彼女の気持ちが変わらないうちに、さっさと鉱山の掃除を終えるべきだな。
俺達は最初の大部屋に引き返し、今度は左の坑道へと進んで行く。
こちらも少々のアンデッドが居ただけで、それも倒した後にストレージに入れているので復活は無い。
出てきているのはゾンビだけであり、種類は狼、ウサギ、ネズミ、コウモリといったところだ。
鉱山街の近くにはネズミが多いらしいが、ゾンビの比率的にはネズミは少ない。
むしろ多いのは狼なのだが、ゾンビとなっているからなのか鼻は全く利かないようだ。
俺達が見えてから反応しているので、見えない位置から浄化してやれば簡単に沈む。
なので楽ではあるな。
総じてアンデッドというのは生者の時に比べて弱体化し、生きている時より強いという事は無いようだ。
大部屋に戻った俺達は、今度は奥へと進んで行く。
…
……
………
支道を含めてどんどんアンデッドを始末して収納。
それを繰り返しながら進み、遂に新しい鉱脈の所までやってきた。
ここが領地にとって最も重要な場所だけはあり、ここにアンデッドが集中していた。
最初の大部屋以降、あまりアンデッドの数が多くなかったのだが、ここに来て一気に噴出するように出てくる。
流石の俺も前に出て戦わざるを得ず、一息吐いた後は撤退を余儀なくされた。
「流石にこれは無理ね。一度撤退して、明日もう一度ここに入ってきましょう。せっかくここまで上手くいっているのに、ここで無理して失敗するのはね。流石に駄目すぎるわ」
『私もそう思うし、そろそろイシスのストレージもいっぱいでしょう? 死体が入らなくなるから無理に進めないわ。一旦帰るべきよ。それに、そろそろ夕食の時間の筈よ。お腹空いたし』
「そうね。ゆっくりしたいし、鉱夫達にお願いして監視していてもらいましょう。上手くいけば明日にはアンデッドの掃討は終了する筈よ。明日は鉱夫達も動員して、全員で調べ上げればいいわ」
「最後は数多くの者が調べる必要があるからな。でないと取り溢しはどうしても出てくる。俺達だけじゃ絶対に目が届かないし、逃げられる可能性は否定できない。逃げ回られて坑道内に残られるのが一番面倒だ」
「本当にね」
まあ、実際のところは違うんだけどな。
俺達は瘴気を感知してるんで、アンデッドを取り溢す事は無い。
もちろん瘴気を隠蔽するアンデッドも居るんで、絶対とは言えないんだけど。
ちなみに瘴気を隠蔽するアンデッドで最有力なのがヴァンパイアだ。
連中は瘴気を隠し、人間のフリをする事が可能ならしい。
実際に人間と同じか、それ以上の知恵を持っている場合もある。
どう考えても、アンデッドの中ではトップクラスといえる厄介な連中だろう。
出来れば会いたくないし、何なら<ムンガ>レベルに面倒な連中だろうと予想している。
コウモリになったりするし。
俺達が外に出ると既に夕日が出ている時間だった。
なので慌てて鉱夫達を連れて町の外に出た俺達は、穴を【魔術】で掘ってからアンデッドの死体を大量にその中へと出す。
「「「「「ヒェッ!?」」」」」
鉱夫達はビビって声を上げたが、ウェロヌが鉱山内に居たアンデッドだと説明。
俺達は【魔術】を使って三人で一気に焼き、死体が焼けたら埋めて終了とした。
町の外に出たのは、アンデッドの死体を処理するのに、町中でやる訳にはいかないからだ。
明日は新しい鉱脈に行き、そこのアンデッドを完全に浄化したら終わりだと伝えると、鉱夫達の喜びは大きかった。
彼らも鉱山内の仕事が出来ないと生活が出来ない。
その為、早く何とかしてほしかったようだ。
それでも出てくるのがアンデッドなので、大きな声では言えなかったらしい。
アンデッドを何とかするのは大変だという事は、一般人にも知られているらしいな。




