0124・アンデッド掃討
Side:ウェロヌ
遂に鉱山内に突入する事になった。
一番前はヌンという傀儡で、その後ろにイシスという<ソーリャ>と、バステトという猫? という生き物が居る。
その後ろに私なんだけど、これじゃ実験は無理かな?
とはいえ死にたくはないし、この隊列を組んでくれるなら助かるとも言えるけどね。
逃げる際に一番逃げやすいし、そうしてくれているんでしょう。
逆に言えば逃げてもいいと言われてるようなもので、それはそれで腹が立つけども。
まあ、それでも死ぬよりはマシだから文句を言う気は無い。
これが高位貴族家の連中なら「バカにしてるのか!」と怒り、実際に魔物が出てくると「早くなんとかしろ!」と言い出すのよねえ。
邪魔でしかない。
とりあえず過去の鬱陶しいゴミどもの事は忘れて、少し慎重に警戒しながら進みましょうか。
【ライト】とかいう明かりを点けてくれてるから、ランタンを使わなくて済むので助かるわね。
ここまで出来る事に驚きだけど。
『この先に大部屋になっている場所があるな。そこから左右に坑道があり、奥へのルートは真っ直ぐだ。順番に潰していく必要があるし、まずは大部屋のアンデッドを潰してから左右に行くぞ』
『分かりました。既に確認できているだけで28体のアンデッドが居ますね。地上に21、上に7ですから、上の7がコウモリのアンデッドなのでしょう。大した数ではありません』
こいつらって、どうやって会話しているのかしら?
【念話】とか【念波】とか言ってたけど、全くサッパリ分からないのよねえ。
だからこそアンデッドを倒せるんじゃないかと思ってるんだけど……。
それより敵の数が大凡分かってる?
それって探知してるって事でしょうけど、いったいどうやってやってるのよ。
後で聞いたら教えてくれるかな?
『しかし大部屋から出てこないのが不思議だな? 【死霊術】が使えるヤツが、そう設定しているんだろうが……統制のとれているアンデッドって、ジョークかと思うわ』
『確かに冗談みたいな存在ね。アンデッドって生者を食べる事しかしないって思ってたけど、誰かに作り出された奴らは指示に従うのかしら?』
『指示に従うと言うよりも、通常のアンデッドと【死霊術】のアンデッドは別です。通常のアンデッドは瘴気の渇望通りに動いているに過ぎません。それが生者を食らうという事です』
『じゃあ【死霊術】のアンデッドは?』
『【死霊術】のアンデッドは、僅かしか瘴気を持っていないのです。その殆どを術者か道具の魔力で構成されている為、瘴気の渇望そのものが薄く少ないのですよ。瘴気の量が少ないのですから、当たり前ですが』
『つまり【死霊術】のアンデッドは、瘴気を利用しただけの人形……傀儡って事ね? でも魔力を大量に必要とするって事は、そう簡単には使えないって事じゃない?』
『そんな事はありませんよ。魔道具や魔石などを使えば……ここで止まって下さい。ここからなら、大部屋の全てのアンデッドを捕捉できる筈です』
立ち止まった後、連中が集中し始めたのが分かった。
私には分からないけれど、何かをしているのだと思うわ。
言っている事が事実で、近くにアンデッドが居るのなら、今は疑問を聞くよりも黙っていた方がいいわね。
何をしているかは凄く気になるけど。
そう思って待っていると、奥から何かがバタバタと倒れる音がしてきた。
前はちょっとした曲がり道になっており、そこを曲がった先に大部屋があるんだけど、そっちから聞こえてきたわ。
いったい何があったのか分からないけど、倒れた音がしたって事はアンデッドが倒れたって事よね?
それ以外に倒れるものも無いだろうし。
となると倒れたのはアンデッドって事になるんだけど、遠くから、しかも曲がった先の道に居るアンデッドを攻撃した?
冗談でしょ!?
『さて、もう居ないようだが、慎重に進んで行こうか』
<ソーリャ>のイシスがそう言うと、前方のヌンが歩きだした。
……あれ? 足音がしない?
……よく考えれば坑道に入ってから、殆ど私の足音しかしていない気がする。
この連中は道具か何かを使って足音を消してるの?
もしくは足音のしない歩き方をしてるって事?
分からない事だらけだけど、今は大きな声を出して聞けない。
物凄くモヤモヤするけど仕方ないわ、ここで大きな声を出すとアンデッドに気付かれるし諦めるしかない。
『左右の坑道の先にもアンデッドが居ますが、まずはこの大部屋のアンデッドを片付けてしまいましょう。イシス、頼めますか?』
『あいよ。【ストレージ】に入れておけばいいんだろ? 一応俺の魔力の最大値が減ってる事は理解しておいてくれよ。それと200体も入らないんで、一度は戻る必要がある。最悪はバステトにも【ストレージ】を使ってもらおう』
『まあ、いいけど。あまりアンデッドを収納したくないのよねえ』
収納って言ったって事は【収納魔法】かしら?
そもそもこいつらが使っている力がサッパリ分からないし、なんで大部屋の中のアンデッドが倒れて動かないの?
こんなの初めて見たんだけど。
「ねえ、なんでアンデッドが倒れてるのよ。それに何で襲って来ないの? 意味が分からないんだけど、説明してくれない?」
『それはいいけど、大きな声を出さないでくれよ?』
「分かってる。だから小声で話してるでしょうが」
『とりあえず俺達が使っているのは【魔法】ではなく【魔術】だ。詳しい事はヌンに聞いてくれ。俺達に【魔術】を教えてくれたのもヌンだからさ』
『まあ、構いませんけどね。それよりイシスはアンデッドの回収をお願いします』
『分かってる。なるべく早く終わらせるよ』
そう言ってイシスはアンデッドを回収し始めた。
その間に木製の傀儡であるヌンが教えてくれるらしいけど、私に使えるものなのかしら?
『まず第一に【魔法】と【魔術】は全く違います。決められた事を決められた通りに行うのが【魔法】であり、自分達の技術で魔力を操り行使するものを【魔術】と言います。ちなみに【魔法】を定義して行使可能にしているのは神ですね』
「(コクコク)」
私は頷く事で理解している事を示す。
そのリアクションを返す事でヌンに続きを促した。
『つまり神の定めたものが【魔法】であり、言い換えれば定めたもの以外の事は不可能です。それに対して【魔術】は自分で行う為、誰かに定められた事ではありません。その為、好きに力を使えます』
「なら【魔法】よりも【魔術】の方が優秀なんじゃない。それはどうやったら使えるのよ?」
『声を抑えて下さい、そして無理です。【魔術】を扱うには<魔術回路>と呼ばれる物が必要なのですよ。それは肉体にある物ですので、無ければ【魔術】は行使できません。もしくは私のように知性体かです』
「じゃあ、私は無理って事? ……そんなぁ」
『これは仕方のない事でしかありません。無いなら使えないので諦めるしかないでしょう。そもそも【魔法】は使えるのですから良いではありませんか』
「それはそうだけど……」
『そもそも願ったところで手に入りませんし、同じ種族でも持っているとは限りません。それぐらい<魔術回路>という物は特殊な物なのです』
「そうなんだ……」
「まあ、素直に諦めるしかないさ。手に入らない物を追い駆けても時間の無駄だし、空しいだけでしかない。代わりに俺は【魔法】が使えないしな」
「【魔法】が使えなくとも、それ以上に便利な物を持ってるじゃないの」
『便利かどうかで言えば【魔法】の方が便利ですけどね? 何故なら【魔術】は決まっていないので、制御を含めて全て自分でする必要があります。つまり扱うのは【魔法】より遥かに難しいのですよ』
「………」
まさか【魔法】より難しい事をしているとは思わなかったわ。
それじゃあ、無理そうね。




