0123・鉱山街に到着
Side:イシス
さて、やっと鉱山街とやらに着いたぞ。
魔車っていうのは、魔物に牽かせる馬車の事らしい。
馬が居ないからそういう名前がついたのか、馬が居ても魔物には勝てないから魔車という名前になったのか。
その辺りは不明だ。
それよりも魔車が宿に入ったので、俺達は魔車を降りる。
どうも宿は魔車を預かるサービスをしている場合が殆どらしい。
ただし田舎は除くらしいが、鉱山街などは商人もよく来るので当然サービスがある。
とはいえ有料のサービスなので料金は必要だが、このサービスを受けないと奪われたり盗まれたりするので仕方ない。
必要経費と言えば終わる話だ。
元の星でも、自動車を見ておくから金を払えっていう商売? がある国は幾つかあるらしいしなぁ。
本当に必要経費なんだろうさ。
それはともかく、宿に魔車を預けた俺達は早速のように酒場に移動する。
既に昼を過ぎているので食事がしたいんだ。バステトもお腹を空かせてるし。
俺はウェロヌに鉱山街の酒場の場所を聞き、四人で移動をするも近くだったのでドアを開けて中へと入った。
ちなみにウェロヌの名前は聞いているし、呼び捨てで構わないそうだ。本人がそう言っていた。
何故かと聞いたら、10位貴族家など木っ端貴族であり、豪商なんかと変わらないと笑っていた。
自虐でもなんでもない感じだったので、本当にそうなのだろう。
男爵や準男爵だと考えれば、そんなものなのかもしれない。
酒場に入った俺はいつものメニューを注文すると、ここではネズミ肉しかないと言われた。
近くの山ではネズミの魔物が非常に多いらしい。
ちなみに何処の鉱山街も何故かそうらしいので、ここだけの話じゃないそうだ。
むしろネズミの魔物が多い場所は鉱脈が眠っている可能性が高いらしいので、山師が当たりを付ける最初の理由でもあるらしい。
不思議だなと思うも、何かを感じ取っているんだろうか?
17ルルを銅貨2枚で支払い、お釣りの小銅貨3枚を受け取る。
後はゆっくり待つだけだが、そんな程度の量でいいのかと心配された。
どうやら少ないと思われたようだが、俺としては全く問題ない。
理由は<時空の狭間>に帰って食べるからだが、ここでは言えないので適当にはぐらかしておく。
「それより鉱山の中だが、もしかして相当に広いのか? 地図か何かがあるなら、掃討する間だけ貸し出してほしいもんだが……」
「地図はあるし、貸し出しは受けられる筈よ。見られたら困るものだけど、アンデッドを掃討しなきゃどうにもならないからね。それに私が居る以上は貸し出さざるを得ないもの。だから地図は大丈夫よ」
「なら後はどこまでそれが正しいかだな。地図に描いていない部分というのもあるかもしれない。前に入った鉱山も、壁かと思ったらその先が隠されていた事があったからな。完全には信用しない方がいいだろう」
「壁、ねえ……。ワザと隠していたってこと?」
「どうだろうな? 危険だから壁を作って誰も行かないようにしていた可能性も無いわけじゃないが……。隠していたという方がしっくり来るとは思う」
そんな会話をしながらの食事を終え、俺達は酒場の外へと出る。
そして鉱山の近くまで行き、坑道の前にある建物に入ると、ウェロヌが中の者達に話しかけた。
どうやらウィーグン家だと示すメダルか何かがあるらしく、それを見た瞬間に鉱夫の顔色が変わった。
「い、いったい何用でございましょうか?」
「私は鉱山内のアンデッドの掃討をしに来たの。悪いんだけど鉱山内の事が書かれた地図を貸してもらえる? それが無いと全ての坑道を見回る事ができないから。それとランプを貸して頂戴」
「はい。すぐに用意いたします!」
そう言って鉱夫達は慌ただしく動き、本当にすぐに用意してくれた。
俺達はそれを持って外に出ると、坑道に入る前に<時空の狭間>へと戻る。
「さて、とりあえず栄養剤と食事だな。それにしてもネズミ肉ばっかりで嫌になる。何故かグレイどもは気にしてないみたいだけど、俺は勘弁してほしいよ。本当」
『私も勘弁してほしいわよ。なんでネズミ肉ばっかりなのかしらね、まったく。鉱山街は仕方ないんだと思うわよ? 沢山周りに居るらしいし。でも何で町でまでネズミ肉を食べなきゃいけないのよ』
「おそらくですが、田舎の方が魔物の種類が豊富なのが理由でしょう。森などがあって様々な種類の魔物が住んでいればいいですが、住んでいないのであればネズミなどにならざるを得ないのでしょうね」
「つまり開拓地の方が肉の種類は豊富な可能性があるのか。それとダンジョン」
「ダンジョンがどういったものなのかによって変わるでしょうが、可能性としては高いと思います。何と言っても無限に魔物が出てくる以上は、無理にネズミを狩る必要は無いですから」
「まあな。とはいえ浅い階層ではネズミばっかりっていう可能性も否定できないが、それは行ってからじゃないと分からないし、今は言ってもしょうがないな」
<物品作製装置>で栄養剤を作った俺は、バステトと分けて飲み干す。
ここまで不味い物もそうそう無いとは思うが、段々とこの不味さに慣れていく自分も居る。
ある意味で恐ろしい事だ。
栄養剤の後は適当に料理を作り、それを食べて口直しは終了。
俺とバステトは交互に<生物修復装置>に入って最適化し、それが終わったら惑星へと戻る。
最適化はそこまで時間も掛からないので、待ち時間は少ない。
「さて、そろそろ坑道に入るんだけど大丈夫?」
ウェロヌが振り返って俺達を見てくるが、彼女が前を向いている間に俺達は<時空の狭間>に戻っていた。
こちらを向いていると違和感を持たれる可能性があるからだ。
「大丈夫だ。準備はしっかり出来ているし、そもそもアンデッドにどうこうと言う俺達じゃない。ここで出てくるアンデッドがどういう奴等か知らないが、予想通りなら何の問題も無い」
『ですね。さっさと処理してしまいましょう、ハッキリ言えば邪魔なだけです。問題があるとしたら、何のアンデッドかという事ですが……』
「甥が怪我をさせられたのはコウモリのアンデッドだったらしいわ。結構な速さで飛んでくるし、噛みつかれて傷を負ったのよ」
「アンデッドに噛みつかれるのは危険だな。どんな病気になるか分かったもんじゃない。やはり先に敵を見つけて始末していくのが一番いいな」
『魔力か瘴気で敵を判別して、こちらに気付いてない間に先制攻撃ね。そうなると前衛はヌン?』
『そうですね。私は木製の球体関節人形のボディです。アンデッドに噛みつかれようが関係ありません。傷はともかく病気になる事はあり得ませんので』
「便利ねえ、傀儡に宿れるなんて。貴方が何処の誰かは知らないけど、無限に生きられるんじゃないの?」
『そうですと言うよりも、私は元々そういう存在です。だからこそ、私は私を知性体と定義したのですから』
「話はここまでだ。坑道に入った以上は慎重に進むぞ。ヌンは前を頼む」
『ええ、分かっています』
ヌンを先頭にして、その後ろに俺とバステト。そして最後尾にウェロヌを配置した形だ。
本来は殿に強い者を置くべきなのだが、坑道という事でこうなった。
そもそも出てくるアンデッドの殆どは前からなのだから、後ろを気にする理由はあまりない。
むしろ後ろにアンデッドを通す可能性を考えたら、俺達が中衛に居る方がウェロヌは安全だ。
彼女は依頼の完了を宣言できる人物なので、キッチリと守る必要がある。
流石に足手纏いだからといって簡単に切り捨てられるような人物じゃない。
まあ、切り捨てる気も無いんだけどな。
最悪を考えるとその覚悟も必要かとも思うが、それ以前にウェロヌが俺達を置いて逃げるだろうから、その点では安心だろう。
……多分。




