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0122・魔車での移動中




 Side:ウェロヌ



 領地のピンチであり鉱山にアンデッドが出たと聞いた。

 開拓者の力も借りなきゃいけないから出向いたけど、まさか母さんと開拓者が揉めているとは思わなかったわ。

 しかも母さんがウィーグン家の者だと聞いても全く引かないし。


 そのうえ言い分を聞いたら至極真っ当な事しか言ってない。

 あまり開拓者の事に詳しくないみたいだけど、開拓者ギルドのルールとして<著しく不公平な場合、あらゆる依頼を開拓者は拒否出来る>という決まりが存在する。


 そして今回の母さんが言い出した事は、この<著しく不公平>に該当する可能性が高い。

 だからこそ母さんも強引に押し通せないのよ。

 もし開拓者にルールを知らせずにいたら、それさえも突かれる隙になる。


 ただでさえウィーグン家は10位貴族であり、貴族の中では最底辺の地位なのに、またバカにされる結果になるところだったじゃない。

 前も強引に物事をやった結果、王都で失笑と嘲笑をされたっていうのに。


 そんな目に兄さんが遭ってみなさいな、また長く不機嫌な状況が続くわよ。

 仕方がないとはいえ、誰だって嘲笑されたら腹立たしいに決まってるしね。

 それに、それを受けるのは当主の役目だもの。余計に怒りを持つわ。


 それよりも、このおかしな<ソーリャ>達? でいいのか分からないけど、この<ソーリャ>達で本当に大丈夫かしら。

 もし駄目なら即座に逃げるから別に死にはしないけど、アンデッド200を簡単に倒せるようには見えないのよね。


 それに何の用意もしないまま町を出たけど、本当に問題が無いの?

 もちろん鉱山街で用意すれば済むでしょうけど、向こうだって混乱してるでしょうし、本当に食料を含めて大丈夫かは決まってないんだけど。


 それに魔車の御者をしているのは私だし、この<ソーリャ>達は誰も出来ないみたいなのよ。

 それでよく旅とかしてると思うわ。ずっと歩くって正気かしら?



 「それで、貴方達の事は多少聞いたけど、本当にアンデッドを倒せるのよね?」


 「ああ、問題ない。そもそも今までだって何度かアンデッドと戦っている。それ以上に面倒臭いヤツとも戦ってきたから問題ないだろう。そもそも何故アンデッドにビビってるのか理解出来ない」


 「アンデッドは簡単には倒せないのよ。武器で倒すのなら、大きなハンマーなどを振り回して叩き潰す必要があるけど、そんな事をしていたら他のアンデッドに引き摺り倒されるわ」


 『まあ、アンデッドが多く居るなら、確かに一体に掛かっている間にやられるでしょうね。一対一なら問題ないでしょうけど、大部屋に50だっけ? それだけいたら引き摺り倒されて食われるだろうし』


 「そうなのよ。例えば【赤魔法】で燃やそうとしても、簡単には燃えてくれないから時間が掛かるし、【茶魔法】で埋めてしまうのが一番なの。それでも倒せた訳じゃ無いから、重さで完全に動けなくするくらいね。その後に一体ずつ倒していくって感じかしら」


 『重さで動けなくですか……。【白魔法】とかいうのは駄目なので? 色的に何とかなりそうですけど』


 「【白魔法】が使える者なんて滅多に居ないわよ。この世で一番使える者が少ないのが【白魔法】、次点で【黒魔法】ね。黒は闇とかの他に腐敗も使える魔法なんだけど、使われるのは大抵お酒作りなの」


 「酒作りに魔法ってどうなんだ? 仮に作れるとしても美味しくなさそう気がするぞ? やっぱり自然な方が良いと思うんだが……」


 「そういう意見は多いし、実際そうよ。ただ、飲んで酔えれば何でもいいってヤツは多いからねー、酒飲みには」


 「ああ、言いたい事はよく分かる。酔う為に酒を飲むってヤツは多いから、確かにそれなら早く出来るであろう【黒魔法】産の方がいいわけか。質も何もかもを無視するのはどうかと思うが」


 「本当にそうなんだけど<ボーラン>の連中がそんな事を聞く訳がないわ。あの連中は酒さえ飲めれば何でもいい連中だもの。おまけに種族的に酒に強いのが多いのが、余計に問題なんだけどさ」


 『それぞれの種族の数がどうなっているのか知っていますか? 最大なのが<アンズル>なのは知っていますが、それ以外は分かっていないので』


 「多分それぞれの国において誤差はあるでしょうけど、我が国では<アンズル>が6割で<ボーラン>と<リグン>が2割ずつぐらいよ。実際に<ソーリャ>はまず見ないわね、何処の国にも滅多に居ないって言われてる。流石は放浪の種族だと思うけど」


 「放浪の種族?」


 「そう言われるくらい少なくて、かつ点々と存在してるって事。何故か知らないけど<ソーリャ>って集団で生活しないのよね。不思議と少数で色々な所に住んでるし、その数は異様に少ないの」


 「ふーん」


 『それより、この魔車を引っ張ってるコレって何? 何か馬っぽいけど馬じゃないし、六本足の馬モドキなんて見た事が無いんだけど』


 「これは<サルグォ>という魔物よ。温厚なのと体力があるから、魔車を牽くのは大抵において<サルグォ>の仕事ね。それなりの速度も出るから速いし」


 『私は10位貴族というのが聞きたいですね。そもそも10位という事は、上に9家あるという事ですか? それって少なすぎると思うのですがね?』


 「ああ、それは勘違いしてるわ。貴族には寄子の家があるのよ。まあ、大抵の場合は親戚なんだけどね。その家を使っているから、領地の統治は問題ないのよ。我が家は最下位の10位貴族家で、寄子の家は4家あるわ」


 「仮に10位から1位まで4家でも40家か。国土がどれぐらい広いかは知らないが、少ない気もするな。王宮とかにも送ってそうな気はするし、その程度で国が回るのか?」


 「本当によく知ってるわね。ウチは最下位の貴族だから、そこまで寄子を維持できないのよ。1位の家であるシャフニア家なんて、寄子だけで40家ぐらいあるわよ?」


 「違いすぎるだろ、どんだけだよ」


 「まあ、あの家は王家の親戚の家だから、王家の寄子とも言えるのよね。それもあって、国の重要な部分の殆どを牛耳ってるといってもいい家よ。それでも乗っ取りとか成り代わりとかは無いけどね」


 『何故です? そこまで重要な部分を牛耳っているなら、自分が、となるのは自然な事では?』


 「寄子が親をどうにかするなんて、他の家が許さないもの。各家だって独自の戦力を保有してるわ。当然ウチだって持ってる。親は寄子が成り代わりを狙うのを怖れてるもの、たとえ王家の親戚でも徹底的に潰すわ。過去に実際あったし」


 「成る程な。自分達もされたくないから、もしやろうとした家があれば、王家に連なる家でも潰すのか。例外は一切認めないってこったな」


 「そういう事。その御蔭で安定しているとも言えるんだけど、当時は酷かったらしいわよ。その叛旗を翻そうとした家と寄子、実に57家を完全に潰したらしいわ。全ての一族を皆殺しにしたそうだから」


 「そこまでしたのかよ。そりゃ後世のヤツは慎重にもなるだろうさ。もし同じ事があったら寄って集っての蹂躙だろうし、金目の物も含めて全て奪われるぞ。奪っても正当化されるんじゃ、本性を剥き出しにして襲うのは考えなくても分かる」


 「おっと、前方に鉱山街が見えてきたわね。あそこが目的地だけど、本当に食料とか買わなくて良かったの? 鉱山街でもパニックが起きて、誰かが買い占めている可能性はあるわよ?」


 「大丈夫だろう。そこまで時間も掛からないだろうし、保存食なんかは持ってる。アンデッド如きに時間なんて掛けてもいられない。さっさと終わらせる」



 本当に大丈夫かしら? おかしな連中だからこそ、普通の連中よりは期待するけどさ。

 それでもアンデッド相手に余裕があり過ぎなのよ。

 本当に戦った事があるのか、そこが分からない。


 戦った事もない奴が偉そうに言ってるように見えるし、でも知ってるからこその余裕にも見える。

 どちらか分からないけど、一度鉱山に入って戦えば全てが分かるかな?。


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