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0120・ハルマーの町の開拓者ギルドにて




 Side:イシス



 町に入った俺達は、先に依頼を終わらせるべく開拓者ギルドへと行く。

 面倒な事は先に終わらせておかないと、後に回すともっと面倒になる恐れがある。

 残しておいてもメリットが無い以上、最速で終わらせた方がいい。

 だいたいまだ昼だし。


 俺達は少し早く昼食を食べたが、世間はちょうど昼時だ。

 俺達はそんな町中を歩いていき開拓者ギルドへと着いた。

 場所は町に居たグレイに聞いたので迷う事も無かったな。

 っていうか町の中心にあったし。


 入り口のドアを開けて中へと入ると、結構な人数が居て驚く。

 外からは騒がしさが聞こえなかったが、中は結構な人数が居て五月蝿い。

 がやがやと色々なヤツが喋っているので、声が混ざって騒音にしか聞こえないぞ。


 そんな中を受付まで向かい、俺は受付嬢に用件を伝えた。



 「すみません。オオスの村から来たんですけど、オオスの村のギルド長より、ハルマーの町のギルド長宛てに手紙を持ってきました。これが依頼の木札です」


 「確認します。………間違いないようですね」



 ただのメガネだと思うが、違うのか?

 受付嬢がメガネを掛けて札を確認し、それで本物だと認めた。

 という事は、あのメガネを掛けないと見えない塗料でも塗ってあるのかね?



 「では、手紙を預かります」


 「すみません。オオスの村のギルド長からは、こちらのギルド長に直接手渡しせよと言われていまして……。ギルド長以外には渡せません」


 「依頼の木札には、そのような事は書かれていませんが?」


 「それを言われても困ります。ギルド長から直接頼まれましたし、オオスのギルド長からは「ここのギルド長は同期だから自分からの手紙だと言えば直接渡せる」と言われていますので」


 「………分かりました。ギルド長に確認をしてきます」



 面倒臭そうに立ち上がった受付嬢は、一階の端にある二階への階段を上がっていく。

 俺はそれを見届けながら、中の者達の視線がこちらに向いている事を理解する。


 どう見ても好意的な視線ではないが、ここに来たのは初めてなんだから仕方ない。

 そのうえ無理を通したように見えなくもないし、そうなれば敵意でなくとも近い視線は受ける。


 そんな事を考えながら待っていると、受付嬢が二階から下りてきて席まで戻ってきた。



 「ギルド長がお会いになるそうですので、あの階段を上がって左に曲がり、突き当たりの奥の部屋まで行って下さい」


 「分かりました」



 それだけを言って、俺は二階に続く階段を上がる。

 視線が俺達に集中しているのが分かるが、そもそも俺は手紙を届けに来ただけだっての。

 その割には敵対的な視線が多い気がするな。


 それらを含めて面倒だなと思いつつ、左に曲がった突き当たりの部屋をノックする。

 すると、中から「入んな」という声があった。

 どうやらここも婆さんギルド長らしい。


 俺は「失礼します」と言ってドアを開け、部屋の中へと入る。

 執務机の向こうには、相変わらず年齢性別不詳のグレイが居た。

 俺はそのグレイに近付いて、執務机の上に手紙を置く。



 「これが運んできたオオスの村のギルド長からの手紙です。それでは自分はこれで」


 「待ちな。わざわざ彼女が直接手渡ししろって言った手紙だ。持って来た者が普通なわけが無いんだよ。そこに座って待ってな」



 そこと指差されたソファーに座る事を強要されたが、ここで逆らっても得は何も無い。

 仕方なく「分かりました」と言い、俺達はソファーに座る。

 ちなみにヌンは立ったままなので、この婆さんを信用していない。



 「……………ふーん。開拓地出身で、魔法じゃないけど魔法に近いものを使えるとはねえ。ま、それが何かは教える必要が無いけど、怪しい事このうえないのは分かってるかい?」


 「何がでしょうか?」


 「表情を隠すのはいいけど無駄さ。彼女もそうだけど、私もすぐに分かったよ。お前が開拓地の出身ではない事がね。もし本当に開拓地の者だというのなら、お前はもっと荒れてなきゃいけないし、苦労の跡が無きゃいけない。お前にはそれが無さすぎる」


 「はあ、それがどうかしましたか?」


 「お前は嘘を吐いて登録した事になるんだがね?」



 どうやらこの婆さんは登録剥奪の線で俺を脅そうとしているらしい。

 バカだな。他の所でもう一度登録すれば済むし、駄目なら他の方法で金を稼げばいいんだよ。


 そして、そもそも俺達はこの国に拘りなんて無い。



 「ならばこれはお返ししましょう。俺達にとっては特に問題ないので」


 「…………どうやら本気のようだね。だったらそれは持っておきな、別に要らないもんじゃないんだろ?」


 「余計な紐付きになるなら即座に捨てますけどね。俺達は金が稼げれば何でもいいので、開拓者ギルドの奴隷になる気は無い」


 「そんな事はしないさ。………ま、最初のやり方が悪かったのは謝る。とはいえこっちはお前さんを探る必要があった。何者か分からないんだからね」


 「そんな者は俺達でなくとも同じだ。むしろ怪しさを隠していないなら、それは疑う必要があまりない事を意味している。危険な連中が怪しさを隠そうともせず登録したりなどしない」


 「だからあの程度の問答で済ませたんだよ。それに、本当に怪しいなら直接聞いたりなんてしないさ。もっと入念に調べるに決まってるだろ」


 「ま、色々と言いたい事はありますが、言っても無駄なので言わない事にしておきましょう。じゃ、俺はこれで」


 「それは待ってもらおうかい。あんたの腕を見込んで一つ依頼を請けてもらいたい」


 「さっきのアレが無ければ請けたんですけどね、今は請ける気になれないんですよ。じゃ、これで」


 「待ちな。さっきのは悪かったって言ってるだろ」


 「不思議ですね? それが謝っている者の態度ですか? 子供でも騙されませんよ、バカバカしい」



 そう言って俺は部屋を出た。


 わざわざ請ける理由は無いし、あの婆が俺達を利用する気なのは明らかだ。

 グレイの見た目だからこそ、余計な情報に惑わされずに見極められる。


 一階へと下りた俺達は、受付に行き依頼を済ませたと言うと、受付嬢が依頼の木札を見て報酬を支払ってきた。

 金額は小銀貨1枚だったので大した額ではないが、この町まで来る理由としては十分だろう。


 小銀貨1枚を受け取って帰ろうとすると、上からギルド長の婆が下りてくるところだった。

 俺達はそれをスルーして入り口の扉のノブに手を掛けるも、そのタイミングで止められる。



 「ちょっと待ちな。私が悪かったと言ってるだろう。確かに謝るヤツの態度じゃないが、それと話を聞かないの別だろうに。報酬も聞かずに出るとは何を考えているのか……」


 「俺達は報酬の多寡たかで依頼を決める事は無い。そこまでして俺達に請けさせようとしている時点で、碌でもない依頼だという事は分かる。だから聞こうとしないんだよ。依頼料で命を捨てるヤツにやらせりゃいい」


 「あんたの言っている事は一言一句、全て間違っちゃいない。だからこそ、そういう有能なヤツに任せる必要があるんだよ。それに、お前殺しをしたろ?」


 「だから? 俺達は襲われた、だから反撃をしたまでだ。黙って殺されてろとでも言う気か?」


 「そんな事は言わないさ。だが、そうなる前から、お前は殺そうとしていた。彼女からの手紙にはそう書いてあった」


 「オオスのギルド長にも言った。俺は小心者なんでな、俺の命を狙ってくる者は殺しておきたいんだよ。俺の命を守る為には先に殺しておく事が重要だ。命を狙ってくる者が居なくなれば、それは安全だという事だからな」


 「彼女も言ったらしいが、お前はどんな地獄で生きてきたんだい。まったく」


 「何処でもいいだろう。俺は報酬で命を投げ出す阿呆じゃないんでな、よって仕事は請けない。以上だ」


 「そうはいかないのさ。お前は依頼を強制できないと思っているんだろうが、それは規定を詳しく知らないからだ。今回のは例外規定にあり、強制できるんだよ。お前のようなのを敵に回すのはヤバいが、だからと言って我が家の領地の危機だからね。なりふり構ってはいられない」


 「………成る程、ここのギルド長は貴族家の者か。オオスの村もそうだったが、もしかしてこの領地の伝統か?」


 「いや。ここと彼女の村であるオオスだけだ。他は村長とギルド長は別の血筋だよ。で、強制依頼とさせてもらおうか」


 「二度と使えないがいいな?」


 「さっき言ったろ。なりふり構っちゃいられないんだよ」


 「分かった。強制である以上は請けよう。以降は何があっても協力はしない」


 「分かっているさ」



 ま、この依頼が終わったら、さっさと逃げるがな。

 もし貴族が絡んできたら適当に言って逃げるか。

 そして追っ手を差し向けてきたら殺せばいい。


 グレイだからか大して可哀想とも思わないし、妙に俺は強気だな? 何だか自分じゃないみたいだ。

 人間相手なら絶対にしない態度をしている気がする。


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