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0118・ハルマーの町に到着




 Side:バステト



 私達はハルマーという町があるという西へと歩いて進んでいる。

 その町は最近儲かっていると聞くけど、町へと行く者なんて誰も見ないのよね。

 いったいどういう事かしら?



 『こちらは開拓の最前線であり東の端です。言い換えれば儲かっている町から向かう意味がありません。商人は儲ける為に移動するのであって、儲からない方に行く事などありませんよ』


 『そうだな。仮に商品を満載した馬車があっても、買う者が少ない東に持って行く事は無い。持って行くなら買う者の多い西だ。田舎に多く売れる商品を持って行く商人は居ないさ』


 『成る程。売れる物を持っていても、それが本当に売れなければ意味は無いって事ね。だったら開拓地でも売れる物を持って行けば?』


 『そういう買う物の少ない商品を持って行くのは、大抵が行商人であって、大量に買いつけたりする大店おおだなの商人じゃない筈だ。だから月に一回か二回だけ運んだりするぐらいだろう』


 『そういう行商人だって売れる物を売れる相手に売るわけですから、田舎への行商なんて多くは行いまぜん。そういう意味でも月に一回から二回、田舎の者が必要とする物を売りに行くだけです』


 『それも大店おおだなの者はやらないだろう、何故なら利益が少なくて儲からないからな。だからこそやるのは駆け出しとか、昔からの繋がりとかでやってるのぐらいじゃないか? 割とボランティアに近いと思う』


 『そんな感じですね。私もそういうのは何度も見てきましたよ、他の<時空の旅人>と一緒に』


 『ふーん』



 何だかよく分からないけど、色々とあるみたい。

 私としては暇潰しに聞いているだけなんだけど、そんなに面白い話でもなかったわね。


 通る者が少ないなら魔物が出てくるのかもと思っているけど、そんな気配も無しか。

 これじゃ暇でしょうがないんだけど、でも仕方ないと諦めるしかないみたいね。


 …

 ……

 ………


 昼食を<時空の狭間>でとった後、西に向かって歩いていると、壁のような物が遠くに見えてきた。


 村には木の柵とかしかなかったけど、町には壁がしっかりとあるみたい。

 私達の里よりも貧しい壁に唖然としたけども、流石に町ともなると壁を作ってるみたいね。

 それでも私達の里と変わらないところが何とも言えないけど


 そのまま歩いていると、兵士っぽいのが色々と動いているのが見える。

 ……もしかして私達が近付いたから?



 『私達が近付いたから、兵士が慌てているのかしらね?』


 「流石にそれはあり得ないでしょう。私達が近付いたとしても、あそこまで慌てて動く必要がありませんしね。そもそも旅人にいきなり臨戦態勢をとるっておかしいですし」


 『本当にな。それに慌ただしく動いているだけで、こっちに対して何かをしようって動きには見えないぞ? だから何か慌てる事があったんじゃないか?』


 『慌てる事ねえ……。大きなアブラムシでも出た?』


 『勘弁してくれ。アレはもう思い出したくも無い。未だに生理的嫌悪感が酷いんだぞ?』


 『ごめん、ごめん。じゃあ<ムンガ>……は、もう居ないし、代わりにアンデッドが出たとか?』


 『アンデッドが出たら、ゼンス王国とかいうところの攻撃だな。そこがアンデッドで悪さをしてる国だし。とはいえ、可能性としては無くは無いと思う』


 『他国の攻撃に慌てているという可能性は、十分にあり得ると思いますよ。この国だって西にゼンス王国を抱えているわけですし、攻撃は十分に起こるかもしれません』


 『今儲かってるから、それを削ぐ為に攻撃してきた? 経済面からの攻撃としてはありそうだなぁ……。問題はそこまで考えてるかだが』


 『それ以前に情報収集が先ですけどね。まずは本当に起こっている事を探らないといけません。そろそろ門番なんですから、頑張って下さい』



 確かにそろそろ門番の前だけど、何気にヌンも酷いと思う。

 情報収集のおねだりって感じでサラっと言ったわ。



 「これ登録証です。慌ただしいみたいですけど、何かあったんですか?」


 「おう………通ってよし。あの騒ぎか? ありゃ鉱山で何かあったんだろうさ。新たな鉱脈が見つかって喜んでるヤツが多いが、オレ達からすりゃ荒くれが増えた所為で仕事が増えちまった。お前さんも下らない事すんなよ」


 「しませんよ。そもそもハルマーの町の開拓者ギルドに届け物を頼まれたから来たんですし」


 「ああ、それが理由か。またいつもの、護衛の仕事を求めてやってきたヤツかと思ったぜ。ま、さっさと入んな」


 「はい。入らせてもらいます」



 そう言ってイシスは町の中へ入ったけど、上手く聞き出せたようね。

 御蔭で何で騒いでるのか分かったわ。


 イシスとヌンが農作物とか鉱山とか言ってたけど、どうやら鉱山で大当たりみたいね。

 流石にアブラムシのアンデッドとか………考えるのは止めましょうか。本当に居たら困るし。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:???



 我が領地は田舎でしかない。

 辺境ではあれど隣に他国がある訳ではなく、それ故に辺境伯などにはなれぬ。

 この世の生存圏の端、つまり我らが魔物との最前線だというのに、その事を理解もせず不当な扱い。


 それでも鉱山があるだけマシではあるのだが……。

 去年より新たな鉱脈が見つかり、これで多少は豊かになれるかと思ったらコレだ。

 おそらくは何処かからの攻撃であろう、魔物があれだけ来るなどおかしい。



 「父上。弟が出ましたが、大丈夫でしょうか?」


 「分からぬ。そなたも分かっておろうが、これはおそらく他国からの攻撃だ。自国の他の貴族ではない。ここまで大々的にやれば何処が動いたか中央は把握する」


 「流石に中央に睨まれる事を宮廷雀はじめ、国内の貴族がやりませんか」


 「やる訳が無い。やればそれを元にして攻撃されるだけだ、我が領地の鉱山に手を出しても誰も得をせん。あそこの新たな鉱脈も鉄なのだ。国家にとって鉄がどれほど大事か、奴等が知らぬ筈があるまい」


 「それに陛下も、ですね?」


 「そうだ。我が国は鉱山が多くない、それ故にモルドン王国からの輸入が多い。それを少しでも減らせるなら国内は一息吐ける。我が国は貧しくはないが、モルドンは我が国の鉄不足を笠に着て、今まで高圧的にやってきたからな」


 「それを一番苦々しく思っておられたのが陛下、と」


 「新たに見つかった鉱脈は規模の大きな物だ。その事は既に分かっておる。少々採掘はし辛いが、それよりも有望な鉱脈が見つかった事が大きい。これで外交の仕方も変わるからな」


 「今まで散々に高圧的にやってきた相手に対して、強気に出られるようになるのは大きいですね」


 「そうだ。だからこそ我が領地の鉱山に何かあっては困るのだよ」


 「モルドンめ、ここまで直接的にやってくるとは……」


 「それは分からん。モルドンに頼まれた他国かもしれんのだ、迂闊な事は言えん。魔物をけしかけるのは古くからよくある手。敵国で大きな騒ぎを起こすには使い古されてきた方法だ」


 「モルドンが我が国に簡単にバレるような事はせぬという事ですか?」


 「そうだ。モルドンとしては、これからも我が国に鉄を高値で買わせたい。しかし己の国のやった事だとバレると、相手国の民を怒らせかねん。そうなればし崩しに戦争の可能性すら出てくる。それは出来まい」


 「モルドンが求めているのは、戦争ではなく鉄を高値で売る事。別に戦争がしたいわけではない……」


 「うむ。モルドンは鉱山を複数抱えており鉱物資源が多い。しかし我が国の方が強いところがある」


 「農業……」


 「そうだ。モルドンは我が国から相当量の食料を輸入しておる。それが無くなれば困るのだ、無茶は出来ん」



 なのだが、今回の騒ぎだ。

 ………もしかしてモルドンは関係無いのか?


評価ありがとうございます

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