0110・バカな連中の結末
Side:イシス
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!」
「ぎゃぁ!?!!」
「ガッ!?」
「何を逃げようとしてるんだ、お前等? 逃がす訳がないだろうが。あんまり舐めてると、ここで殺すぞ」
「本当にあんた開拓地の者だねえ、一切の情けも手加減もしやしない。ま、それが開拓地で生きる者の当たり前であり日常だ。こいつらもその事を知らなかったみたいだけど、誰もが自分達のように甘ちゃんだとでも思ってるのかね?」
「な、何が……」
「逃げれば殺すという事だ。それすら理解できないか?」
「は、はぁ!? 私は村長の親戚よ! 村でも上の立場なのよ。お前のような何処の奴かも分からない底辺が、手を出していい相手な訳がないでしょ!!」
「このバカ娘は碌なもんじゃないね。ま、開拓者の金を受付嬢が巻き上げるなんてのは、それだけで重罪だ。その覚悟があってやったんだろうから、その報いをキッチリと受けてもらおうかい」
「何を言ってるのか知らないけど、私は罪なんてぶぇっ!!?!」
ギルド長が受付嬢の顔面を思いっきりビンタし、受付嬢は床に倒れた。
三人組も床に倒れて起き上がれない。
まあ、足に【ヒートバレット】を受けているのだから当たり前だし、歩く事すら儘ならないだろう。
その後、何故か俺達が引っ張っていく事になったが、俺はゴッヅとジャーの男二人の足を引き摺り、ヌンが受付嬢とウィウィの足を引き摺っている。
何とかギルドまで連れて行ったが、途中でギルド長が村長と親戚夫婦を連れてくるように頼んでいたので、すぐに関係者が集まって話し合いが始まるだろう。
…
……
………
多少待つ事になったが、解体所のオッサン達も含めて話し合いの場が整った。
場所はギルド長の執務室で、部屋はそれなりに広い。
「まずは被害を受けたお前さんの話を聞こうか。時系列で話してくれ」
「昨日登録し、その後は北の方に狩りに行った。ウサギやネズミを狩ってたら三人組が話し掛けてきたので適当に会話。その後は解体所に言って獲物を売り、ギルドに戻ってきて金を受け取った」
「それが昨日の事だね? お前達三人はその後に何をしていた? あのバカと一緒に居たって事は、何もしていない訳じゃないだろう」
そう言われたゴッヅは逡巡したものの、少しずつ話し始めた。
ジャーとウィウィは俯いたままだ。
「オレ達は上手く狩りで稼げなくて、その所為で魔法を教えてもらう為の金が貯まらなかった。オレ達だって開拓者だ、お嬢さんが何処かから流れてきた奴等を相手に、誤魔化して売り上げを奪ってたのは知ってる。だから情報を売ったら金になると思って話した」
「お前等……」 「何て事を……」 「腐ってやがる」
「それで?」
「そしたら、お嬢さんは魔物を擦りつけて森で殺しちまえって。死んだら何も言えないんだから、魔物に殺させればいい。オレ達が手を下さなくても、持ち物を奪ってくりゃそれでいいって……。こいつ収納鞄を持ってるし」
「最悪だね。よくもまあ、そこまで悪どい事が考えられるし出来るもんだ。残念だけど、お前達こそ死刑以外にあり得ないよ。魔物の擦りつけは重犯罪だ。死刑以外には殆どならない」
「そ、そんな!?」 「なんで!?」 「死刑なんてイヤよ!!」
「ふざけるんじゃないよ!! 他人を殺そうとしといて自分達は助かろうってか? 甘ったれんじゃない!! ……それがイヤなら手足を一本ずつ切り落として放逐だ。好きな方を選びな」
「そ、そんなの選べるわけないだろ!! 手足が無くなったら死ぬしかねえじゃねえか!?」
「だから言ってるんだよ、好きな方を選べとね。お前ら警備隊の中のゴミも同じだ。死刑になるか手足を一本ずつ無くして村を出るか、好きな方を選びな。……ああ、それとお前は違うよ」
それを聞いて受付嬢が下を向きつつ口角を上げる。
おそらく自分は許されたと思ったんだろう。
しかし先程からの感じで言うと、ギルド長はそんなに甘くはないと思うが……。
「お前は村長の、つまりウチの血筋に引っ掛かる者だ。大々的に布告して、村人の前で処刑する。お前には一片の慈悲も無い。当たり前だけどね」
「な、なんでよ!! こいつらが手足の一本ずつで済むなら、私はお咎め無しじゃないとおかしいでしょう!!!」
「何を勘違いしてるのか知らないが、村長の身内に近い所から犯罪者が出たんだ。村人達よりも罪が重くなるのは当たり前だろうに。……お前はそんな事も教えなかったのかい?」
「申し訳ありません。まさか娘がこんな……」
父親の方はまともなのかとも思うが、おそらく自分の立場や仕事を失いたくないだけだな。
ヌンさんが心を探ったらしく、同じような事を【念話】で伝えてきた。
何の冗談かとも思ったが、どうやらヌンレベルになると、相手に気付かれずに心の声を聞く事が出来るらしい。
【念話】の応用らしいが、この状況でサラッとそんな事をやるとは……。
「何であろうが変わらない、そこのバカは大々的に死刑だ。村長というより、立場がある者はそれだけ罪が重くなる。そんな事は何処でも変わらない。そしてお前は親戚という血の近さだ、容赦なんてある訳が無いだろう」
「だからなんでよ! 世が違えば私は村長の娘でしょう。なら好き勝手して許されるでしょうが!! パパだって自分が村長ならもっと豪勢な暮らしが出来るって言ってたじゃない。いつか奪ってやるって!! 今、奪ってよ!!」
「「「「「「………」」」」」」
やっぱり親子揃ってバカだったんだなぁ。
そんな事を家で口走り続けたから、娘がこういう捻じ曲がったヤツになったんだろう。
それにしても、これって隙あらば乗っ取ろうとしてたって事だよな?
「いや、私は違う。あれは娘が勝手に言ってるだけで、私はそんな……」
「誰にだって不満はあるものだが、お前に任せていた仕事は確認した方がいいな。娘と同じくどんな不正をやっているか分かったもんじゃない。不正が明らかになったら……その時は分かっているな?」
「私は、そんな! 不正などやって……。で、ですが、私の忠誠をお疑いになるなど」
「不正を行っていないならば何の問題も無いだろう? それをもって忠義の証とすればいいだけだ」
「え、そんな、私は、その、不正など、ですが、私は……」
オッサングレイがめっちゃ早口で喋ってるけど、あれ不正やってますって答えてるよな?
周りの全員が冷めた目を向けているが、俺達にはそこは関係無い。
それよりも、そろそろ金を貰って帰りたいもんだ。
「不正の調査なんかはこれからだと思うから横に置いておくとして、そろそろ売り上げというか代金が欲しいんだが? 俺が今日解体所で売った獲物の報酬。全く支払われてないからさ」
「そういえば、そうだったね。お前、こいつが持ってきた解体所の木札を何処にやった?」
「そんなの覚えてないわよ。腹が立って何処かに投げたけど、何処だったかなんて覚えてないわ。どうでもいいし」
「こんなヤツにギルドの受付を任せていたアタシの落ち度だね、開拓者の連中には随分と迷惑をかけちまってたようだ。色々と聞き込まないとマズいけど、バカの所為で無駄に時間が掛かっちまう」
それは仕方ないだろう。
そもそもギルド長として不正を見抜けなかったツケだろうに。
そう思いながら見ていると、ギルド長がこっちを「ジッ」と見てくるので、こちらの考えには気付かれているんだろう。
それでも俺は何でもない風を装って、この下らない状況を見ている。
っていうか、こっちはマジで早く金が欲しいだけなんだよ。
明日にはこの村を出て行くから、揉め事なんてどうでもいいし。
そう思っていたのが悪かったのだろうか? ギルド長から依頼を受ける羽目になったのは。




