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0109・バカな連中とギルド長




 Side:イシス



 「一応聞いておきたいんだが、このギルドは村長と結託して開拓者から金銭を奪うって訳じゃないんだな? もしそうだったら、この村からさっさと出て行かなきゃいけないからさ」


 「そしてこの村の事を噂で流すって訳かい?」


 「当たり前だろ、奪われた分の仕返しはキッチリさせてもらう。泣き寝入りなんぞするかよ。後は適当に色々な事がくっ付いて面白おかしい話になるだろうが、俺の知った事じゃない」


 「………はぁ。あのバカは村の名前を落として領主に余計な介入をさせるつもりかい。ま、とりあえず、ついてきな。どうせあのバカ娘は自分の家に戻ってるんだろうさ。こすっからいヤツだからねえ」


 「こいつらはどうするんだ? もしここに置いていけと言うなら、この五人は俺を殺しに来たんだから、今の内に殺しておいていいよな? このままじゃどんな仕返しをしてくるか分からないんだからさ」


 「言いたい事は分からなくも無いがねえ……」


 「俺は小心者なんでな、安全を確保したいんだよ。牢にブチ込まれて死刑にされたくないんでね」


 「お前ら、そんな事をしようとしたのかい?」


 「「「「「………」」」」」


 「俺が犯罪者だと一方的に決め付け、俺を牢屋にブチ込む予定だったらしいしな。お前が何を言おうと犯罪者で、死刑は〝決まっている〟と言ってたぞ? そのうえ村長の親戚が居るから、どうにでも出来るんだとよ。村では好き勝手できる身分だとも言っていた」


 「お前ら………!」


 「「「「「………」」」」」



 この婆さんもグレイだから表情がよく分からんが、少なくともチンピラ五人に関しては震えてるな。

 つまりその程度の実力というか権威はあるのかね?


 それはともかくとして、ちゃんと聞いておかないといけない。

 ここは「なあなあ」にして良い場面じゃない。



 「もう一度聞くんだが、こいつら殺していいよな? こういう奴等だから何をしてくるか分からない。当然、俺は自分の身を守る為にこいつらを始末する。構わないだろ?」


 「そこまでして殺したいのかい?」


 「何かおかしいか? この世は殺すか殺されるかだ。こいつらは殺そうとしてきた、なら殺される覚悟があると見做す。当たり前の事だろうが」


 「どこの地獄で生きてきたんだ、お前は?」


 「開拓地という場所だが?」


 「「「「「「………」」」」」」



 何か分からんが俺を見る目つきが変わったな?

 開拓地に何かあるのか、それとも開拓地の者じゃないとバレたか?



 「まさか開拓地から出てきた者だったとは、あそこは確かに生きるか死ぬかの戦場だろうさ。村なんかと違って生存圏のギリギリ端っこだ、魔物の出没も毎日だろうし、気が抜けない場所になる。そんな所の者に手を出すなんてねえ……」


 「「「「「………」」」」」



 成る程、確かに開拓地だな。

 つまりこの星にはまだまだ開拓されていない地が多くあり、生存圏を広げようとしている真っ最中な訳だ。

 そしてそこに生きている者なんだから、シビアに決まってるわな。



 「ま、こいつらは置いていきな。もしそれでこいつらが逃げたら、アタシが許可をあげるよ。殺しの許可をね」


 「……分かった。こいつらが逃げたら殺しの許可を貰うし、仮に無くても見つけ次第殺す」


 「好きにしな。行くよ」



 婆さんグレイが開拓者ギルドの入り口を開けて外に出るので、俺達もそれについていく。

 実際に奴等が逃げれば、必ずと言っていい程に報復をしてくるだろう。それは確実だ。


 今は婆さんも居て何も出来ないかもしれないが、後で絶対に気付く。足の怪我が治らない事を。


 アレは【ヒートバレット】で抉っているので、傷を受けると同時に焼いている。

 なので傷の治りとしては極めて悪い。

 あいつらの片足は既に、まともに使えなくなってるんだよ。


 それに気付いたら、絶対に報復してくる。それは間違い無い。

 ああいう奴らは今さら暴力を手放して大人しくしたりなどしないからな。


 俺は婆さんグレイについて行きつつ、少し聞いてみる事にした。



 「それよりも、あんたはギルド長でいいのか? 俺は一度も聞いてないが」


 「ああ。アタシは開拓者ギルドのギルド長であり、前村長の妻でもある。名前はグィルマだ。今の村長の母親だね」


 「なんで前の村長の妻がギルド長なんてやってるんだ? 普通は他の者がやるんじゃないのか?」


 「この村が開拓された頃には村長と開拓者ギルドは夫婦でやってたんだよ。その名残だね。だから今でもアタシがやってるし、次のギルド長は息子の嫁だ」


 「ふーん……。それよりもギルド長、奴等が本当に大人しく黙ってると思うか? ああいう暴力を笠に着て欲を満たしていた奴等は、必ず同じ事をし続けるぞ。絶対に改心などしない」


 「そんな事は分かってるさ。ただ一度は猶予をやらないと駄目なんだよ。もしかしたら改心したかも、なんてバカな事を言わせない為にはね」


 「ギルド長がそれを分かってるならいいさ。村の者だからと庇う可能性もあったんでね、こちらは聞いておく必要がある。それによって行動を変えなきゃいけないからな」


 「本当にバカな奴等だよ、開拓地の連中が甘い筈が無いだろうに。生存圏のギリギリというのがどれ程に過酷な場所か、あの甘ったれどもは理解してないんだよ。面倒な事さ」



 この星の人類の生存圏。

 その端ギリギリって事は、つまりその先は魔物の領域って事だ。


 それはつまり魔物がいつ襲ってくるか分からないって事であり、もしかしたら大量の群れに押し潰されるかもしれない。


 そんな場所で生きてきたと誤解されたかもしれないが、まあここに居る間だけの偽装だ。

 都合が悪くならない間に逃げればいい。


 そんな事を考えていると、二階建ての大きな家の前まで来た。

 どうやらここが受付嬢の家らしい。

 村長の家はこれより立派って事は屋敷か何かなのかね?


 ギルド長はズンズン進むと、勝手に家の扉を開けて中に入る。

 ……いいのか? と思うものの俺も一緒に入ると、二階から大きな声が聞こえてきた。

 あれは受付嬢の声だ。



 「あんた達が上手くやれば良かっただけでしょうが!! その所為で私がいちいち面倒な事をする羽目になったじゃない! どうしてくれるのよ!!」


 「……大きな声で喚いているねえ。つまり誰か居るって事かい」



 ギルド長が頭に浮かばないって事は、簡単に思いつくような人物が居ないって事だよな。

 あの受付嬢が喚いてるって事は、おそらく共犯者か何かだろうが……。


 さっきの言葉使いから察するに、部下か何かの可能性が高そうだな。

 下っ端に対する物言いだったし。



 「こんな状態でお金を払うとでも思ってんの!? あり得ないでしょうが、そんな事は!!」


 「おやおや。語るに落ちるとはこの事だね?」



 堂々と家に入って、堂々と受付嬢の居る部屋に入ったぞ。

 婆さん容赦が無い……って、あの三人組が会話の相手だったのか。

 成る程なあ。



 「よう、三人とも。今日、森で魔物を擦りつけようとされて以来だな。やっぱりお前等が俺を襲おうとしてやがったか」


 「あん? 森で魔物を擦りつけようとしただって!? お前等それは重犯罪だと分かってやったのかい!!」


 「ギ、ギルド長……」


 「なんで勝手に入ってくるのよ! ここは私の家よ!!」


 「お前が開拓者の木札を勝手に奪い、そして無実の罪を着せて殺そうとした事は既に分かってるんだよ。アタシの顔に泥を塗ろうとしてくれたんだ。タダで済むと思ってんのかい?」


 「うっ……」


 「「「………」」」



 三人組が体を動かしかけた瞬間、俺とヌンとバステトは連中の足を撃ち抜いた。


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