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0108・ギルドで難癖をつけられる




 Side:イシス



 真っ直ぐ村へと戻った俺達は、解体所に行って獲物を出す。

 かなりの量に驚かれたが、三人組の事を聞いた解体所の職人は怒ると同時に呆れていた。

 どうやら稀に居るタイプらしい。



 「ああ、そういう、そそっかしいヤツは稀に居るんだよ。本人が悪いヤツじゃない場合が殆どなんで余計に性質たちが悪い。ハッキリ言やぁ、バカなんだよ。だから他のヤツの言う事を聞きゃしねえ」


 「本当にな。ワシらが現役の時にも、そういうヤツは居た。大抵が明るくて真っ直ぐなヤツだから嫌われたりは多くないんだが、かと言ってそいつと組むかと言えば絶対に組まねえ。誰だって死にたかねえからな」


 「それが村の若者っつうんだから、本っ当に困ったもんだ。余計な事をして魔物を村に近付かせないだけの分別はあるみてえだが、だからといってこのままには出来ねえぞ。放っといたら村が巻き添え食う可能性もある」


 「だな。言葉は悪いが若い奴等が死ぬのは自己責任だ、それは古くから開拓者の掟として変わってねえ。だが、無関係のヤツを巻き込むのは駄目だ。それだけは許されてねえ。そいつらがやったのはギリギリってとこだぞ」


 「お前さんらから手を出したんなら良いが、他のヤツに魔物を擦り付ける事は重犯罪だからな。場合によったら首が飛ぶ。そいつらは気付いてねえかもしれねえが、かなりマズい事をやってる自覚がねえんだろう」


 「最近のギルドもおかしいんじゃねえか? なんでそんなヒヨッコを森に行かせるんだ。せめて先輩が連れて行って……って、よく考えたら話を聞かねえ阿呆だった!」


 「やっぱり昔から碌でもないって言われるだけはあるぜ。一応ギルドの方に言っておくぐらいか? ……しっかし、よくぞ今まで無事だったな。何かやらかされてから知ったんじゃ、遅かったぜ」


 「よし、これで終わりだ。グリーンウルフ14頭にグリーンスパイダーが4匹、グリーンボーアが2頭にグリーンスネークが4匹。それとブラウンマンティスが1匹か。よくもまあ、午前だけでこれだけ狩ったもんだ」


 「開拓者は手札を見せねえもんだが、おそらく<魔針盤>を持ってるんじゃないか? それで魔力を調べてるんだろ。あれなら魔物の魔力が分かるからな。古い大きめのヤツでも、収納鞄があれば持ち運べるだろうし」


 「はは、まあ……どうでしょうね」



 適当にお茶を濁しながら木札を受け取り、さっさと解体所を離れた。

 余計な事を口にする訳にもいかないし、突っ込まれても困る。


 まさか魔力を自分で調べているとは言えないし、それを言ったら変な顔で見られるかもしれん。

 魔法が使えるヤツなら出来るのかもしれないが、その辺りは知識が無くて不明なんだよな。


 開拓者ギルドまで逃げて来れたし、さっさと中に入って精算しよう。


 中に入るとまだ昼過ぎだからか、開拓者の姿は全くなかった。

 俺達は受付嬢に木札を提出したのだが、いつまで経っても手続きが始まらない。


 受付嬢はチラリと木札を見た後は、手元で何かを書いているだけで、何故か全く顔を上げようとしないんだ。



 「あのー、手続きを始めてほしいんですが」


 「………はぁ。何処で拾ってきたのか知りませんが、こんな嘘や出鱈目が書いてある木札なんて受け取れる訳がないでしょう。適当に書けばお金が貰えると思いましたか?」


 「いえ、解体所で貰ってきた物ですが? そもそも解体所の焼印だって付いてますよ」


 「そんな物は幾らでも偽造できます。何の証拠にもなりません」


 「それを言うなら、そちらの言い分も同じですよ。何の証拠も無く難癖を付けてるんですが? そちらの言い分に何か証拠でもあるので?」


 「………これは不正の証拠として預かっておきます。これから村の警備隊を呼びますがいいですね?」


 「いいも何も、それは解体所で受け取ってきた物です。何ら不正などしていません。そもそもさっき受け取ってきたところですし、見ていた方も居ますよ」



 俺がそう言ったにも関わらず、先程の受付嬢は何処かへ行った。

 俺が狩った獲物の数が多かったからか?

 それにしても難癖を付けてくるなんて何を考えてるんだ?


 そう思っていたら、表の入り口から誰かが入ってきた。

 見ると革鎧を着たグレイが五人ほどだ。

 相変わらずグレイなので表情はサッパリ分からないが、口元がニヤニヤしているのは分かる。


 裏から何処かへ抜けられるのか、先程の受付嬢は居なくなっていた。

 魔力だけだと識別できないから困るな。



 「誰かは知らないが、ここで詐欺を働こうとしたらしいなぁ。犯罪はいかんぜ、犯罪はよ」


 「そうそう。犯罪をやったら捕まるのは当たり前だぜ? そんな事も知らなかったのか?」


 「何か勘違いしているようだが、俺は犯罪などしていないぞ。それよりさっきの受付嬢はどこへ行ったんだ? 俺は未だに報酬が払われてないんだが?」


 「ハッハッハッハッハッ! こいつまだ言ってやがる。お前が何を言おうが、犯罪者として〝死刑〟なんだよ!」


 「確かこいつ収納鞄も持ってるんだろ。ちょうどいい、オレ達が有効活用してやるぜ!」


 「成る程。お前らは、あの受付嬢と結託している訳か。となるとあの受付嬢、それなりの地位にあるか家の者だな」


 「村長の親戚ってヤツだ。ここじゃあ好き勝手に出来る身分でなぁ、てめぇ如きの命はどうにでも出来るんだよ!! まずは牢屋にブチ込むぞ!」


 「いちいち牢に連れてくのも面倒くせぇ。抵抗されたっつって、ここで始末すりゃいいじゃねえか。その方が楽だろ」


 「そうそう。いちいち面倒臭えし、余計な事を喋られたら鬱陶しいぜ」


 「なあに、そんなもん幾らでも潰せるに決まってるだろ。さっさとやるぞ!」


 「俺達に手を出すって事は、死にたいって事でいいな?」


 「ぎゃはははははは! 何調子に乗ってんだてめえ、恐怖で壊れちまったか? 壊れたならさっさと死ねや!!!」



 そう言って槍を向けて襲おうとしてきたが、それより早く俺達は五人のグレイの足を【ヒートバレット】で撃ち抜く。


 魔物よりも遥かに弱い為、足の中で留まるようにするのは大変だったが上手くいったようだ。

 五人のグレイはあっさり槍を手放し、痛みに絶叫を上げる。



 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!?! クソが! どうなってやがる!!」


 「ぐぁぁぁぁぁ!? いったい何がありやがったんだ!?!?!」


 「あ、足が! 足がいてえよお!!」


 「何で倒れてるんだ!? 足が動かねえ!!!」


 「いてえ! 足が熱くて物凄くいてえ!!!」



 五人は足の痛みに苦しんでいるが、俺達にとってはどうでもいい。

 そう思っていたら、上の階から誰かが下りてきた。


 魔力を放射して調べてなかったが、ギルドのトップか?



 「ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあと騒がしい!! いったい何をやってる!!!」



 声の感じからするとお婆さんって感じか?

 誰かはまだ分かってないが、上から来たって事はおそらくギルドのトップで間違いない筈。


 一応説明はしてみるが、駄目なら殺すか。

 ここで俺が言い張っても潰してくるんだろうからな。

 ならば殺される覚悟があると見做す。


 黙って殺されるほど俺はマヌケじゃないんでな。



 「お前……そこの<ソーリャ>。お前はいったい誰だ? ギルドを潰しに来たのかい?」


 「俺は解体所から貰った木札を提出しただけだ。そしたら難癖をつけられて木札を奪われたんだよ、ここの受付嬢に」


 「何だって? ……ここに居たのは誰だい?」


 「知らないよ。そもそも俺は昨日登録したばっかりだ。そして今日木札を持って来たら難癖をつけられて木札を奪われ、ついでにこいつらをけしかけられたんだよ。確かこいつら、あの受付嬢を村長の親戚とか言ってたか?」


 「あのバカ娘か!! ……お前達、あのバカ娘と共に開拓者の売り上げを奪おうとしたな? アタシに喧嘩を売ったんだ、覚悟は出来てるんだろうねえ?」


 「「「「「………」」」」」



 村長が味方だというなら偉そうに言い返す筈だが、何故かこいつら顔を逸らして何も言わないな?


 ……もしかして、この婆さんの方が村長より上なのか?


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