0107・またもやの三人組
Side:イシス
カマキリの後も幾つかの魔物を倒してゲットし、俺達は帰る事にした。
一応は真っ直ぐに入ってきた筈なので、真っ直ぐに戻れば出られると思う。
というか「思う」と考えてる時点で駄目なのだろうが、それでも確証が無い以上は慎重に来た道を戻りたい。
おかしな方向には行かないように祈りつつ、俺達は真っ直ぐに引き返す。
帰り道でも何度か魔物に襲われたが、倒す事自体は簡単なのでさっさと始末し、血抜きや冷却をしてからアイテムバッグに収納する。
それなりの時間になっているのだろう、お腹が空いてきたので<時空の狭間>に戻り、適当に食べたらトイレなどを済ませて戻った。
安全に用を足せるのも、<時空の狭間>の良い所だよな。
普通なら危険な場所で無防備な姿を晒しながら用を足すしかないんだ。
それを考えれば色々に恵まれているとは思う。
代わりに指令を熟す必要があるんだけど。
そんな事を考えつつ歩くのは、食事をして緊張感が無くなったからだろう。
そして、だからだろうか? そんな俺達にトラブルが突っ込んできたのは。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉっ! 逃げろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「なんで今日に限って、こんなに群れるのよっ!!!」
「そんな事は知らないよ! それより逃げ切らないと死ぬから走って!!」
前方の遠くから声が聞こえてきたが、あの声は三人組じゃないか。
声の内容からすると何かに追われてるんだろうが、こっちは森の奥だぞ?
何でこっちに逃げてきたんだ?
俺達は三人組の進路方向から退避し、正面衝突しないように回避しておく。
いきなりぶつかって魔物と乱戦とかは勘弁してほしいからな。
そして目の前を必死の形相で通過していった三人組。
それを追いかけていく緑の狼が七頭ほど。
俺達はその後ろに出ると、即座に【ヒートバレット】で狼のケツを撃った。
「「「「「「「ギャウン!?!!?!」」」」」」」
正直に言って可哀想という気持ちは無いでもないが、だからと言って容赦する気にはならない。
だからこそ卑怯だろうが何だろうが、ここで倒させてもらう。
ケツを撃たれて倒れこんだ狼のうち、起き上がれたのは三頭。
おそらく俺とバステトが撃ったヤツだ。
ヌンに撃たれた奴等は悶絶しているのか起き上がれない。
まあ、ケツの穴を狙われたからな……。
アレはちょっと起き上がれないだろう。
むしろ弱点に直撃した形だが、よくもまあピンポイントで狙えたもんだ。流石はヌン。
「おおっ!? 追って来てないぞ! 狼どもから逃げ切れた!!」
「大きな声を出さないでよ。他の魔物が寄ってくるでしょうが」
「本当だよ。その所為で追っかけ回されたんだろ。今日は本当に死ぬかと思った」
三人組がこっちに来るが、俺達は狼を黙々と処理する。
正直に言って、三人組に構っている暇が無い。
狼自体は簡単に倒せているんだが、問題は血抜きと冷却だ。
それにどうしても時間が掛かる。
ヌンもバステトも協力してくれているが、そう簡単に七頭は終わらない。
残り二頭になった段階で、三人組が俺達を見つけてしまった。
……出来れば会って会話とかはしたくなかったんだが。
「おおっ! お前は昨日会ったイシスじゃないか! 狼を処理してるって事は、お前が助けてくれたのか!! いやー助かっグボッ!」
「いい加減にしなよ。あんたの所為で追っかけられたって言ってるでしょうが」
「そうだよ。そのデカい声は今は要らないよ」
「悪い悪い。とにかく助かったぜ、イシス。お前が横から攻撃して倒してくれなきゃ、延々と追っかけ回されてた」
「ああ、それは構わない。それよりまずは森から出よう。他の魔物に追いかけられても困るからな」
「そうね。さっさと出ましょう。今日は散々だわ」
愚痴る三人を何故か引き連れる羽目になりつつも、仕方なく三人組を先導しながら戻る俺達。
ゴッヅの事を五月蝿いと言っていた残りの二人も、助かったからか今は饒舌に話している。
こいつら先程まで追いかけられていたっていう自覚があるのか? ペラペラとよく喋るもんだ。
【念話】で話してるが、ヌンもバステトも呆れてるぞ。
だからこそ狼に追いかけられていたんだろうに。
そう思いながらも俺はヌンと【念話】を続けていた。
『ヌン、後ろの三人組は大丈夫か? 後ろに居るから見えないし、襲ってくるようなら牽制を頼む。可能性は高くないと思うが絶対は無いし、更に昨日今日と会い過ぎだ。疑いたくもなる』
『分かります。しかも今日は狼に追いかけられて、ですからね。森の奥に走っていたのは村に近づけない為と言えますが、流石に警戒しておいた方が良いでしょう』
360度、全ての方向が見えているからこそ、ヌンに見張ってもらっている。
ヌンにすれば真後ろだろうが見える範囲でしかなく、何かがあればすぐに対応できるからな。
それで時間が僅かにでも稼げれば、俺は逃げられる筈だ。
今まで一度しか殺されてないが、もう二度と殺されるのは御免なので、出来得る限りの警戒はさせてもらう。
そんな事を考えていたからか、特に何かに遭う事もなく森の外まで出る事が出来た。
やれやれ……警戒を解く事は無いが、とりあえずは多少の安全を確保できたか。
後ろの三人組も森を出て「ホッ」としているみたいで、安堵の声が聞こえる。
「とりあえず森を脱出できて何よりだ。三人がこれからどうするかは知らないが、俺達はとりあえず村に戻るよ。今日はもう狩りの気分じゃないんでな」
「私達も戻るわよ。今日は森に行ったって碌な事にならないわ。こういう日は休むに限るのよね」
「そうそう。悪い事があった日は無理しないに限る。無理なんてしたところで碌な事は無いし、更に状況が悪くなるだけだからね。今までにも何度かあったし、もう同じ目に遭いたくはない」
「そうだな。嫌な事が沢山あった。アレもコレも大変だったんだ、本当に」
「「全部、ゴッヅの所為!!」」
「そ、そうか。大変だな。とりあえず俺達はこれで失礼させてもらうよ」
そう言って、俺はそそくさとその場を後にする。
ヌンもバステトもついてきているが、三人組はいきなりで「ポカン」としていた。
あれなら厄介な事を起こす人物から逃げるという名目は立つので、俺が三人組から離れても不自然ではない。
正直に言って、ああいうトラブルを招くヤツというのは、良い悪いを別にして居る。
そういうヤツからは物理的に離れるのが一番なんだよな。
本人が悪いヤツじゃない、もしくは悪気が無いのは当然だが、それでもそういうヤツは得てして本人が悪い事を引き寄せている。
さっきのゴッヅなら森で大きな声を出すとかな。
そういうヤツって言っても聞かない場合が殆どなので、結局は物理的に距離を空けるのが一番被害が少ないんだ。
『成る程。確かに離れていれば被害は受けないものね。それにしても森で大きな声を出すって、いったい何を考えているのかしら。イシスでさえ小声で喋ってるのにね』
『俺でさえって何だよ。流石に森の中で大きな声で話すなんていう自殺行為をする訳が無いだろ。流石にそれはアホの子がやる事だぞ。だからこそ疑ってたんだがな』
『ええ。アレは私達に魔物を擦り付ける際の言い訳ではないかと思ってしまいましたからね。それぐらい頭の悪い異常な事をやっていますよ。あれが普通なら、よく生きてこれましたね、あの三人』
『そう思えるくらいに酷いものね、森で大声を出すなんて。魔物に自分の場所を教えるようなものよ?』
本当にな。
普通に考えたらあり得ないんだよ。
大声を出すなんてのはさ。




