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0104・宿での宿泊とネズミ肉




 Side:イシス



 <時空の狭間>から戻ってきた俺達は、それぞれの状況で過ごす。

 ヌンはベッドの足下側に座り、俺はベッドに熊の毛皮を敷いてから寝転がる。

 二枚を重ねたら、ちょっと厚いな。


 改めて一枚に減らすと足りない感じがしたが、二枚は厚過ぎるのでこれでいいかと納得した。

 バステトも熊の毛皮の上に寝転がって丸くなる。



 『俺とバステトは寝るけど、ヌンは寝ないから起きてるんだろ? すまないけど、俺達は眠らせてもらうよ』


 『ええ。イシスやバステトは眠らなければ困るでしょうから、眠っておいて下さい。それに夜に眠らないのは不審な目を向けられるだけですので、あまり良い事ではありません』


 『そうね。イシスがグレイって言っている<アンズル>も夜は眠るみたいだし、外に居るならともかくとして、村や町に居る時は眠るべきでしょ。何かあったらヌンが起こしてくれるでしょうし』


 『逆に言えば、ヌンが居ると言い訳が色々と出来て助かるな。代わりにヌンを寄越せと貴族が言ってきかねない気はしているが……』


 『ですね。その可能性は十分にあり得ます。が、その場合は私も<時空の狭間>に戻れば良いだけです。それをゴーレムの安全装置だと言い張ればいいでしょう』


 『無理に奪おうとすれば何処かへ消えてしまい、マスター登録した者しか呼び戻せない。そうしておけば確かに問題無いな。どのみち誰も<時空の狭間>に行けない以上は分からないだろうし』


 『なので、そこを言い訳にすれば問題ありません。誰も手出しが出来ない場所です』


 「………」


 『バステトは寝ているみたいだから、俺ももう寝る事にするよ。それじゃ、おやすみ』


 『はい。おやすみなさい』


 …

 ……

 ………


 『イシス、起きて下さい。起きて下さい、イシス。もう朝ですよ』


 「ん………朝か。何か寝たような寝ていないような気分だな。やはりベッドが硬いからか? それとも熊の毛皮に慣れてないからかね? なんか微妙な気分だ」


 「……ンン」


 「おっと、バステトも起きたか。おはよう。俺もヌンに起こしてもらったが………本当に朝だな。窓を開けたら朝焼けが見えるぞ。この時間に起きるって……?」



 木の板のような窓を開けて外を見ると、朝日が昇ってきているのが見える。

 しかし、その光景の中で村人は既に起きて外を歩いているのが見えた。

 ………マジかよ。



 「既に村人が起きて外を歩いてるぞ。どんだけ起きるのが早いんだよ、ビックリだわ」


 『ええ。この星の者、というよりは<アンズル>ですか。彼らは常時魔力を発していますので、外に居るのが分かりやすいのですよ。私は夜の間ずっと警戒していましたから、非常に分かりやすくて助かりました』


 『でもそれって、魔力反応ばっかりで逆に分かり難いって思うけど? だって魔力反応だらけって事でしょ?』


 『それはそうですが、どのみち魔力の無い者にも警戒しなければいけないのですから、分かりやすくなっただけです。それに他の種族がどうかは分かりませんしね』


 『<ボーラン>に<リグン>に<ソーニャ>。それぞれの種族があるみたいだけど、他にも居るのかしらね? その辺りがイマイチ分かっていないけど』


 「こんな田舎じゃ手に入る情報も限られてるしな。都会に行かないと分からないだろ。少なくとも、この星の最大人口はグレイこと<アンズル>だ。それは農業神が言ってたんで間違い無い」


 『そうですね。問題はイシスの見た目に近い<ソーニャ>とやらが、この星にどれぐらい居るかです。それによって変わるでしょう。ま、言い訳は色々と考えられるので、そこまで問題にはならないでしょうが』


 「そろそろ部屋を出て食事に行くか。怪しまれるのも何だし」



 俺は立ち上がって熊の毛皮をアイテムバッグに収納し、背負ったら部屋を出る。

 鍵をするべきか悩んだが分からなかったので、鍵はしないままに宿の入り口へ。


 カウンターには誰もらず、オッサングレイが入り口を箒で掃いていたので声を掛ける。



 「すみませーん、鍵を返したいんですがー」


 「おー! 早起きだなー。ちょっと待ってくれ、今行く」



 オッサングレイは塵取ちりとりのような物にゴミを乗せると、それを入り口横に置いてカウンターへと来た。



 「部屋に鍵を掛けて返さなきゃいけないのか、鍵をしなくてもいいのか分からなかったので、鍵はしませんでしたが……良かったですか?」


 「鍵なんぞする必要はねえよ。中に入って掃除するし、鍵はあくまでも客が泊まってる部屋に客がする為のもんだ。掃除で出入りするのに、鍵を掛けていても邪魔だろ」


 「まあ、そうでしょうね。ありがとうございました、鍵はお返しします」


 「おう。とはいえ、村に居る間は泊まりに来るんだろうから、今日もだろうけどな」


 「ええ、そうですね。お金が溜まるまでは、この村を離れられませんし」


 「だろうな。ま、頑張ってきな」


 「ええ。行ってきます」



 俺達は宿を出ると酒場に行き、中へと入ると客が何人か床で寝ていた。

 おそらく泥酔したからだろうが、高がエールで泥酔するとは……グレイは酒に弱いのか?

 俺達はスルーして椅子に座ると、スカート姿の店員が来たので昨日と同じように注文する。



 「パンを一つとウサギ肉と野菜を二つずつ」


 「すみませーん。朝はネズミ肉の煮込みしかないんですよー。それでいいですか?」



 声が昨日より若々しいので、おそらくは娘か何かだろう。

 そんな事よりもネズミ肉しかないのかよ……。



 「あ、うん。それしかないなら、それで……」


 「全部で17ルルです」


 「銅貨2枚で」


 「はい、お釣りは3ルル、小銅貨3枚です」



 お金を支払ったものの、俺のテンションは急降下だ。

 まさか朝はネズミ肉しかないなんてな。

 これじゃ食わない方がマシか? バステトも諦めた表情をしている。


 食わないのは怪しまれるから仕方ないとはいえ、それでも好んでネズミ肉なんて食いたくは無い。

 病気の事も大きいし、そもそも美味しそうには思えないんだよなぁ。


 もちろん魔物のネズミであるし、ドブネズミとは違うんだけどさ。

 それでも、どうしたって不衛生とか不潔というイメージしかない。

 逆にそういう環境で生きられる強さを持つって事なんだけど。


 それにしたって……と思っている内に運ばれてきた。

 待っている間に客も続々と来ているので、早めに食べて席を空ける必要がある。

 なので黙々と食べる事にした。


 ………食べた感じ、可も無く不可も無く。

 別に不味い物では無かったが、煮込みで提供されているという部分に恐さを感じる。

 むしろ焼きと煮込みは逆だろうとしか思えない。


 味を誤魔化す為にハーブなんかと煮込んでいるのかもしれないが、ネズミ肉の方が高温で焼いて安全を確保しなきゃ駄目だろう。

 ウサギ肉の方がまだ安全だと思うし。


 そういう安全な食べ方とか調理の仕方という考え方は生まれてないのかね?

 それとも毒消しになるようなハーブと一緒に煮込んでいるんだろうか?

 それなら安全だとは思うけど……。


 村の入り口の門番に登録証を見せてさっさと出ると、俺は昨日言われていた北の森へと向かう。

 門番に北の森の方向を聞いたので間違う事は無い。

 もし間違えていたら、門番が間違えていたという事だ。


 とはいえ昨日行っていた方向と同じなので、昨日も北方向へと進んでいたらしい。

 ……って事は、昨日の三人組は森の中から出てきたって事か。

 その割には薬草を摘んでいただけのような……?


 実力が無くても入れるのか、それともあの三人組は実力者なのか……。

 そんな感じはしなかったけど、俺の目が節穴なだけ?



 『どうかしましたか、イシス?』


 「いや、昨日の三人組は森から出てきただろ? って事は、森に入るだけの実力はあるって事だと思ってさ。その割には薬草採取をしていたみたいだけど」


 『そういえばそうね。でも、逃げる事ぐらいは出来るんじゃない? 実力が無くても』


 『ですが、森の中は危険ですけどね? 不意打ちなども受けやすいですし』


 「まあ、俺達には分からない基準があるのかもな。森に入っていい基準」



 適当に言っているので、あるかどうかは知らないがな。


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