3.小夜子 通過儀礼②
私は物思いにふけながら、30冊のファイルをダンボール箱に全て詰め終え、間髪入れずにガムテープで封をする。ファイルが並べられていた棚は、すっかり空となり、その分だけ自分の心までもが空になったような気持ちになる。雑誌の切り抜きを片付けただけで、すでに涙がこぼれ落ちそうになったが、自身の決めたことを遂行すべく、新たな棚に手を伸ばした。
次に、ダンボール箱におさめるモノとして、CDとDVDを私は選んだ。私が亮平を好きになって以降に発売されたCDやDVDは初回盤・通常盤ともに必ず手に入れた。ジャケット写真や特典が異なるというだけで、中身は同じであるとわかっていても、欲しくてたまらなかった。その結果、同じ作品が複数以上ペアとなって棚に並べられている。私が亮平を好きになる以前に発売されていたCDやDVDは、中古ショップやネットオークションなどで、ふと見つけた時に買うようにしていた。徐々に集めていくのも楽しみの一つだった。なかなか初回盤となると、プレミアム価格がついているものもあったりと、手に入れられないこともあったが、いつかまた手に入れようと目標にするのも楽しさの一つだった。
私は、CDを1枚1枚箱におさめながら、ジャケットの亮平を眺める。「この時の亮平若いなぁ。」「この髪型、今だったら絶対しないだろうなぁ。」「この時、細いなぁ。」「あんまり笑ってないなぁ。」「この衣装かっこいいなぁ。」など、さまざまな感想をボソボソと口にし、時にクスっと笑いながら、箱への収納を進めていく。
DVDにいたっては、中に入っているフォトブックを開く。亮平だけでなく、Earthのメンバー全員がとても楽しそうに笑い、キラキラしていた。いかにもアイドル!と言うべき衣装を身にまとい、たくさんの汗を流していた。彼らの歴史を一気に見たような気がして、ぜいたくな気持ちになる。DVDは初回盤のパッケージの大きさや形が毎度異なっている。棚に並べている時もそうだったが、どうダンボール箱におさめれば、うまくまとまるだろうか、とパズルをするような感覚ではめこんでいく。このパズルのような作業が、私の寂しさを紛らわせてくれ、棚からダンボール箱に移し終えた頃には妙な達成感に包まれた。
ここまでくると、私が集めてきた亮平関連のものの大半が棚から姿を消したが、私の心からも同じだけ亮平は去っていったのだろうか。ふと立ち止まって考えてみる。そもそもここ何年も亮平は私の心に棲みついていた。ある日突然、退去命令を出された亮平からしてみたらどうか。そんなに簡単に去っていくものだろうか。そして、彼を退去させたあとの私の心はどうなるのだろうか。やけに体を不安が襲う。




