Dr.R
「穂露さまぁっ!」
状況を整理しよう。
ゴスロリ金髪少女が、ドアを開けるなり穂露に飛び付いた。
「会いたかったのですわ!ちっとも連絡してくれないんですもの……」
「三咲さん、あの子は?」
私は若干引きながら三咲に訊く。
「闇医者だよー。リリカちゃん」
闇医者という言葉に頬をひきつらせる。
やっぱそういう人、いるんだ。
「うざい。離れろ」
リリカという少女を、穂露は二言で片付けた。だが離れる気は無いらしい。
「相変わらずつれないですわね…ところで其方の雌豚は?」
この子、可愛い顔でさらっと毒を吐いたぞ。
「莉亜瑠ちゃんだよ!」
敵意の眼差しが痛いよ。
「貴女、私の穂露さまの何なの?」
そう言えば。私は穂露の、何なんだろう。
「俺がいつDr.Rの物になった」
どくたーあーる?
「Dr.Rじゃなくてリリカって呼んで下さい♡」
私は紅葉に耳打ちする。
「あの…ど、Dr.Rとは?」
「リリカちゃんの通り名ぁ」
闇医者にも通り名とかあるんだ。
「ああっ、穂露さま、この御身体の傷は誰に?穂露さまを此処まで傷付けられる人なんて、クヨウか…ま、まさか支配人に!?」
また知らない言葉が出た。
「クヨウは今、仕事でオランダに居るそうですし…やはり支配人ですか」
私は三人を見て、ニッコリと笑う。
目は笑ってないけど。
「本当の事…教えてくれますよね?」
悪い、と穂露が謝罪した。
「莉亜瑠には教えられない。危険だから」
「死んでも…ですか?」
私は、ナイフを手に取った。
「な、何この状況?この子何者ですの?」
リリカが慌てふためいている。
邪魔だなぁ。
「リリカちゃん、りあちゃんは…死の天使、なんだ」
緊張が走った。
私は三咲の顔の真横に、ナイフを投げて突き刺した。
だめだ、このままだと、本当に殺す…。
ナイフを持つ腕に、激痛。
リリカが、銃を私に向けていた。
撃たれたことで、私は我に帰る。
「ごめんなさい…」
私は俯いた。
もしリリカが撃たなければ、私はこの場の全員を皆殺しにしていた、かもしれない。
ギラリと光る、このナイフで。
「腕は、大丈夫か?」
穂露は、私にそう問う。
どうやら弾は掠っただけ、らしい。
「はい。本当に…ごめんなさい」
謝って済むことじゃない。
なんてこと、分かってる。
「穂露さまを殺そうとする、なんて…許せませんわ。覚悟ぉ!ですの!」
私は、銃ではなく、何故かナイフを持って飛びかかってきたリリカの鳩尾に、肘を入れる。
「ぐふっ、ですの」
蹲るリリカを一瞥して、穂露たちに誤った。
「本当、に…ごめんなさっ…」
涙。ぽたりと床に落ちる。
「い、いや、莉亜瑠は悪くない…よ。元と言えば隠し事をしてた俺らが悪いんだ」
穂露はそう、私を慰めた。
その優しさが余計罪悪感を増幅させる。
ぽたりぽたりと落ちる涙は、暫く止まりそうに無かった。




