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どんなに頼んでも、支配人のことは教えてくれなかった。
因みにリリカは、穂露と三咲の治療後追い出されていた。
「分かってぇ、りあちゃん。本当に危険なんだ。例え死の天使の力を持ってしても、100%勝つ、なんて言えないくらい」
紅葉は私を説得。
いいもん。自分で調べてやる。
「もう、いいですよ」
貴方達には教えてもらいませんから。
ネットに聞いてやる!
なんて意気込んでみた。心の中で。
パソコンという私の情報網まで頭は回らないらしく、三人は心底ホッとした表情。
ちょっと罪悪感。
「怪我、大丈夫なんですか?」
今はそれが心配。穂露は笑って私の頭を撫でる。
「心配するな」
絶対大丈夫じゃないんだろうな。
でも、笑ってくれた為か、安心感が。
ネットに聞くの止めよっかな…?
いや、駄目だ!何としてでも突き止める!
折れかけた心に負けぬよう、満面の笑みで穂露を見た。
そんな心の葛藤をしらない穂露は赤くなってそっぽを向いた。
あれ、照れた?
「可愛いっ!」
「うあっ!」
三咲が私に飛びつく。
迷惑だっつーの。
「可愛いぃよぉ、りあちゃん」
紅葉は三咲のような迷惑行為はせず、微笑む。
なんか癒されるなぁ。なんて。
うん。私、おかしいな。
でも。
私はそっぽを向いたままの穂露を見る。
私より照れた穂露のほうが可愛いよ。
「こ、こっち見るな…」
じっと見つめよう。
耳まで赤い。女性に免疫がないんだろうな。
こんなにカッコイイのに…
と思っていたら無理やり顔を背けさせられた。
ジリリリリリリリリッ
非常ベルのような音が、私のパソコンから聞こえる。
その音に皆ハッとして、パソコンを見た。
私はパソコンを立ち上げた。
デスクトップに現れたのは、警告文。
『死の天使をこちらに渡せ。素直に従わない場合は、不本意ながら実力行使に及ばせてもらう。もう一度、言う。死の天使をこちらに渡せ。
〜支配人より〜』
穂露が息を飲む音が聞こえた。
「これは…?」
私は口を開いた。
デスクトップを指差す。
全身の血液が引いていく感覚。
「………ちょっと出かけてくる」
穂露は黒いコートを着て、玄関へ。
紅葉もそれについて行った。
彼らの背中。
今、止めなきゃ二度と会えない気がした。
「待ってくださいっ!」
一斉に、私を見た。
心配、なんだ。
「支配人を、止めに行くんですか?」
肯定も否定もしなかった。
図星、なんだろう。
「穂露さんは…怪我人です。行かないで…くだ、さい…」
服をぎゅっ、と握りしめ、俯いた。
「莉亜瑠を支配人に渡す訳には行かない」
意思の強い、ワインレッドの瞳が、私を見据えていた。
「私のせいで皆が危険に合うくらいなら、いっそ。いっそ私は…!」
その先の言葉は。
「莉亜瑠!」
穂露の叫びで掻き消された。
びくり、と身体を震わせる。
「大丈夫だ。絶対戻ってくるから」
さっきとは裏腹に、優しい声。
「絶対ですよ…。約束、です」
私は、右手の小指を差し出した。
我ながら、子供っぽいな。
少し目を丸めたものの、すぐ微笑んで小指を絡めた。
溢れそうになる涙を堪えながら、私も微笑む。
やがて指が離れ、穂露自身も外へ出ていった。
後から、行かせたことを後悔することになるとも知らずに。
部屋には、私と三咲が取り残された。
ああ、この時。私がもっと強ければ。
あんなことにはならなかった、のに。




