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アリバイ工作

今回から解決編です!

 私達四人が『ルピナス』で捜査をした二日後の月曜日。その日の昼、捜査一課の取調室の一つに、三人の人間がいた。私、御厨さん、そしてもう一人は、今回の事件の犯人だ。


 御厨さんが、落ち着いた表情で言う。


「単刀直入に伺います。……あなたが沼畑悟志さんを殺害したんですね?」

「違います! 私は沼畑さんを殺害などしていません!」

「しかし、全ての証拠が、あなたが犯人だと示しているんですよ。深山さん」


 犯人――深山さんは、顔に汗を浮かべながら反論する。


「誤解です! 刑事さんだって知っているでしょう? 私には、沼畑さんが殺害された時刻のアリバイがあるんです!」

「そのアリバイなら、崩れましたよ」


 御厨さんの言葉に、深山さんが目を見開く。

 供述内容をノートパソコンに打ち込みながら、私は一昨日の事を思い出していた。


       ◆ ◆ ◆


「小川君、お手柄だ」


 そう言われた後、私は秀一郎さんに聞いた。


「あの……葛西さんに詳しく事情聴取する事がアリバイを崩すのに必要なのは分かりましたけど……犯人は深山さん……という事で良いんでしょうか?」


 秀一郎さんは、頷いて答えた。


「そうだ。深山さんは、談話室にいた時刻を誤魔化しているんだ」


 深山さんが談話室にいた時間は、十九時四十五分頃から二十時四十分頃と思われていた。でも、秀一郎さんの説明によると、実際にはもっと遅い時間に談話室にいたらしい。


 仮に、約三十分ずれていたとしよう。すると、実際深山さんが談話室にいた時間は二十時十五分から二十一時十分という事になる。


 すると、十九時四十五分から二十時十五分まで、深山さんは一人で行動する事が可能となる。


 深山さんはその時間で、前もって呼び出しておいた沼畑を殺害する事が出来るのだ。事前に使い捨てのレインコートを着て、沼畑が礼拝堂に足を踏み入れた瞬間に沼畑を襲えば、短い時間で殺害出来るだろう。


 瑞穂さんが沼畑の遺体を発見したのが二十時頃だから、実際には十五分未満での殺害だったはずだ。


「確かに、談話室の腕時計は止まっていたし、深山さんの腕時計だけが時間を知る手段でした。深山さんが腕時計を弄れば誤魔化せますね。……でも、どうして秀一郎さん達はそのアリバイ工作に気付いたんですか?」


 私が聞くと、秀一郎さんの代わりに御厨さんが答えた。


「あの血文字の書かれたシーツだよ」

「シーツ?」


 私が首を傾げると、御厨さんは意地悪そうな笑みを浮かべて聞いて来る。


「小川、お前、何故犯人があんなシーツを壁に張ったか分かるか?」

「え、えっと……捜査を攪乱する為……ですかね?」

「違う。あのシーツは、礼拝堂の時計を隠す為に張られたんだ」

「あ……」


 ようやく気付いた。礼拝堂に掛けられていた時計の指す時刻は正しい。葛西さんが礼拝堂の時計を見たら、談話室にいた時間との矛盾を感じるかもしれない。

 それでわざわざ血文字のついたシーツを張ったのか。


 事情聴取やら何やらで混乱していれば、遺体を発見した時刻を誤魔化せると思ったのだろう。


 もしかしたら、深山さんは就職の相談をするよう葛西さんを誘導したのかもしれない。葛西さんが第一発見者となり、間違った時間を証言する事を期待して。


「俺は、昨日四人で現場検証した時に礼拝堂の時計を見て思ったんだ。シーツが張られていたらこの時計は見えないなと。それで、談話室の時計が止まっていた事を思い出した。第一発見者がいた部屋の時計が偶然止まるなんてあるだろうか。わざと談話室の時計の電池が古い物にすり替えられたんじゃないか?」

「はあ……」


 私は感心してしまった。あの現場検証でそこまで考えていたのか。


 そこで、秀一郎さんが口を挟んだ。


「だから御厨君は、犯人が深山さんではないかと思ったんだな。そのアリバイ工作によってアリバイを成立させる事が出来るのは深山さんだけだから」


 御厨さんは、無言で頷いた。

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