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現場検証

現場検証をする花音達。新しい情報を掴めるのでしょうか?

 事情聴取が終わり、私達四人は応接室から礼拝堂へと移動した。現場検証は終わってるけれど、秀一郎さんの目で見ると何か発見があるかもしれないと思ったのだ。


「この辺りにご遺体が寄りかかっていて、ここに凶器が落ちていました」


 御厨さんが、指さしながら秀一郎さんに説明する。秀一郎さんは、鋭い目付きで祭壇の周辺を観察した。

 しばらくすると、秀一郎さんは祭壇の前に出てきて言う。


「確か、ここに白いシーツが掛けられていたんだったな。今は外されているが」


 私は、頷きながら答える。


「はい。『DEVIL』という血文字が残されていました。実際には、血では無くて赤い絵の具だったようですが」


 この施設には更生プログラムの関係で色々な部屋があり、画材が置いてある部屋もある。心理療法的な意味で絵を描くのだろう。犯人は、その部屋から絵の具を調達したと思われる。


 秀一郎さんが、ピョンピョンと跳ねながら言う。


「シーツはこの上の辺りに画鋲で留められていたんだな。私の身長だと完全に届かない」


 すると、御厨さんが近付いて言った。


「身長174cmの俺でも、脚立を使わないと無理ですね。大平さんなら脚立を使わなくてもギリギリ届くか……」


 堀江先生が、向かって右の壁に掛かっている風景画を見て聞いた。


「あの絵はシーツより高い所にあるから、大平さんでも脚立を使わないと掛けられなかったんですね。……犯人は、シーツを掛ける為に脚立を使ったんでしょうか?」


 秀一郎さんは、真っ直ぐと祭壇を見つめながら言った。


「まだ分からないな……。もっと情報が欲しい」


 御厨さんが、祭壇の方を見て呟く。


「この壁、掛け時計があったんだな。現場検証をした時はシーツに隠れて見えなかったけれど」


 私もそちらの方に視線を向けて言う。


「そうですね……現在十一時五十五分。もうすぐ昼食の時間ですね」

「じゃあ、食堂に行ってみよう。泊まり込みの利用者から何か話を聞けるかもしれない」


 そう言って、御厨さんは礼拝堂のドアへと歩いて行く。

 私は御厨さんの後に続き歩き始めたけれど、あるものに躓いて転んでしまった。


「あっ!!」

「おいおい、大丈夫か? お前、一昨日にも転んだよな?」


 御厨さんは、呆れながらも私に手を貸してくれる。私は、御厨さんの手を借りて立ち上がった後床を見る。


 床には四角い蓋のようなものが埋め込まれていて、そこに取っ手が付いている。一昨日聞いた話によると、この蓋を開けると収納スペースが現れ、ちょっとした物を収納できるらしい。


「こんな所に取っ手があるのがいけないんですよ。危ないじゃないですか……」


 私はそう言いながら、パカっと蓋を開けてみる。一辺が30cmくらいの立方体のような空間には、現在何も収納されていない。

 その空間を覗きながら、堀江先生が言う。


「僕、変な事を考えてしまいました。風景画が掛け直される前、既に沼畑は殺害されていて、この中に死体を押し込まれていたという……。なんか、内部が赤黒く汚れているし……」


 検死・司法解剖の結果によると、沼畑の死亡推定時刻は事件当日の十七時以降。その時刻だけ見ればあり得そうにも思えるけれど……。


「それはあり得ませんね」


 御厨さんがきっぱりと言う。


「衣服への血の付き方、ナイフの刺さった跡から考えて、沼畑が殺害された後ここに押し込まれていた可能性はゼロに近いです。そもそも大の男の死体を隠すには狭すぎますしね。この内部が赤黒くなっているのは、犯人が返り血を防ぐ為に着ていた使い捨てのレインコートがこの中に押し込まれていたからです。鑑識が押収しました」

「そうですか……」


 堀江先生が残念そうに呟く。もし沼畑が死亡したのが絵を掛け直した時刻より前だったら、アリバイの無い者が増えて瑞穂さんへの容疑が薄まるのだろうけれど……。


「き、気を取り直して食堂に行きましょう、食堂に!」


 私は、無理矢理笑顔を作ってそう言った。


       ◆ ◆ ◆


 私達が食堂に行くと、そこには五人ほどの利用者がいた。ドアに近い席に男性三人が固まっていて、少し遠くの方に女性が二人固まっている。五人共、年齢は二十代から三十代くらいに見える。


 男性三人組の中に、葛西さんの顔を見つけた。私は、三人の方に近付いて声を掛ける。


「こんにちは、葛西さん」

「あ、け、刑事さん!!」


 葛西さんは、慌てて私達に頭を下げる。他の二人も、困惑しながら挨拶してくれた。


 この二人は、確か葛西さんと一緒に事件当日談話室にいた人達だ。食事中に申し訳ないと思いつつ、私は事件当日の事について改めて三人に質問した。でも、新しい情報は出てこない。


「俺達三人は、十九時半頃から談話室でおしゃべりをしたりトランプをしたりしていました」

「深山さんとは、取り留めも無い話しかしてないな。猫の動画が可愛いとか、今度有名なお菓子屋でシュークリームを買いたいとか、そんな話ばっかり……」

「ああ。でも楽しくて、時間が経つのが早かったよな。去り際に深山さんが腕時計を見て『あら、もう二十時四十分なのね』って言った時はびっくりしたよ」


 こんな話ばかりだ。


「食事中にも関わらずお時間を頂き、ありがとうございました」


 私は、そう言って彼らに頭を下げた。




 食堂を出た所で、私は足を止める。


「どうしたんですか? 小川さん」


 首を傾げる堀江先生に、私は答える。


「……葛西さん、今話を聞いた時に目を泳がせたりして、どことなくおかしいんですよね……。何かを隠しているような……」

「あー、じゃあ、小川。お前、もう一度葛西さんに話を聞けよ。昼食後で良いからさ」


 そう背中を押してくれる御厨さんを見て、私は頷いた。


「はい、そうさせて頂きます」

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