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事情聴取

今回も事情聴取です!

 私達四人の質問に答えた後、深山さんと葛西さんは応接室を出て行った。入れ替わるように入って来たのは、副代表の大平隆一郎おおひらりゅういちろうさん。


 大平さんは、黒いハイネックのセーターにベージュのジャケットという落ち着いた服装をしている。年齢は深山さんと同じくらいだったと記憶している。


 ソファーに腰掛けた大平さんに、私達は改めて自己紹介する。大平さんも瑞穂さんと話す機会があるらしく、「木下花音」の名を聞いた時は目を見開いていた。


 自己紹介が終わると、御厨さんが早速事件のあった夜の事を質問する。大平さんは、宙に視線を彷徨わせながら答えた。




 それによると、深山さんが祈りを捧げて礼拝堂を出た後、スタッフの新木さんもすぐに帰ったらしい。


「私、脚立を倉庫に仕舞ってから帰りますねー」


 そう言う新木さんに、大平さんが言う。


「僕が後で仕舞っておくから置いておいて良いよ」

「いえ、どうせ本館に寄ってから帰るので、持っていきますよ」


 そして、新木さんは脚立を持ち、本館の側にあるという倉庫へと向かって行った。ちなみに、この脚立は落下した風景画を掛け直す為に使ったらしい。




「いやあ、僕は身長が180cmあるんですけどね。さすがに脚立に上らないとあの絵は掛けられませんでしたね」


 大平さんが笑って言う。御厨さんが話の続きを促すと、大平さんは真面目な顔で応えてくれた。




 新木さんが礼拝堂を去った後、大平さんはすぐに事務室へと向かった。事務仕事が残っていたからだ。


 その後ずっと事務室に籠って仕事をしていた為、パトカーのサイレンが聞こえるまで事件が起こった事に気付かなかったらしい。




「成程。ずっと一人で事務室にいたと……。ところで、大平さんは沼畑さんが『ルピナス』の中に入って来る所は見ていらっしゃらないんですか? 事務室の窓からは施設の門が見えていたはずですが」


 御厨さんの質問を聞き、私は一昨日この施設を捜査した時の事を思い出した。事務室には四つの机があり、広い窓からは確かに施設の門が見えていた。


 大平さんは、困ったように眉尻を下げて答える。


「私がいつも使っている机は窓に背を向ける位置ですからね。車の音でもしなければ気付かないですよ。監視カメラも無いですし」


 どうやら、沼畑が『ルピナス』に来た正確な時刻を知るのは難しそうだ。


 その後、私が質問役を変わりいくつか大平さんに質問した。でも、最近瑞穂さんに変わった様子も無いし、不審な物音を聞いたとかも無いとの事だった。


      ◆ ◆ ◆


 大平さんへの事情聴取が終わり、彼が部屋を出ると、今度は一人の女性が応接室に入って来た。


 ライトブラウンの髪をショートカットにした二十代くらいの女性。彼女が先程から話に出ている新木あらきなごみさんだ。


 新木さんは、御厨さんが捜査協力者について説明すると、目を丸くして花音さんの姿を見る。


「へえー。こんな可愛い子が捜査に協力してるんですねー」


 ひとしきり新木さんが感心した後、私は新木さんに質問を始めた。




 事件のあった日、新木さんは十九時半で帰る予定だった。帰る十分ほど前、忘れ物に気付いて礼拝堂へ足を踏み入れた彼女は、壁に掛けられている風景画が床に落ちている事に気付く。


 倉庫から脚立を持って来て一人で掛け直そうとした新木さんだけれど、背の低い新木さんには難しい。困っていた所、礼拝堂に大平さんがやって来た。新木さんが脚立を持って礼拝堂に入って行くのを見たので、何事だろうと思って来たらしい。


 そして、新木さんは大平さんに手伝ってもらって絵を掛け直した。その途中で深山さんも礼拝堂を訪れ、新木さんは帰るよう言われたとの事。


 その後、新木さんは脚立を持って倉庫へと行き、本館の食堂に置いてあるお菓子を食べてから帰ったらしい。

 帰った時刻は丁度二十時頃らしいのだが……。



「本館の玄関を出る時、その……瑞穂さんが礼拝堂に入っていくのを見たんです」


 新木さんは、花音さんの方をチラチラと見ながら言いにくそうにして話す。花音さんが瑞穂さんの娘だと聞いたので気を遣っているのだろう。まあ、実際には、今花音さんは秀一郎さんの人格になっているのだけれど。


 秀一郎さんは、無表情のまま尋ねる。


「外は暗かったと思うのですが、確かに礼拝堂に入って行くのは木下瑞穂でしたか?」


 新木さんは、頷いて答える。


「はい。瑞穂さん、礼拝堂に入る前に一度こちらを振り向いたので、顔はしっかり見ています。本館の灯りが漏れていたので、真っ暗というわけでも無かったですし。……まあ、瑞穂さんは私の存在に気付いてないようでしたけど」


 そうか。新木さんが見たのが瑞穂さんで間違いなければ、瑞穂さんの無実を証明するのは難しいかもしれない。

 私はチラリと秀一郎さんの方を見たけれど、彼は無表情のままだった。


 その後私達はいくつか新木さんに質問したが、特に目新しい情報は得られなかった。事情聴取が終わろうとした時、新木さんが溜息を吐く。


「……それにしても、この施設、これから大丈夫なんでしょうか。心配です……」

「と言うと?」


 私が聞くと、新木さんは眉尻を下げて答えてくれた。それによると、最近『ルピナス』の経営が苦しく、食材を買うのにも神経を使うらしい。経理をしている大平さんがよく愚痴っていたとの事。


「ここはNPO法人なので行政からの助成金もあるんですけどね……。泊まり込みの利用者の食費を『ルピナス』が負担しているので、どうしても支出が多くなります……」


 新木さんが目を伏せて言う。成程。利用者の負担が減るのはいいけれど、こういう弊害があるのか。


「大変なんですね……お時間を頂き、ありがとうございました」


 私がそう言い、事情聴取は終了となった。

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