第7話
あおいはそれからも気がむいたら、私の都合なんてまるで関係なくLINEを送ってくるようになった。お互い実際に会うことも声を聴くこともなく、ただ文字の羅列の上に、コミュニケーションは成立していたが、そこには何の違和感もなかった。
「絹夏さんは、子どもの頃の夢ってなんかあったんすか?」
「夢?」
「将来の夢。なりたかったもんとか、やりたかったこととか」
「まあ、ないことはないけど」
「えええ、なんすか?」
子どもの頃からやりたいことはあった。だけど、それをあまり人に話したことはない。そんなもの、なれるはずないんやからと、バカにされるのが怖かったし、事実、自分でも本当になれるとは思っていなかったのだと思う。
「漫画家」
「へえ、ふーん」
「なによ」
「いや、ええやん」
「なにがええのよ」
「ええやん、漫画家。絶対、むいてると思う」
「知らんくせに」
「知らんけど、わかんねん」
「まあ、ええけど、キミ、いつの間にか、タメ口になってるやん。私、だいぶ先輩やで、忘れてへん?」
「ええねん」
「なにが、ええねん」
くだらない会話は、生活の一部になっていった。あおいは私の日常に当たり前のように滑り込んで、当然のように存在する。
あおいは猫のように気まぐれで、現れたり消えたりした。




