第30話
さすがに、その日の仕事はミスばかりが続いたし、眠くて眠くて、何をしていたかほとんど記憶にない。
体調が悪いと言って、大澤さんとの食事の約束は断った。でも、本当は、あんなに好きだった大澤さんが、少し色褪せてしまっていることに気がついていた。彼を裏切ることはできないけれど、気持ちが揺れる。
私が大澤さんと別れたからといって、あおいとどうこうなるなんて、想像できない。それは年齢のせいでもあるし、あおいが私のことをそんな風に見ていないだろうということもでもある。だけど、それだけじゃなかった。
やっぱり私たちの関係は、言葉で簡単に言い表せられるような、そんなものじゃない。
仕事をなんとかやりきって家に帰って、ベッドに倒れ込んでからずっと眠り続けた。あまりにも身体がだるくて、食欲もないし、熱を測ると三九度を超えていて、体温を見た途端に余計辛くなった。
あおいに、なんか冷たいものを買ってきて、というメッセージを送ってから、また気を失うようにして眠り続けた。次の日、仕事も休んだ。
どれくらい眠ったのか、夜中にふと目が覚めて水を飲んでまた眠ろうとしたとき、そういや、あおいにメッセージを送ったことを思い出した。でも返事がなかったから、あれは夢だったのかと思ったけど、あおいに送ったメッセージはちゃんと残っていた。既読にもなってない。昨日の朝だから、もう二日ほど経っていることになるのに。
「スルーかよ」声に出して言ってみた。私の掠れた声は、部屋の中で奇妙に反響。トイレに入っているとしたら長すぎるよね、と心の中で突っ込んでみた。
いつもの冗談だったけど、なんだか妙に不安が増していく。こんなに長い間、あおいと連絡がつかないことなんてない。きっとあおいも熱が出て、寝込んでいるんだろうと思うことにした。
あるいは、新しい彼女が、私のメッセージを見て、誰なの? とかなんとか言って修羅場になっているのかも知れない。気の毒に、と考えて、まいちゃんの私を睨む目を思い出した。
私はまたそれから眠り続けた。熱が上がったり下がったりしていたみたいで、どのくらい眠っていたのだろう。目が覚めても朦朧として、起きているのか眠っているのかわからなかった。




