第24話
あおいから連絡がきたら、この感動をどう伝えようか考えていた。上手く話せるかどうか自信がない。また呼吸が苦しくなってきたので、ベランダに出てみた。夜の空気は少し澄んで冷たい風を運んでくる。
スマホを見ると、いつのまにかあおいからのメッセージが届いていた。
「ツーリングしよう」
「ツーリング? 今から?」
「うん」
「どこを?」
「海」
少し考えて「いいよ」と返事をした。そのままスマホを握りしめて走り出す。あおいはマンションの前にもう来ていて、ヘルメットを投げた。私は落とさないように必死でつかんで、ヘルメットをかぶる。
重いし私の頭には少し大きいみたいで、ぐらぐらした。なんだか恥ずかしくて、せめてしょうもないギャクとかでも言わなくちゃと思うんだけど、何も思い浮かばないし、あおいも何も言わず、早く乗れよ、みたいにちらりと視線を向けただけで、前を向いたまま私が後ろのシートにまたがるのを待っていた。
灯りの消えた静かな街をいくつも越えて、私たちは海に向かって走った。時々、あおいが何かしゃべりかけてきたが、そのほとんどが何を言っているのかわからなかった。グリップを回すたびに、ぶんぶんとエンジンが大きな音をたてる。
ひとことも逃さずにあおいの声を聴きたかったけど、その代わり、背中から伝わる振動を忘れないようにしようと思った。
そこには、溢れていた。いろんなものが溢れていた。
きれいに舗装された暗い国道で、私たちの息遣いが、たくさんの色を放ち、浮かんでは星と重なって消えていった。
「危ないから、じっとしてて」
煌めく色彩を追って空を見上げていたら、あおいが言った。私は、返事の代わりに腰に回した腕に力を入れた。あおいは大げさにごほごほ、と咳をした。私は、笑った。あおいも笑った。そのうち二人とも大爆笑していた。




