第23話
いつの間にか、大澤さんに依存することで、自ら生きる力をすっかり失ってしまったのかも知れない。
三年前に祖母が亡くなったときはすごく淋しくて、これでついに天涯孤独になってしまったのかと思うとたまらない気持ちになって、半年くらいは何もする気になれなかった。
そのうちなんとか落ち着いてくると、仕事もとりあえずは無事にこなせているし、生活に必要なお金に困ることもない。
結婚する気もまるでないし、もちろん子どもが欲しいと思うこともない。時々、生理が遅れてヒヤリとすることはあるけど、今まで、そういうことも乗りこえてきた。そういう意味では、はじめから大澤さんには何も期待はしていなかった。
考えてみれば、恋愛だって誰としたって構わないわけだし、何をしたって構わない。誰かを守らなくちゃいけないという柵もなにもない。私は自由。なのに、束縛されることを選ぶ。不自由さに甘んじていて、いつの間にか何も望まなくなってしまっていた。
今ではやりたいことすら、すぐに答えられなくなっている。
あおいのおすすめの映画は、古い洋画のリバイバルだった。
天国で出逢った二人の男女が恋に落ち、運命だと確信する。幸せだった二人に、突如別れが訪れる。女性が生まれ変わることに。男性はなんとかしてほしいと天国の管理人に懇願。すると、一度だけチャンスが与えられた。
40歳になるまでにアニーを見つけることができたなら、また共に暮らせるようにしてあげると言われ、マイクもまた生まれ変わるため地上へ。
だけどアニーは大富豪の家に恵まれた美貌と才能を持って生まれ、マイクは貧しいゲットーに生まれた。はじめから環境も能力も格差のある二人。二人が出会うには相当な努力が必要となるうえに、お互い天国での記憶はない。『運命』。それだけが二人を導く鍵となる。
二人が信じるはずの愛とは、かけ離れてしまった人生をそれぞれに歩む。マイクは金もなく夢もなく、何をやっても失敗ばかり。すべてを失い絶望の中、心の奥底にくすぶっている使命感のようなものだけが彼を生かし続けていた。
タイムリミット間近、ついに行き倒れてしまうマイク。道路の真ん中で大の字になって大空を眺めるマイクの前に、不思議な男が現れる。
「お前は、そこで何をしているんだ」
そのシーンがとても印象的だった。いったい私は何をしてるんだろう。そう思ったら、涙が止まらなくなった。




