第17話
「なあにい? かっこいいじゃない、あの子でしょ? あおい君」
「うん、そう、右側のほうの」
「これは、いくべきだよ」
恋愛マスターの里香が急に鼻息を荒くした。
「いや、いや、せやから違うって」
「でもさ、なんでダメなの? 別に二人に障害はないんじゃないの? 絹夏には今、大澤さんがいるけど、この先、どうにかなるわけでもないんだし、あおい君だって、結婚してるわけじゃなくて、こんなに惹かれ合ってるんだったら、二人は絶対結ばれるべきだよ」
「あおいにとって私は、恋愛感情とは無縁の存在やから。歳もひと回りも違うわけやし」
「年齢は関係ないよ。好きな気持ちはそんなものでは抑えられないよ」
「しまった、里香のロマンチックスイッチが入ってしまった」
私は両手を頭にのせて、大げさにリアクションをした。里香はそれを見て声をたてて笑う。
しばらくして、あおいがやってきて、サンドウィッチをのせたお皿を私たちの真ん中にひとつ置いた。
「サービス」
「マジで? ケチなあおい君が、なぜ?」
「絹夏さんに持ってきたんとちゃうで、美人さんに持ってきてん」
あおいは少し緊張したような表情をして「里香さんですよね」と里香のほうを向いた。里香はとびきりの笑顔で「はじめまして、あおい君。絹夏から聞いてるよお」と意味深な感じで言った。あおいも、ボクも聞いてます、と言った。
私はひやひやしながら二人のやりとりを見る。
「気づいてたん? 私がここに来てること」
「うん、店の女の子が、教えてくれた」
なるほど。きっとまいちゃんだな。
「そのサンドウィッチ、オレが作ったから食べてみて」
「ええ~? おいしいん?」
「おいしいと思うで。あおいスペシャル」
あおいは、ほんじゃごゆっくりと言って去っていった。私は、あおいの後ろ姿に向かって「あおい、そのユニフォーム全然似合ってへんな」と声をかけてみた。あおいは振り返って、左目できれいなウィンクをひとつした。
「なんで? 似合ってるじゃん。かっこいいよお」
里香はびっくりした顔をしていた。
「あいつはさ、ほんまはあんな奴と違うねん」
それを聞いた里香は、軽く頷いてからニヤついて「ふうん」とだけ言った。




