第14話
梅田に出てくるのは、そう言えば久しぶりだった。
JRの大阪駅周辺は、ちょっと見ない間に随分と変わっていて、どこがどこかわからないくらいに複雑になっていた。
スマホで位置情報を確認しても、自分が今どこにいるかさえよくわからない。もともとひどい方向音痴なので、地図なんかに頼るより勘で動いた方がスムーズに目的地に到着できたりする。
それは里香も同じで、しかも里香は自分の勘を何よりも信頼しているところがあって、スマホなんて無駄だよ、と言ってはじめて行く目的地に迷うことなく向かって突き進む。もちろん間違えることもあるけど、そんなことはまったく意に介さない。悪びれることもなく、ああ、じゃこっちかな、と言って、やっぱり迷うことなくあっさりと方向を転換する。
そこに根拠はないように見えるが、彼女には彼女なりの法則があるみたいだった。
あおいの勤めるカフェは、そんなわけですぐに見つかった。
ナチュラルとかSDGsとかそういった概念をコンセプトにした、自然食の料理を提供するカフェで、店内も白を基調とした自然素材の内装の、ぼこぼこした土壁風の壁面に天然木を使ったテーブルや椅子、チェストなどの家具一式。
あちこちに観葉植物を中心にしたグリーンが配置され、手作りの雑貨なども販売されている。店の奥の壁に設えてある大きな本棚には、個性的な本がいくつも集められていて、店主はイマドキのセンスのいい人なんだろうと思った。
とくに女子に人気のある店で、ネットでも高評価を受けている。平日のまだお昼前ということもあってか意外に空いていたので、すぐに広めの二人掛けの席に案内してもらうことができた。
あまりきょろきょろもできないし、目だけを素早く動かせながら店の中を確認してみた。だけどあおいらしい人物はいなかった。
「あおい君って、ホールスタッフなの?」
「いや、知らんねん。そういや、そんな話したことないわ。いつが休みとかも訊いたことないから、もしかしたら休みかも」
「なあんだ、そうなんだ」
里香はあからさまにがっかりした。高校時代から、思い立ったら我慢できずにすぐに行動をおこすタイプで、そういう人にありがちな、あとから失敗してしまった、反省、みたいなことは絶対にない。自信家というのとは少し違うんだけど、ある意味自分の行動には責任を持っているようだった。
だからこの時もなにごともなかったかのように、厨房スタッフで中にいるかもしれないね、と、顔をくしゃっとして笑うだけでけろりとしている。




