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カーマインレッドの明けない夜  作者: 宝や。なんしい


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第12話

「五八回」


 スピーカーにしていたスマホから、あおいの声が二重になって聴こえた。


「ねえさん、鳴らしすぎでっせ」

「あおい?」

「そうや、オレちゃうかったら誰にかけてんねん」


 涙が溢れてきた。


「電話鳴らしてること忘れてたわ。出んの、遅すぎやねん」

「忘れんなよ。トイレ行っててんもん、しゃあないやん」


「アイドルはトイレなんか行けへんねんで、行ったらあかんやん」


「オレ、アイドルちゃうもん。なんなん? 絹夏(きいな)さん、泣いてるん?」

 あおいは変なところ鋭くて困る。


「泣いてへんよ」


 そう言いながら涙が止まらなかった。鼻水も止まらなかった。恐らく見た目、ひどい状態になっていたと思う。


「どしたんよ」


 あおいの珍しく優しい声が切なかった。なんもないよ、と私はできる限り、たいしたことなさそうに言った。でもそれはきっと誰が聞いてもたいしたことなさそうには聞こえない。

 私はもうそれから何もしゃべれなくて、ただ延々と嗚咽し続けていたんだけど、あおいは何も言わず、いつまでも黙って聞いてくれていた。


「今日さ、あれから映画観てきたんやけど、すごい良かってん。絹夏さん、絶対に観にいくべきやと思う」

「へえ、そうなん? なんていう映画?」


「『メイド・イン・ヘブン』、天神橋の映画館でやってた」


 やっと泣きやんだら、顔中の皮膚が痺れていた。こんなに泣いたのは久しぶりで、あおいと出会ってから、私の情緒はすこぶる不安定になっている。


「ふうん、じゃ気が向いたら行くわ」

「あほか! 絶対行けって! めちゃええねんって」

「めんどくさいなあ」


 あおいは私の泣いていた理由を訊かなかった。訊かなくても知っていると言われているような気がして、なんだか恥ずかしかった。


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