23話 ドライブ
「明日で帰るんやんな、るる」
暖はハンドルを握り、左に切る。
慣性によって、るるの身体は振られた。
「しゃーないやん。これ以上おったら帰れへんくなるわ」
助手席に座る、るるは、車窓から移り変わる景色を覗いている。よく晴れた日だ。
西暦二千九十年代の現代において、自動運転でない車を使っている暖は、よっぽどの車好きだ。
「でも、やっぱりええな。自動運転なんかより、よっぽど趣があるわ」
「だろ? ホントはミッション車がいいんだけど」
今はほとんど生産されておらず、かなり高価なものになってしまっている。
「まあ、なかなか買えへんもんな」
二人を乗せた黒いコンパクトカーは、静かに進んでいく。
◇◆◆◆◇
二人は小さな道の駅に寄った。
「寒っ」
あれほどよい天気だったのにもかかわらず、今は雲は黒く、冷たい風が吹いている。
半袖にショーパンという格好では、身震いしてしまうのも無理はない。
「ホンマやな。早う中入ろう」
二人は急ぎ足で入っていった。
室内は冷房が効いているからか、外ともあまり大差のない温度だ。
風は吹いていないから少しはマシだろう。
「あんま変わらへんやん」
肌で寒さを感じて、その表情が曇る。
「お茶でも買うたろか?」
気を利かせて問う暖。
「ほな、お言葉に甘えて」
商品棚から好みの暖かいペットボトルのお茶を選ぶ。
「俺はこれかな」
暖も炭酸水を選び出す。よく飲んでいるものだ。
「寒ないん?」
「まさか」
暖はるるからお茶を受け取り、レジに向かう。
すぐにセルフの会計を済ませ、戻ってきた。
「ほな行くか」
「うん」
◇◆◆◆◇
「やっぱこっちのたこ焼きがしっくりくるわ」
熱々のたこ焼きを頬張って、るるは言った。
「? あっちでも食べたのか?」
「うん。結衣って子のお兄さんが作ってくれたんや」
仙台に行ったことを思い出す。
「そうなんや。そいつにも会ってみたいなぁ」
千枚通しを器用に使って、慣れた手つきでたこ焼きをひっくり返す。
「暖さんみたいに優しい人やったわ」
「るるが楽しめているみたいで良かったわ」
たこ焼きを自身の皿によそって、柔らかい笑みを浮かべる。
るるが傘見で安心して暮らせているようで、安心しているのだ。
「いつでも、帰ってきてええで」
「言われやんでも来るわ」
面白おかしく笑っても、濃いソースの味は消えない。
るるの帰省は、ここで幕を下ろした。




