20話 るると暖
「宮城はどうや?」
「めっちゃ楽しいわ」
リビングでラーメンを食べているのは、るるとるるの叔父――赤穂暖だ。テーブルに向かい合わせに座っている。
「すまんなぁ。ラーメンしかなくて」
「ええよ。最近食ってなかったし」
ラーメンをズルズルとすすって食べる。海苔、卵、メンマ、チャーシューの乗った、なんとも普通のラーメンだ。
量は多く無かったので、ふたりともすぐに食べ終えた。
「お土産買うてきてん」
紙袋からずんだ餅を取り出し、暖に渡す。
「冷凍やから、冷やして食べてな」
「へぇ、美味しそうやん。後で食べるわ」
暖は屈指の甘党だ。満足気に冷凍庫にしまいに行った。
「それで、何日くらいここに居るん?」
戻ってくるとるるに問うた。
「せやなぁ。暖さんに迷惑かけられへんし、三日位とちゃう?」
顎に人差し指を当てて考える。暖は仕事もあるので、長期滞在は良くないと考えているのだ。
「そない短くてええん? 俺はかまへんで」
「ホンマ? ほんならお言葉に甘えて、五日にしとくわ」
二人の表情はとてもにこやかだ。お互い、安心している。
「でも、有給取ってもらったんは、悪いなぁ」
「ええよ。るるが元気そうで安心したわ。まぁ、明日からは仕事あるし、ゆっくり過ごしてき」
「そやな。ありがとう」
安堵の表情は、その日ずっと続いていた。
◇◆◆◆◇
「寿司なんて久しぶりやわ」
嬉々とした表情を浮かべる、るる。
テーブル席に二人が腰掛ける。所謂、回らない寿司屋だ。
「意外やな。宮城ではあんま出されへんかったん?」
「刺し身はあったけど、寿司は無かったわ。高級宿の飯めっちゃ美味しいんやで。暖さんにも食べてほしいわ」
メニュー表を見ながら、会話を続ける。
「ほー。機会があったら行きたいなぁ。るるのお友達も会ってみたいし」
暖は注文票に何かを書き始めた。
「なんやえらい早いなぁ。よく来るん?」
「そんなに来るわけやないけど、まあまあ定まってんねん」
書き終えた注文票を板前に渡す。
るるも、ある程度品定めしたのか、お目当てのものがなかったのか、別のメニュー表を手に取り始める。
暖は湯気の立ち込めたお茶をすする。
「熱っっ」
暖は顔をしかめた。
「あはは、もっと冷ましてから飲めばよかったやん」
「はは、そやな。注文は決まったか?」
「高そうやけど、ウチ容赦無いで?」
るるは注文票とボールペンを手にとって笑う。
「ええで。腹いっぱい食えよ」
暖もそれに笑って応じる。
「やった。遠慮なくいくで」
すぐに注文票に書き始めた。
すると、板前が皿を二つ持ってきた。
「はいよ、海老二貫」
板前が持ってきたのは海老だった。
「へぇ、暖さんが海老なんて珍しいやん」
「ちゃうちゃう、これるるのや。腹減ってると思たで、先頼んだねん」
暖は気の利く男である。長い付き合いからか、るるの好物はよく知っている。
「おおきに。先食べるで」
いただきます、と手を合わせ、すぐに海老を食べ始めた。
るるの嬉しそうな表情を、暖はただ穏やかに見ていた。
人物紹介
赤穂暖
るるの叔父。
神戸に住む社会人。
甘党。




