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少女たちの宿暮らし  作者: お餅
閑散期編
21/28

20話 るると暖

「宮城はどうや?」


「めっちゃ楽しいわ」


 リビングでラーメンを食べているのは、るるとるるの叔父――赤穂暖《あこうだん》だ。テーブルに向かい合わせに座っている。


「すまんなぁ。ラーメンしかなくて」


「ええよ。最近食ってなかったし」


 ラーメンをズルズルとすすって食べる。海苔、卵、メンマ、チャーシューの乗った、なんとも普通のラーメンだ。


 量は多く無かったので、ふたりともすぐに食べ終えた。


「お土産買(こ)うてきてん」


 紙袋からずんだ餅を取り出し、暖に渡す。


「冷凍やから、冷やして食べてな」


「へぇ、美味しそうやん。後で食べるわ」


 暖は屈指の甘党だ。満足気に冷凍庫にしまいに行った。


「それで、何日くらいここに居《お》るん?」


 戻ってくるとるるに問うた。


「せやなぁ。暖さんに迷惑かけられへんし、三日位とちゃう?」


 顎に人差し指を当てて考える。暖は仕事もあるので、長期滞在は良くないと考えているのだ。


「そない短くてええん? 俺はかまへんで」


「ホンマ? ほんならお言葉に甘えて、五日にしとくわ」


 二人の表情はとてもにこやかだ。お互い、安心している。


「でも、有給取ってもらったんは、悪いなぁ」


「ええよ。るるが元気そうで安心したわ。まぁ、明日からは仕事あるし、ゆっくり過ごしてき」


「そやな。ありがとう」


 安堵の表情は、その日ずっと続いていた。



 ◇◆◆◆◇



「寿司なんて久しぶりやわ」


 嬉々とした表情を浮かべる、るる。


 テーブル席に二人が腰掛ける。所謂、回らない寿司屋だ。


「意外やな。宮城ではあんま出されへんかったん?」


「刺し身はあったけど、寿司は無かったわ。高級宿の飯めっちゃ美味しいんやで。暖さんにも食べてほしいわ」


 メニュー表を見ながら、会話を続ける。


「ほー。機会があったら行きたいなぁ。るるのお友達も会ってみたいし」


 暖は注文票に何かを書き始めた。


「なんやえらい早いなぁ。よく来るん?」


「そんなに来るわけやないけど、まあまあ定まってんねん」


 書き終えた注文票を板前に渡す。


 るるも、ある程度品定めしたのか、お目当てのものがなかったのか、別のメニュー表を手に取り始める。


 暖は湯気の立ち込めたお茶をすする。


「熱っっ」


 暖は顔をしかめた。


「あはは、もっと冷ましてから飲めばよかったやん」


「はは、そやな。注文は決まったか?」


「高そうやけど、ウチ容赦無いで?」


 るるは注文票とボールペンを手にとって笑う。


「ええで。腹いっぱい食えよ」


 暖もそれに笑って応じる。


「やった。遠慮なくいくで」


 すぐに注文票に書き始めた。


 すると、板前が皿を二つ持ってきた。


「はいよ、海老二貫」


 板前が持ってきたのは海老だった。


「へぇ、暖さんが海老なんて珍しいやん」


「ちゃうちゃう、これるるのや。腹減ってると思たで、先頼んだねん」


 暖は気の利く男である。長い付き合いからか、るるの好物はよく知っている。


「おおきに。先食べるで」


 いただきます、と手を合わせ、すぐに海老を食べ始めた。


 るるの嬉しそうな表情を、暖はただ穏やかに見ていた。

人物紹介

赤穂暖《あこうだん》

るるの叔父。

神戸に住む社会人。

甘党。

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