↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女たちの宿暮らし  作者: お餅
閑散期編
19/27

18話 愛と愛美

「それでは」


「気ぃつけてな」


「るるさんも、お気をつけて」


 愛は名古屋駅で新幹線を降りた。ここからは名鉄線とバスで家の近くまで行く予定だ。


 愛が住んでいるのは岐阜県だ。名古屋は遠くないので、よく遊びに来ていた。


 駅ナカでドーナツを買う。姉のために名古屋に来るたびに買っているのだ。


 迷宮のような名古屋駅構内を迷わず真っすぐ進んでいく。慣れた手つきで帰りの切符を買う。


 不意に思い出す、数時間前のるるの様子。


(少し焦っていたように感じました。何がいけなかったのでしょうか)


 愛はるるを心配している。本当はついていこうかと、考えもした。


(…ダメです。今はるるさんを信じなければ)


 何かあったらすぐに分かるように、通知機能をONにした。


『話したいことがあれば、何でも教えてください』


 繋ぎたてのチャットルームに、小さく呟いた。



 ◇◆◆◆◇



「ただいま」


 大きく重い扉を開けてそう呟く。


 何やら上の方からドタバタとした足音が聞こえる。


「えっ、聞いてなかったんですけど」


「言うわけ無いじゃないですか」


 愛の姉――柏原愛美《かしはらあみ》――は、下着のような薄い格好で、愛の前に現れた。


「お土産は?」


「無いですけど、欲しかったんですか」


 三人といるときは考えられないほど冷酷に告げる。


「だよねぇ」


 落胆。だが、この対応にも慣れているようで。


「次は買ってきてね」


「ええ。覚えていれば」


 お互いに軽薄な態度を身にまといながら対峙する。緊張感は微塵もない。


「てか、なんで帰ってきたの。失恋?」


「違います。衣替えです」


 まるで相手にしないまま、自分の部屋へと向かおうとする。


「言ってくれれば送ったのに」


「送る気が起こるまでに数週間かかるでしょう。それ」


 自身の部屋に入った愛は、タンスを物色し始める。


「かかっても一週間。わあ、愛の部屋、綺麗ね」


 思わず感嘆の声。


「かかるじゃないですか。…使っていないから当然です。紙袋はありますか」


「待ってね。今持ってくる」


 愛美はその場を去っていった。


「はあ、私の姉はどうしてああなのでしょうか」


 自身と打って変わって自由奔放な姉に、思わず愚痴をこぼす。


 ふと、以前使っていた勉強机を覗く。


 以前バイトしていた喫茶店の名札がそこには置いてあった。


(あそこにも、挨拶をしに行かないと)


 すると、愛美が戻ってきた。


「これでも大丈夫?」


 大きく有名キャラクターが描かれた紙袋を持ってきた。もっと無難なものはなかったのか、と愛は思う。


「多少恥ずかしいですが」


「それ、着るの?」


 愛美は畳まれて置かれている黒い服を指さした。


「これですか? 悪くないでしょう」


 その服を眼の前で広げて見せる。まるでゴスロ……、いや、少しく白いフリルの付いたオーバーサイズの可愛らしい服だ。


「やっぱりオシャレだけは、私のほうが優れてる」


 愛美は美容師をやっている。服のセンスも髪型も、一工夫二工夫もあるのだ。……普段は。


「そうですね。そこは敵いません」


「服、買ってあげよっか?」


 気を利かせて提案をする。姉からのささやかな気遣いだ。


「またの機会にお願いします。今からバ先に行くので」


 紙袋に衣類を詰め込みながら応える。


「そう。オーナー、心配してたよ」


「そうですか。あなたは服を着て私の帰りを待っていてください」


「はいはい。今日はどっか食べに行こっか」


「わかりました。行ってきます」


 大きな扉を再び開けて、愛は喫茶店へ向かう。

人物紹介

柏原愛美《かしはらあみ》

3話にちょっとだけ出てきた人

自由奔放だが美容室で働いており、意外としっかり者、かも。

勉強はできる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。