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少女たちの宿暮らし  作者: お餅
閑散期編
18/27

17話 移動中の

「新幹線って、非日常を感じさせますよね」


 その小さな車窓からは、真っ青な海と空が見える。雲一つない快晴だ。


「わかるー」


「ちょっと楽しいなぁ」


 愛、りん、るるの三人は、新幹線でそれぞれの家へ帰っている。


「私は東京で降りるけど、乗り換えて東海道新幹線に乗るんだよね」


「リニアは高いですし、景色も楽しみたいかなって」


「そやな。フードで遮られてまう」


 仙台を出た新幹線は、東京へ向かっている。


「見て、仙台駅で買ったキーホルダー、可愛くない?」


 りんは、袋に入ったずんだ餅のキャラクターの描かれたキーホルダーを二人に見せる。


「可愛らしいです」


 仙台駅構内のショップで買ったものだ。値札のところにテープが張ってある。


「土産はキーホルダーでも良かったかもしれへんな」


「るるちゃんは、何を買ったの?」


「うちは冷凍ずんだ餅。おじさん、甘いの好きやねん」


 足元においた紙袋には、緑色のロゴが入っている。


「愛ちゃんは、何か賈ってないの?」


「私は何も。別の機会でもよいかと思いまして」


「まぁ、急ぎで買わなくてもいいもんね」


 新幹線は、ますます速度を上げていく。



 ◇◆◆◆◇



『まもなく 終点 東京です。中央新幹線、東海道新幹線、山手線、京浜東北線、中央線、東海道線、横須賀線、総武快速線、京葉線、地下鉄丸ノ内線は、お乗りかえです』


「降りよっか」


 東京駅は人が多く、少し蒸し暑くなっている。


「りんさんは京葉線でしたよね」


「うん、またね。気をつけて帰ってね」


「ええ。お気をつけて」


「またなー」


 手を振り合って、また傘見で会おうという。


 りんは京葉線の方に向かっていった。


 二人も別のホームへ移動する。


「東海道新幹線ですから、ここで待っていれば良さそうです」


「せやな。時間もあるし、駅弁買わへん?」


「そうですね。そうしましょう」


 階段を降りて、人混みの中に入っていく。はぐれないように、手まで繋いで。


「ご注文どうぞ」


「えっと、何にしますか?」


「唐揚げ弁当がええな」


 ガラス棚には、食品模型をまじまじと見つめている、るるが映っている。


「唐揚げ弁当を二つお願いします」


 レジカウンターに敷かれているメニューを指さして注文する。


「唐揚げ弁当ですね。3620円になります。お支払いはいかが致しますか?」


「現金って大丈夫ですか?」


「ウチ現金対応していないんです」


 現金払いは断られてしまった。東京では珍しくもない。


「えっと、じゃあ……」


 ショルダーバッグからスマホを取り出そうとする。なかなか見つからない。


「テルペイ使えます?」


「大丈夫ですよ」


 愛がもたもたしていると、るるが横から現れた。腕につけたフローで支払いをする。


「ありがとうございました」


 支払いを終えると、すぐに弁当が渡される。るるはそれを受け取ると、愛の手を引いてそそくさと新幹線乗り場に向かう。


「えっと、るるさん…?」


「やっぱ東京って大変やなぁ、弁当屋でもロクに現金使えへんのや。ま、大阪もおんなじか」


 早口で、独り言のように。愛に言うための言葉ではなく、言い聞かせて事実を理解するための。


 少しづつ、るるの歩みも遅くなっていく。


「あ、さっきはありがとうございました」


 愛が礼を言う。繋いでいた手をほどいて、少し距離を開けて頭を下げた。


 ほどかれたるるの手には汗が滲んていた。


「ええに。スマホ、ちゃんとわかりやすいところにしまっといたほうがええで。いつ使うかわからんのやから」


 ようやく、落ち着いた様子になってくれた、と愛は思った。何が彼女にとって嫌だったのだろうか。


「そうですね。あっ、新幹線もうすぐで来るみたいですし、乗ってから整理します」


 落ち着いたるるを見ても、あの様子を心配せずにはいられないと思う。が、藪蛇を懸念し、素直に聞けない自分を責める。愛はそんなふうに考えてしまう。

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