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少女たちの宿暮らし  作者: お餅
閑散期編
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16話 早めの帰省

 仙台に行ってから数日がたった。


 いつも通りの宿暮らしを続けていた。


 昼休憩中、愛がふと言った。


「唐突なお願いなのですが、一度家に帰ってもよろしいですか?」


「ほんとに唐突だね」


「忙しいようでしたら無理は言いませんので。夏服を取りに帰りたいのです」


「……送ってもらえればいいってわけではないみたいだね」


 つい言ってしまった。正直私は愛には帰ってほしくない。ここでのみんなとの生活はとても楽しいからだ。


「すみません。忙しいようでしたら大丈夫ですので」


「いや六月になるまでは大丈夫だよ。気の向くままに休んできてほしい」


 六月は何かと忙しくなる。それまでにはなんとしても帰ってきてもらわなければいけない。


「二人も、この機会に少し休んできたら?」


 私も、思い出したことがある。


「せやな。お言葉に甘えて」


「ほんとに大丈夫なの?」


「この時期の予約は本当に少ないんだ。その代わり、六月は忙しくなっちゃうんだけど」


「傘見梅雨祭りですよね」


 そう。傘見梅雨祭り。六月の中旬に実施される、傘見の伝統的なお祭り。


「でも、何かあったらすぐ帰ってこなきゃいけないよ?」


「そんな事言うまで私は鬼じゃないよ。何か起こってもこっちでなんとかするし。今は別館の予約は取ってないから三人でもなんとかなると思うよ」


「せやかて、何かあったら心配やろ?」


「あっ、連絡先、繋いでないんだっけ」


 ようやく、二人の言いたいことがわかった。


「そうだよ〜。私とるるはとっくの昔に繋いでるんだから」


「とっくの昔って……なかなか言わないよね」


「嘘!? 死語?」


「ちょっと待って、フロー探してくる」


 部屋を出て二階に向かおうとする。


「え? フローつけてへんのか?」


「うん。つけてないけど」


「はぁ。まあええわ。愛、先に連絡先繋いどこ」


 ため息!? そんな落胆されるようなことだったの!?


「いいですよ~」



 フローは自室の机の引き出しの中にしまってあった。


 電源をつける。充電は殆ど残っていない。


 新着メッセージがたくさん来ていた。


 ――私、この子に卒業以来会えてないし、連絡もしてなかったのか。


 私の、小学生生活で最も仲良くなれた人。


 返信しておこう。


「おまたせ」


 フローの連絡先交換は、バンド同士を触れさせ合うことで完了する。ちょっとやり方が古いが、それが面白い。


「愛はスマホなんだ」


 兄以外でスマホだけ使っている人を始めてみた気がする。


「ええ。フローは高くてですね」


「わかるー。最初値段見たときめちゃくちゃ高かったもん」


「技術に金を払っとる感覚があるわ」


 確かに。フローはその最先端技術をふんだんに利用しているような気がする。


「では、何かあればこれで連絡をください。可能な限り、早く戻ってきますので」


「そんなんじゃなくていいから。休んできてよ」


「今日準備して明日帰るけど、それで良かった?」


「全然全然。返ってくる時期だけ気をつけて」


「ほな、今から準備するか」



 ◇◆◆◆◇



 翌日の朝。


「では、行ってきますね」


「土産│うて来たろ」


「早めに戻ってくるよ」


「まぁ、宿暮らしのことは忘れて、しっかり休息を取って」


「「「いってきます」」」

フローについて。


6話にも、説明有り。

フローティングフォンの略称。

floatingの意味は「浮いていること」

デバイスを空中に浮かせ操作しているようなもの。実態はない。

リストバンドのようなものを腕につけ、そこからホログラム的な技術で空中にスマホの画面を投影する。

使っている本人にしか見えないようになっていて、以外にも機密性は高い。

この話の時代では現代のスマホ並みに所有者が多く、スマホを所有しているのは60代から上が殆ど。

リストバンドの耐久性が高く、ホログラム上のスマホはリストバンドから離れた位置でも操作可能。

めちゃめちゃ便利。

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