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少女たちの宿暮らし  作者: お餅
閑散期編
15/17

14話 タコパはまだ始まらない

 買い物が終わった後、みんなでゲームセンターに行ったり、カフェに行ったりして時間を潰した。


 意外とあっという間だった。


「お兄さんの家は、ここからどのくらいですか?」


「仙台市役所の近く。ちょっと歩くんだけど、大丈夫?」


 10分くらいだろうか。疲れてるだろうに歩かせるのは少し申し訳ない。


 あいつがあんな事言わなければ……。


「たこ焼き食べれるって考えたら行けるわ」


「そうだね。お兄さん、料理上手いの?」


「生憎、私より……」


 宿が忙しいときは、中学生だった兄が料理を手伝っていた。私は、接客ばかりだったので料理は上達しなかったし、大変なときもゆめさんがいてくれた。故に、私は兄ほど料理が得意ではない。


「まぁ、よくも悪くもお母さんの正統息子って感じだよ」


 5時半を過ぎても、あたりはまだ明るく、街路樹は風に吹かれて音を立てている。


「ここだね」


 大きな8階建てのマンションだ。防犯性能もばっちしなので、インターホンを押してオートロックを抜ける。


 8階建てのマンションだが、兄が住んでいるのは2階。エレベーターは待つこともあるし、階段のほうが比較的早くて便利だから、高階層を選ばなかったそうだ。


 部屋のインターホンを鳴らす。


「早かったね。まだ、元を作ってる途中なんだ」


「「「お邪魔します」」」


「くつろいでくれよ」


 兄は、昼間会ったときとは違い、部屋着らしい格好だった。来客を意識している格好ではないよね。


 リビングに入ると、いつもの整った部屋が見える。


 ふと、目に留まったのは、鏡台。以前はなかったものだ。メイクをするような人間だったかな?


「美しいお部屋ですね」


「だろ? 大学で学んでることも活かしてるんだ。まあ、座ってくれ」


 そう言われ、机の周りに座る。テレビでは、明日以降の天気が放送されている。概ね晴れみたいだ。


「学科はどこなん?」


「建築デザイン学科だ。一応、建築学だけじゃなくて、インテリアや家具についても学んでる」


 思い出した。こいつはうちの宿屋をもっと良くするために勉強しているんだ。


「ところで、どうして鏡台を置いてるの?」


「あ、それは……」


 ガチャンと、玄関の方から音がした。


 リビングの戸が開く。


「誰入れてんのよ、解?」



 ◇◆◆◆◇



「誰入れてんのよ、解?」


 入ってきたのは、白のシャツに黒のロングスカートを合わせた、少し幼い顔立ちの女。


 身長は愛や解よりも高くて、持っている鞄はそこまで物が入っているようには見えない。


 問い詰めるような言い方で、解に近づく。


「あ、お邪魔してます」


 私はそれしか言えなかった。この人物が誰かはわからない。


「誤解しているようだから言っておこう」


「言い訳を聞く覚悟はできているわ」


 顔は笑っているけど、目は笑ってないね。案外親しい仲なのかも。


「こいつらは、俺の妹とその友達だ」


「え? ほんと?」


 呆然とした顔になる。表情豊かだなー。


「嘘ついてるように見えるか?」


「……見えない」


「まぁ、連絡しなかった俺が悪いな。君たちにも紹介するよ。俺と同じ学科に通ってる同級生の星紬ほしつむぎだ」


「…こんにちは」


 つむぎさんは、バツが悪そうに小さな声で、挨拶した。

人物紹介

星紬ほしつむぎ

解と同じ学科に通う大学生。

薬局でバイトをしている。

三ヶ月前から解の家に住んでいる。

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