14話 タコパはまだ始まらない
買い物が終わった後、みんなでゲームセンターに行ったり、カフェに行ったりして時間を潰した。
意外とあっという間だった。
「お兄さんの家は、ここからどのくらいですか?」
「仙台市役所の近く。ちょっと歩くんだけど、大丈夫?」
10分くらいだろうか。疲れてるだろうに歩かせるのは少し申し訳ない。
あいつがあんな事言わなければ……。
「たこ焼き食べれるって考えたら行けるわ」
「そうだね。お兄さん、料理上手いの?」
「生憎、私より……」
宿が忙しいときは、中学生だった兄が料理を手伝っていた。私は、接客ばかりだったので料理は上達しなかったし、大変なときもゆめさんがいてくれた。故に、私は兄ほど料理が得意ではない。
「まぁ、よくも悪くもお母さんの正統息子って感じだよ」
5時半を過ぎても、あたりはまだ明るく、街路樹は風に吹かれて音を立てている。
「ここだね」
大きな8階建てのマンションだ。防犯性能もばっちしなので、インターホンを押してオートロックを抜ける。
8階建てのマンションだが、兄が住んでいるのは2階。エレベーターは待つこともあるし、階段のほうが比較的早くて便利だから、高階層を選ばなかったそうだ。
部屋のインターホンを鳴らす。
「早かったね。まだ、元を作ってる途中なんだ」
「「「お邪魔します」」」
「くつろいでくれよ」
兄は、昼間会ったときとは違い、部屋着らしい格好だった。来客を意識している格好ではないよね。
リビングに入ると、いつもの整った部屋が見える。
ふと、目に留まったのは、鏡台。以前はなかったものだ。メイクをするような人間だったかな?
「美しいお部屋ですね」
「だろ? 大学で学んでることも活かしてるんだ。まあ、座ってくれ」
そう言われ、机の周りに座る。テレビでは、明日以降の天気が放送されている。概ね晴れみたいだ。
「学科はどこなん?」
「建築デザイン学科だ。一応、建築学だけじゃなくて、インテリアや家具についても学んでる」
思い出した。こいつはうちの宿屋をもっと良くするために勉強しているんだ。
「ところで、どうして鏡台を置いてるの?」
「あ、それは……」
ガチャンと、玄関の方から音がした。
リビングの戸が開く。
「誰入れてんのよ、解?」
◇◆◆◆◇
「誰入れてんのよ、解?」
入ってきたのは、白のシャツに黒のロングスカートを合わせた、少し幼い顔立ちの女。
身長は愛や解よりも高くて、持っている鞄はそこまで物が入っているようには見えない。
問い詰めるような言い方で、解に近づく。
「あ、お邪魔してます」
私はそれしか言えなかった。この人物が誰かはわからない。
「誤解しているようだから言っておこう」
「言い訳を聞く覚悟はできているわ」
顔は笑っているけど、目は笑ってないね。案外親しい仲なのかも。
「こいつらは、俺の妹とその友達だ」
「え? ほんと?」
呆然とした顔になる。表情豊かだなー。
「嘘ついてるように見えるか?」
「……見えない」
「まぁ、連絡しなかった俺が悪いな。君たちにも紹介するよ。俺と同じ学科に通ってる同級生の星紬だ」
「…こんにちは」
つむぎさんは、バツが悪そうに小さな声で、挨拶した。
人物紹介
星紬
解と同じ学科に通う大学生。
薬局でバイトをしている。
三ヶ月前から解の家に住んでいる。




