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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第5章 北国の眠り姫
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94.崖の上のゴブリン

「まず一つ覚えたのは、奇襲される危険性を考えながら進んで行かなきゃいけないってことだ」


「確かに今までの戦闘は、大型の魔物でも常に正面から戦ってこれたものな。今回のように隠れた場所から襲われると、一対一なら絶対に負けないような弱い魔物でも全滅させられる危険性があるな」


 森に棲む魔物たちの退治に来ているバーンとインフェルノの二人は、ゴブリンたちに襲われた事を教訓に、これからの行動方針を話し合う。そもそも人間同士で剣で戦う修行しかしたことのなかった二人である。冒険者などの職業が当然持っているような知識も、二人にはない。今初めて経験し、学習している真っ最中だ。その点、狩人であるポポロはいろいろと森の事に詳しいため、ポポロからいろいろと教えてもらいながら行動することにする。


「地形も気を付けなければいけないけれど、毒矢を使う弓手だけでなく魔道士までいるんだ。あいつらの知能も舐めちゃいけない。罠にも気を付けて進まなきゃいけないな」


「ナラ俺が先頭を進モう。二人が落トシ穴に落チデモしたら、俺ニは助ケてヤル事はデキない。俺が先頭で罠を確認シナガら進む」


「確かにそうだな。全身鎧フルアーマーの俺が落とし穴に落ちたら、目も当てられないな」


 鬼のように強そうなオルハリコンの全身鎧のインフェルノが、落とし穴に落ちているところを想像して、バーンは含み笑いをする。


「それも見てみたい気もするけど。……とりあえずあのゴブリンたちを全部倒そう。おそらくあの崖の奥に、あいつらの棲み処があるのかな?」


「本来はレンジャーとかが偵察をして向こうの戦力をある程度把握した後、戦闘力に優れた冒険者パーティーに討伐を依頼すべき内容だな。行き当たりばったりで突撃するようなレベルじゃないんだが」


 インフェルノが弱音を吐くと、脳内にニーナの声が届く。


(なんだ、おじけづいたか?もうギブアップか?)


 ニーナは遠視窓リモートヴューイングで二人の様子を覗いているため、ちょっとしたぼやきも筒抜けである。


「いや、そういうわけではない。やらせてくれ」


(実戦ではどんなことがあるか分からないものだ。いくら一騎打ちに強くても、不意打ち、罠、毒、集団戦など、様々なシチュエーションで強くなければ、本当に強いとは言えん。おまえたちの修行にこれは絶好のチャンスだと思え)


「ああ!」


 ニーナの言葉に、単純に強くなりたいという気持ちの強いだけのバーンは深く同意する。

 インフェルノは自分が強くなりたいという気持ちよりも、父の仕事の役に立ちたいという気持ちの方が強い。妹は父の仕事を助けるため、これから治癒魔法を学ぶと決めた。自分が父の力になれるとしたら、やはり一番は剣の力を生かすことだ。だからインフェルノもこの仕事を途中で投げ出すつもりはない。


「それじゃあそこのゴブリンたちは、どうやって攻略する?崖の上にいるため、こちらからは見通しにくいし、攻撃もしにくいが」


 強行突破では相手の的になってしまう。迂回路を探すか、バーンの火球ファイアーボールか、インフェルノの切り裂く風の魔法斬撃球ブラストボールでチビチビ遠距離攻撃を仕掛けていくのが定石だろう。剣技は強力だが、隠れられてしまえば当たらないし、崖を崩してしまうとゴブリンたちも散り散りになり混戦を招いてしまう。


「俺に考えがあるんだ。崖の上は火が燃え広がるほどの木はなかっただろ?だから俺の魔法で範囲攻撃をかける」


 突拍子もないことを言いだすバーンに、インフェルノは驚いて聞き返す。


「範囲攻撃?お前、火球ファイヤーボール以外の魔法が使えるのか?」


「やったことはないけど応用だ。崖の上に火柱をあげて、まとめて攻撃するんだ」


「おまえ、毒矢で頭がイカれたのか?練習もせずにいきなりできるのか?」


「練習なんてしてる余裕はないだろう?こういうのはイメージなんだよ、きっと。フレイムソードを初めて持った時だって、イメージで剣技発動できたし」


 確かにインフェルノも、魔法の刺突剣を装備した時には剣技が頭に浮かんできて、いきなり大技をイメージのまま放つことができた。言われてみればそうなのかもしれない。

 すると会話を聞いていたニーナからも肯定される。


(そうだ。魔法はイメージが大切だ。バーンができそうだと言うなら、やってみればいい)


 他に短時間でゴブリンたちを一掃する戦略もないため、その戦略で再び崖の上のゴブリンに挑むことにした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 一応ゴブリンたちに見つからないように、気配を消しながらゆっくりとゴブリンが出没した崖に向かう。先ほどの戦闘で警戒しているはずだ。

 崖に近づくにつれ歩幅が短くなる。そして崖の上にゴブリンの影が見えた瞬間、バーンは慌てて木陰に隠れようとする。


「気ヲ付ケ……」


「うわっ!」


 ポポロが前を進む道から不用意に外れたバーンは、足元の罠を踏んでしまう。くくり罠が作動し、バーンの足首を締め付けたロープが木の上に上昇する。バーンは片足を取られて宙づりになる。


「何やってんだ!」


 インフェルノの罵声が飛ぶんだ時、崖の下を警戒していたゴブリンたちに見つかる。崖の上に3体のゴブリン弓手アーチャーが現れ、一斉に弓を構える。

 それに気づいたインフェルノは、バーンを助ける事を後回しにし、バーンを庇う位置に立つ。インフェルノが飛んできた三本の矢を刺突剣で撃ち落とした時、バーンは足を縛る縄をフレイムソードで切断し、自力で罠から脱出する。ドサッと背中から地面に落下する。


「けがはないか?」


 インフェルノからの問いかけに、「ああ」と一言だけ返事をすると、罠にかかってしまった恥ずかしさからなのか怒りからなのか、顔を赤くしたバーンは崖の上のゴブリンたちを睨みつけた。そして……


炎の壁ファイヤーウォール!」


 バーンが魔法を放つ。崖の上に高さ1mほどの炎の壁が発生し、すぐに消える。叫び声が聞こえた後、炎に包まれた一体のゴブリン弓手アーチャーが崖から転落する。もう二体のゴブリン弓手アーチャーも崖の上で炎に包まれながらのたうち回っていた。


「やったな。大したもんだ……」


 インフェルノがそう言って振り返ると、めまいを起こしたバーンが崩れるように倒れ込む。


「あれっ?!」


「どうした?!」


 その時、ニーナの声が頭に響く。


(バカ!魔力の使い過ぎだ!実力以上の魔力を使ったから魔力がなくなったんだ!少し休んで魔力が回復しないと動けないぞ)


 バーンが怒りに任せて放った炎が大きすぎたのだろう。もう少し加減をしていれば大丈夫だったのかもしれない。いずれにしても初めて使う魔法は気を付けないといけない。

 バーンが一時的に戦闘不能に陥っているため、これからどうするかインフェルノが判断しなくてはならない。崖の上のゴブリンはまだ全滅したわけではないだろう。撤退か追撃か。大ダメージを与えた事は間違いがない。もたもたしていたら反撃に合う。追撃をするなら今がチャンスだ。


 そうは言っても目の前には険しい崖がそびえたっている。高さは10mくらいあるんじゃないだろうか。遠距離攻撃しかないように思われたが、インフェルノの頭に突然イメージが浮かんだ。


風の精霊シルフよ。力を貸してくれ」


 そう呟くと、全身鎧の姿のまま崖へ向かって駆けだす。そしてインフェルノは、ほぼ垂直にそびえたっている崖を駆け上がった。頂上まで行くと、ふわっと着地をする。まるでその鎧の姿の重さがほとんどないかのように。


「なんだありゃ?」


 崖の下で見ていたバーンは目を疑う。危なくないよう隠れているポポロも開いた口が塞がらないようだ。


(シルフに体を持ち上げてもらったようだな)


 ニーナの説明を聞いてバーンもやっと理解する。

 崖の上では、火だるまになって苦しんでいるゴブリン弓手アーチャーが二体と、火を消すという発想がなくただ動揺している、ゴブリン魔道士メイジと武器を持ったゴブリン戦士ウォーリアーが十体ほどいた。

 ゴブリンたちは目の前にインフェルノが現れると、すぐに襲い掛かろうとするが、正面から向き合ってしまえばインフェルノの敵ではなかった。インフェルノの手に持つ魔法の刺突剣マジックフルーレによって、目の前のゴブリンたちはあっという間に肉塊へと変わった。


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