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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第5章 北国の眠り姫
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92.開拓森林の打ち合わせ

「おお……!こ……、これはすごいことですよ?!」


 驚嘆の声を上げる老紳士の横で、身なりの整った男たちが一斉に頷く。彼らの前には、それぞれ全長3mと4mの2体の巨大なムカデの死体が横たわっていた。どうやったのか知らないが、死体にはところどころ大きな穴が開いていたり、切り裂かれた巨大な傷痕があったりした。


「これはもう危なくないですよね?完全に死んでいるのですよね?」


 老人からそう質問された労働者風の男は、「へえ、その通りでございます」と答えた。


「いったいこの森で何があったのですか?」


「へえ。あっしらはこの森の開発作業をしておりました。数日前に森の中からこの巨大ムカデギガントセンティピードが現れまして、土木工事用のストーンゴーレムが破壊されるなどの被害が出て困っとったんですが、昨日の朝カロネオン伯爵のところのお坊ちゃまとそのご友人の黒髪の剣士のお二人がやってきて、サクッと退治してくれたんでさあ。魔物の死体が腐ると瘴気を発生させて危険だそうで、焼却するために、ゴーレムを使ってこうしてようやく森の外まで引っ張り出してきたところです」


「カロネオン伯爵のご子息ですか。彼は連合王国の剣術大会で優勝したこともありましたね。剣術が上手いのは知っていましたが、まさかこれほどの魔物を退治するほどの腕前とは……。素晴らしい……」


 改めて感嘆するその老人の姿は、派手さはないが着ている衣服はお付きの者たちよりも高価なものであることが見て取れた。体に合った仕立ての良い服の上には、真っ白な厚手のマントを羽織っている。ジャケットの胸の部分には月と三叉鉾が描かれた盾の紋章が大きく刺繍されていた。その紋章こそこのマインステート王国の紋章であり、一見穏やかな老紳士にも見えるその人物こそ、マインステート王国国王ハルバード・マインステートⅣ世その人であった。


「この魔物を放置しておけば、多大な被害が出たに違いないですね。ここまでの魔物を倒したカロネオン伯爵の子息とそのご友人にならもしや……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「それじゃこっちの森は?」


「ソッチの森はエルフタチが住ンデいる。アイツラはシャイなので話シ合イも難しい。集落に入ラナくても、人間が近クに来るダケでも嫌ガるダろう」


「それじゃこっちは?」


「ソッチの森は動物タチがタクサンいる。森が無クなると棲ミ処が無クなる。可哀ソウだ」


「困ったな。どの森を切り開いても、なんだかんだ生き物が住んでいるんだな」


「コッチの奥の方ナラ魔物ばかりダゾ。最近はゴブリンの群レも増エテるし、強い魔物も増エテる。弱イ動物は住メないし、最近コノ森は荒レてて良クない」


「じゃあその森ごと魔物がいなくなっちゃえばいいな?」


「ソレは素晴ラしい。コナイダの巨大ムカデギガントセンティピードも、多分ソノ森カラヤッテ来た。アアイウ規格外の魔物は森の調和を壊すカラ良クない」


 インフェルノの家の中では、テーブルを囲んで座っているニーナ、セドリック、ポポロの三人が、テーブルの上に広げられたこの周辺の地図を見ながら話し合いをしていた。一応インフェルノ、バーンも同席しているのだが、二人は話し合いを聞いているだけだ。


「しかしそこまで行くと私の治めている領土ではないのだ。そこらは統治者のいない、国が管理する土地。国土だな」


 二人の会話に、セドリックがそう答えた。

 巨大ムカデギガントセンティピードによって破壊されたゴーレムの修復をニーナに依頼したところ、それなら森を切り開くのも手伝うとニーナから申し出があった。しかし、ポポロたちコロボックルが森に住んでいるため彼らの居場所を奪わないでほしいとインフェルノより説明があり、ポポロを呼んで相談をしようという話になった。そこで、どこの森がダメでどこの森ならよいかを、地図を見ながら話し合っているのだが、なかなか都合の良い土地は見つからないでいた。


「それにしても、魔物の退治の方は問題がないのですか?」


「余裕だ余裕!私が出ないでも、こいつらの修行に丁度いいんじゃないかな?」


 そう言ってニーナはバーンとインフェルノを差す。


「え?俺らがやるの?」


「こんな修行のチャンスなんて、なかなかないぞ!」


「マジでか?まあいいけど……」


「イインだ……」


 結局やる気満々のバーンに、ポポロが呆れる。

 それにしても魔物退治は問題ないとしても、やはり開発する森の選定に答えがでないでいた。

 その時、部屋のドアをノックし、執事が慌てて入って来た。


「セドリック様!大変です!国王陛下がいらっしゃいました!」


「なんだと?!」


 執事によると、突然訪問して来たマインステート国王は、先日の巨大ムカデギガントセンティピード退治について話を聞きたいということで、セドリックだけでなく、バーンとインフェルノもマインステート国王に会いに行く。「それなら私も行こう」とニーナも言い出し、どうせ見えないからとポポロも付いてきて、結局この部屋にいたメンバー全員が国王に会いに客室へ向かった。


 セドリックは「何の連絡もなく突然やってくるなんて、どういう事だろう?」と、国王の訪問に疑問を感じる独り言をつぶやきながら、インフェルノたちを連れて客室へたどり着く。扉をノックし中に入ると、国王は椅子から立ち上がって迎えてくれた。


「カロネオン卿、突然訪問してしまって申し訳ありません」


「いえいえ、大丈夫です。どうぞお座りください」


 バーンは初めて見るマインステート国王に対し、セントラール国王やバスク帝国皇帝アルベルトなどとは違った雰囲気を感じた。セントラール王国やアルベルトからは、上に立つ人間特有の威圧感というか迫力が感じられるのだが、この老人からはそういったものがない。国王だと紹介されなければ、本当に品の良いおじいさんだとしか思わなかっただろう。


 そんな国王との挨拶を終え、巨大ムカデギガントセンティピードを退治したのがインフェルノとバーンの二人で間違いないかという話になる。


「ええ、間違いなく自分たちがあれを退治しましたが……、それがなにか?」


「素晴らしい。お二人は帝国の白金プラチナ階級クラス冒険者に匹敵する実力をお持ちという事でまちがいないですね」


「いや、それは白金プラチナ階級クラス冒険者とやらに会った事がないので何とも言えませんが……」


 インフェルノは本当に分からないためそう言ったのだが、国王はそれを謙遜ととったのか、そのまま話を続ける。


「ご存知の通り、マインステートは騎士団などの軍隊を保有しておりません。そしてそれは、今現在この国には腕の立つ戦士がいないということです。恐らくインフェルノさんが、わが国で最高の戦力であることは間違いないと思います」


「はあ……」


 それはまず間違いないだろう。だがそれもニーナからもらったオリハルコンの鎧と魔法の刺突剣のためでもあるため、インフェルノはこの国最高の戦力となるような武具を気軽にくれたニーナに対して何と説明したものかと言葉を詰まらせる。

 だがそんなインフェルノに構わず、国王は自分の話を続けた。


「そこでインフェルノさんにお願いがあって、今日は参りました。頼みにくい事ですが、もしよろしければバーンさんにもお力をお貸しいただきたいのですが、実はカロネオン卿の領土から奥に入った山奥の森周辺で、最近森から出てきた魔物に周辺の村が滅ぼされるという事件が多発しているのです」


「?!今、地図をお持ちしますので、場所を詳しく教えてくださいませんか?」


 執事に頼み、先ほどまで打ち合わせしていた地図を持って来させると、国王より魔物が出てくる森の場所を教わると、ポポロが言っていた最近魔物が増えていた森と一致した。


「この森の中で魔物が増えたか、強力な魔物が発生した可能性があるな……」


 ニーナが呟く。セドリックたちは同意し頷く。


「お願いできるだろうか?申し訳ないのだが、わが国には帝国の白金プラチナ階級クラス冒険者に依頼するほどの財政的余裕もないため、二人に十分なお礼をすることも難しいのだが」


「であれば陛下、お願いがあります。この森周辺の領土を私にいただけないでしょうか?」


 セドリックはそう申し出る。


「そんな辺境地で良いのか?とは言え裕福な湖沿いは既に領主がいるため、与えてあげることができないのだが」


「ええ、ちょうど今森林開拓事業を進めているのですが、エルフなどの亜人の先住民がいたりして開拓できる森がなかったため困っていたのです」


 

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