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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第5章 北国の眠り姫
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85.蓮の葉の下の人

 身長20~30㎝くらい。顔が大きく三頭身くらいで、顔にはひげが生えておりおじさんのようだが、目が大きく可愛らしくも見える。幾何学模様の前合わせの服を着ていて、ストライプ模様の帯を巻いている。頭の上には、服と同じ柄の四角い帽子をかぶっている。

 そんな姿の小人が、インフェルノの家の庭にぽつんといた。

 右手に蓮の葉を傘をさすように持っていて、その葉に隠れて姿に気付きにくかったようだ。いや、それだけならいずれ気付いたはずだ。バーンに言われて注視しなければ気付かなかったのは、この小人は、気配を消す魔法を常時発動しているのではないかと思う。妖精などにそんな習性があると聞いたことがある。


 バーンとインフェルノの二人は、そんな庭先に現れた来客と見つめ合っていると、最初に口を開いたのはバーンだった。


「何か用か?」


「オマエもオレが見えるノカ?」


 小人はそう返事をした。やはり人間に発見される事は少ないのだろう。

 そう言って小人は数秒バーンたちを観察すると、二人の元へ近寄ってきた。


「イツもココにイるオ嬢サンの姿を最近見ナイんだが、知ラナイか?」


「フローレンスの事か?おまえはフローレンスを知っているのか?!」


 フローレンスの名前が出て、インフェルノは驚く。フローレンスがこの小人と知り合いだという事を知らなかったのだ。


「ソウだ。オ嬢サンはオレの友達。大きな人の中で、唯一オレと話がデキる友達だ」


 ”大きな人”とは、彼らから見た人間の事だろう。


「俺の名はインフェルノ。フローレンスの兄だ」


「オオ!オ嬢サンの兄上か。オレはポポロ。コロボックルの狩人だ」


「コロボックル?!」


 その名前を聞いて、インフェルノはさらに驚いた。その横でバーンが挨拶をする。


「俺はバーン。こいつの仲間だ。よろしくな」


「……おとぎ話の生き物ではなかったのか」


 驚いているインフェルノにバーンが質問する。


「何一人で驚いているんだよ?俺にも説明してくれよ」


「あ、ああ。コロボックルというのは、この国のおとぎ話に出てくる小人の事で、正確には小人という亜人種というよりも妖精の血も濃く入っている種族だ。エルフという種族にも妖精の血が入っているが、コロボックルはさらに濃い。恐らく初見で見えなかったのも、そのせいだと思う。臆病な種族であまり人間の前には現れないが、時々悪戯をしたりするという話を聞いたことがある」


「へぇ~」


「作り話だと思っていたが、こうして実物を前にすると、いかに自分が見ていた景色が狭いものだったかを、思い知らされるな」


「大きな人は凶暴ダカラな。関ワラない方がイイと言ワレテいる。ソレにオレタチは森に住ンデいる。大きな人は、アマリ森の中には入ッテ来ナい。オレは勇敢ダから、時々森の外を冒険するコトがアルんだ」


「それにフローレンスにコロボックルの友達がいたとは。知らなかった。ポポロと言ったな、妹は病気でずっと寝ているんだ。わざわざ会いに来てくれたのにすまないな。」


「ソウか。オ大事ニと伝エてオイてくれ」


「ああ」


「オ嬢サンに伝エようと思ッテいたコトがアッたんだが、オマエたち代ワリに聞イてクレるか?」


「もちろん」


「オレタチが住ンデいる森に、大きな人タチが木を切ッて入ッて来た。ドンドン木を切ルので、オレタチの住む場所が無クナッてきた。ダカらオレタチは、別の森に引ッ越スコトにナッた。オ嬢サンにオ別レだと伝エテほしい。」


「何?本当か?」


 それを聞いてインフェルノは考える。


「元々お前たちが住んでいた場所だろう?それじゃ開拓じゃなくて侵略と同じじゃん?」


 バーンが言いにくいことをズバリと言う。そのため悩んでいたがインフェルノは口を開く。


「お前たちの森へ入っていく事を止めさせようか?」


 森の開拓は、おそらく国家事業だろう。それを止めさせてしまうと仕事を失う者も出てくるし、大きな金銭が絡んでくる。またコロボックルという種族の存在が認知されていない以上、マインステート王国内の土地ならば人間のものとなっている。例え貴族と言えど、インフェルノにそれを止めさせる権利などない。だが住んでいる土地を侵略者に奪われる事は、インフェルノ個人の価値観として決して良い事だと思えなかった。

 だがポポロの返事はあっけらかんとしたものだった。


「いや、危険ダカらオレタチは大きな人と争うツモリはナイ。無理シナクてイイ。オレタチが出て行ケば万事解決スる。」


 インフェルノは、この小さな友人に対し力になれないことを恥じた。


「なんだかすまない」


「ソレデ、ソの木を切ッテいる大きな人タチに伝エたいコトがある。伝エてモラエるか?」


「ああ。もちろんだ」


「アノ辺リには、巨大ムカデギガントセンティピードが出る。危険。特に一匹異常にデカイノがイる。気を付ケるヨウに伝エてクレ」


 この小さな友人は、自分たちの棲み処を追われるというのに、その追い出した者をも心配してくれていた。


「ありがとう。伝えよう。ムカデと言えば、森の中では四十センチを超える個体もいると聞いたことがあるが、そいつはどれくらいの大きさなんだ?」


「ダイタイ、ココから……」


 ポポロは地面を指さすと、小走りに駆け出す。


「ココまでクラいの長サだ」


 ポポロが移動した距離は、およそ三メートルだった。


「ちょ、ちょっと待て?!そんなにデカいムカデがいるのか?!」


「ソウだ。アレは肉食でウサギやオオカミ、時ニはクマも捕食スる。オレタチは見ツカラないで生活デキるが、人間を見ツケたらスグに襲ッテクるハズだ。気を付ケろ」


 三メートルもあるムカデなど聞いた事もなかった。だが森の中は魔物もいるため未開拓の場所が多く、どんな生物がいるか把握できていないのも事実。


「これは急いだ方がよさそうだな?ポポロ。場所を教えてもらえるか?」

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