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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第4章 バスク帝国編 若き皇帝の花嫁探し
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77.仮面舞踏会10

 舞台の上では、箱から箱への移動へ成功し生還した奇術師が、会場の拍手に包まれていた。屋内のため、広場で計画されていた爆破はできなかったが、それでも見る者を十分楽しませるショーだった。

 フェルナンデスは、アルベルトのテーブルの女性陣のはしゃぎ方を見て満足すると、これでショーが終わりだと告げる。食事もメインディッシュが終わり、デザートビュッフェを用意しているとフェルナンデスが連絡し、舞台を降りる。

 会場の壁沿いにいくつか置かれた長テーブルの上には、小さなケーキなどが並べられており、各々それを取りに席を立つ。


「ニーナさん、デザートを取ってきましょう。」


 そう言って席を立とうとするアルベルトに「えー?自分で選びたい!」と答えて、ニーナたちは自分たちでデザートを取りに行く。

 セントラールの大事な客人の対応中は話しかけて来ないようにと釘を刺されていた貴族たちは、その隙を見逃さず、一斉にアルベルトのところにやってくる。やれやれと思いながら、アルベルトはその対応に追われた。


「このケーキかわいい!」


 ユーフォリアはそう言って、赤白黄色のカラフルなデコレーションをされた小さなケーキを皿に取る。


「かわいいけど味はどうなのかなあ?」


 とニーナに言われ、ユーフォリアはその場で一口味見をすると、それぞれの色を出すために使われた3種のフルーツの味わいが口の中に広がるのを感じ「おいしーい!」と感想を伝えた。それを聞いたニーナ、パンドラ、サリィは、迷わず同じケーキをもらう。そんな感じで4人は、わいわい騒ぎながらデザートを選んでいた。


「あまり騒いでいると、セントラールの品を疑われるぞ。ほかの3人はまだしも、お前は貴族じゃないのか?」


 ちょうど飲み物を取りに来て通りかかったインフェルノに話しかけられ、ユーフォリアは顔を赤くして反論する。


「い、いいのよ!どうせ今日は外交でもなんでもないんだから。楽しんだらいいのよ!」


「お前は良くても、周りはお前たちをセントラールという国の代表として見ているぞ。立ったまま食べるのも行儀悪くなさすぎやしないか?」


「ちょっと!人の事観察してんじゃないわよ!」


「観察などしていなくても、大きな声で『おいしい』なんて言ってれば誰でも気付くだろう。」


「う、うるさいわね!余計なお世話よ、このシスコン野郎!フーちゃんに言いつけてやるんだから!」


「な、何をだ?!」


「お兄さんが私の事をいやらしい目で見るのって。」


「な…、事実無根だ!」


 そんな二人のやり取りを見ていたパンドラが二人に話しかけてくる。


「あら~、いつの間にか仲良しになっちゃったのね?」


 今夜も少し酔っているようだ。(※パンドラは酒癖が悪い)


「ち、違います!」


 全力で否定するユーフォリアに、パンドラはクスクス笑う。そしてインフェルノに、


「インフェルノ。この子も自分が貴族の娘だという事を理解してるわ。もういい歳だから、結婚の話もいくつか出てるそうよ。そのうちこの子の意思じゃなく、親同士が決めた人の所へ嫁いでいかなければいけないかもしれない。そしたらもう自由はないの。こうやって羽目を外して楽しめるのは今だけなのよ。分かってやって。あなたの妹にも、好きなように楽しく毎日をすごさせてあげたいと思うでしょ?」


 パンドラにそう言われ反省したのか、インフェルノはユーフォリアに謝る。


「その通りだな。窮屈な毎日ばかり送っているのは可哀そうだ。悪かった。」


「このシスコン野郎…、妹を例えに出すと効果抜群だな?!」


 そんなインフェルノを、白目で見つめるユーフォリアだった。


 やがて4人娘のところに、バスク帝国の貴族たちが挨拶にやってくる。セントラールのどこから来たのか?あなたたちはどういう身分なのか?自分たちはどういう人間だ、とか。先ほどまでのアルベルトとの親しげな雰囲気に、万が一この中からアルベルトの妃が誕生した時に取り入ろうと必死なのだ。

 辟易しつつ対応する4人娘。


 その場を離れ席に戻ろうとするインフェルノの所に、バスク帝国の宮殿騎士ブルーノが話しかけてきた。


「失礼。もしかしてあなたは、マインステート王国のインフェルノ殿ではないですか?」


「?!いかにもその通りだ。そちらは?もしかして昨夜、皇帝の影武者をしていた方か?」


「ご明察です。昨夜、遠距離攻撃魔法で助けてくださったそうですね。その節は、ありがとうございました。私はバスク帝国宮殿騎士、スペード騎士団のブルーノと申します。インフェルノ殿の事は、以前北方連合の剣術大会にて拝見したことがあります。剣術だけでなく、まさか魔法まで使われるのですね。」


 ブルーノ・サントオークの属するスペード騎士団は、戦闘専門の騎士団である。ブルーノは剣一筋で生きてきた武人で、バスク帝国とも友好関係にある北方連合の剣術大会を見学しに行ったことがあった。その時圧倒的差で優勝したのがインフェルノだったため、特に印象に残っていたのだった。


「いや、魔法は道中暇つぶしに教わっただけだ。それに剣術についても、実戦となれば様々な武器があるし、まだまだ俺など…。それより、そちらも騎士であろう?そんなに畏まらなくても」


「いえいえ、陛下のご客人でいらっしゃいますから。ところで、なぜあなたがセントラールの皆様とご一緒なのですか?マインステート王国とセントラール王国との間に、国交があるとは存じませんでした。」


「いや、セントラールとは国交はないのだ。実は自分の妹が病気で、個人的にニーナ殿が私の妹を助ける手助けをしてくれることになり、わが国まで案内をしているところなのだ。」


「なるほど。それでセントラール王国の方がこの街にいらしていたのですね。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 席に座ったまま辺りを見回すバーンの横にニーナがやって来て、インフェルノの席に座った。


「ほら、分けてやるぞ。」


 と、持ってきたデザートを差し出す。


「なんだ?こっちに座ってていいのか?」


「あっちの席は満員御礼みたいだからな。」


 と、ニーナが指さす先を見ると、アルベルトが大勢に囲まれていた。


「なるほどな。」


 バーンは苦笑する。


「バーンは飲んでないのか?」


 テーブルの上にあるバーンのグラスには、サリィと同じオレンジジュースが置かれていた。


「ああ。何かあった時に、酔っぱらってたら対応できそうもないしな。」


「何か起こりそうなのか?」


「もしかしたらね。」


 バーンは含みを込めた返事をした。


「皆さま、宴もたけなわですが、隣の部屋に舞踏会の準備ができました。どうぞご移動をお願いいたします。」


 この街の領主ローガンの声に、移動を始める。バーンの横に座るニーナにいつの間にか抜け出してきたアルベルトが手を差し出し、「ニーナさん、行きましょう。」と声を掛ける。ニーナは手を取り立ち上がるが、


「食後に運動はきついな…。」


 と、ぼやく。


「食いすぎだよ。」


 と、バーンが呟きながら立ち上がると、ニーナがバーンの進行方向を塞ぐよう立つ。そして、バーンの脛につま先蹴り。「痛っ!」と、脛を押さえて痛がるバーン。


「なんか、ちょっと前にも同じことがあったような…。」


 ニーナたちはバーンを置いて、先に隣の部屋へ行ったのだった。

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