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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第3章 ウィル・オー・ザ・ウィスプ
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59.ウィル・オー・ザ・ウィスプの棲む村5

 滝の裏側はえぐれたようになっていて、遠目からでは分からなかったが、人が通れる空間があった。激しい水しぶきの中、俺たちは滝の横の崖から滝の裏側に向かって歩いてゆく。そこに辿り着くと、滝の裏側は奥へ続く洞窟となっていることが分かった。


「外は月明りがあったから夜道も歩きやすかったが、この中はさすがに真っ暗だな。ランタンを持ってくるべきだったな。」


 俺が今夜はここまでかという意味でそう告げると、インフェルノが俺に向かって言った。


「その剣に火を灯せばいいじゃないか。」


「おま、フレイムソードは照明器具じゃねえよ!」


「結果は同じだろう。」


「このやろう…。」


 俺をバカにするために言っているのか、悪気はないのか全く分からないが、仕方なくフレイムソードに火を灯し明かりの代わりにする。


「フレイムソード!」


 そう唱えるとボッという音と共に刀身に火が点き、洞窟の中を照らした。不服だがそのまま剣を前方にかざし、ランタンの代わりにする。それを見たジュリアの「すごい…」という呟きに、俺は少し鼻を高くする。


「バーン、なんだかこの前より火が小さくないか?」


「ん?ああ。別に魔力をケチってるわけじゃなくて、今の俺の魔力だとこんなもんなんだろう。」


「俺と戦った時に、激しく燃え上がっていたのはなぜだ?」


「あの時はニーナから魔力を借りてたからな。」


「……?!まさかお前…。いや、そうか。つまり俺が負けたのはお前じゃないという事だな。」


「何言ってんだよ!あの時おまえを倒したのは俺だろ?俺とお前は1勝1敗だ。」


「何を言っているは、こっちのセリフだ!俺はお前に負けたのではなく、お前に魔力を貸したあの魔女に負けたのだ。お前とは1勝0敗だ。」


「ふざけんな!それにお前こそ今は魔法の鎧も剣もないんだから、今やったら俺の方が一方的に強いだろう?」


「おいおいおいおい。普段から魔女に頼りっぱなしで、自分まで強くなっちゃったって勘違いしてるのか?そこまで言うなら、ここでもう一度決着をつけるか?!」


「やんのか?!」


「ちょっと二人とも、こんな時に止めてください!!!今はウィル・オー・ザ・ウィスプを追っているんでしょ!」


「む?!」


「ん?!」


 ジュリアに諭されて、俺たちは冷静になる。

 やれやれ。インフェルノに煽られちまったぜ。

 不機嫌そうな顔で、インフェルノは剣を腰の鞘に戻す。こいつ俺に負けたことを根に持っているようだ。


「さて、それじゃあ行くか。」


 俺たちは洞窟の奥へ向かってゆっくり歩き始めた。

 足場の岩はデコボコしているが、それでも人間が問題なく通れる広さがある。

 やはりウィル・オー・ザ・ウィスプはこの奥へ入って行ったのだろうか?

 少し進んだところで、俺は足元に変な感触を感じた。俺の足元にあったそれは、俺が踏んだことによりパキッという音で壊れた。


「ん?」


 何を踏んだのか確認するために、フレイムソードで足元を照らす。

 白い棒状のそれは、おそらく骨だった。そして炎に照らされたその骨の全体像が確認できた瞬間、声を詰まらせる。


「………!!!」


 横たわるそれは、人骨だった。踏んだのは脛の部分の骨のようだ。


「白骨化しているという事は、古い死体のようだな。」


「この洞窟で昔なにがあったんだろう?」


 古い死体のため、今回の俺たちの事件とは関係がなさそうだ。再び奥へ向かおうと思い、フレイムソードを再び洞窟の奥へ向けてかざす。すると、奥の方にも人骨と同じ灰色のかたまりがあるように見えた。

 足元に気を付けながら、俺たちは再び歩き出す。そして奥にあった灰色の物体がはっきり見えるようになってくると、それが何か気付いた全員が言葉を失った。


 洞窟の中にあったのは、人骨の山だった。ここで死んだのか、死んでからここまで運んだのか分からないが、人骨が大量に廃棄されている。中には崩れて原型を保っていないものもあった。とても古い死体なのかもしれない。


「なんだか恐ろしいな…。」


 落ち着いてからそれに近寄り、人骨の山を照らして確認する。もしかしたらウィル・オー・ザ・ウィスプはこの死体たちの怨念が固まって生まれたのかもしれない。

 人骨の山がある空間は、洞窟の中でも広い部屋のようになっていた。ウィル・オー・ザ・ウィスプの気配がないか、部屋の周囲を照らして確認していると、岩陰にまだ新しい死体を見つけた。


「おい!」


 俺が二人を呼び止め、その死体に近寄ってゆく。それはまだ服や脛当て胸当てなどの装備を付けた状態の男だった。

 胸に銀色のドッグタグを付けている。それを見れば名前も分かるだろうが、その前にジュリアが声を上げた。


「イアン!!!」


 この男が死体の見つかっていなかった最後の一人、シルバー階級クラス冒険者のイアンで間違いなさそうだ。なぜここにいるのか分からないが、この洞窟の中でウィル・オー・ザ・ウィスプに殺られたのだろうか。


「おい、この傷口…。」


 インフェルノに言われて見ると、イアンの腹部には剣の刺し傷があり、その周りは血液で真っ黒になっていた。ウィル・オー・ザ・ウィスプの攻撃を受けたインフェルノの服のような、焦げ跡はない。


「どういう事だ?彼はウィル・オー・ザ・ウィスプに殺られたんじゃないのか?」


 見ればイアンの身体の横に血の付いた短剣が落ちていた。短剣で刺されたという事は、イアンはウィル・オー・ザ・ウィスプに殺られたんじゃないという事か?その時イアンの身体の異変に気付く。


「うぅ………」


「まさか?!」


 慌ててイアンの身体を確認する。


「まだ息がある!!!ジュリア!ポーションをありったけ掛けろ!!!」


「はい!!!」


 回復薬ポーションによってイアンの傷口は塞がったが、ひどく衰弱しており、助かるかどうか分からない。そもそも今まで生きていたのが奇跡だ。


回復魔法使いヒーラーのローラなら治せるかもしれません!宿屋まで運ぶのを手伝ってもらえませんか?」


 反対する者はいなかった。俺たちはウィル・オー・ザ・ウィスプの追跡をそこで中断し、冒険者のイアンを宿屋まで運んだ。



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