50.王都セントラールの一番長い日15
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セントラール王城でニーナとパンドラの歓迎会が行われている中、俺とニーナが二人でバルコニーで話をしていると、そこに人影が現れた。
「あ~ら?お二人さん、なんかいい感じじゃない?こんなとこでこっそり何やってんの~?」
突然声を掛けられて俺たちはびっくりする。パンドラだ。パンドラは片手にワインの入ったグラスを持ち、反対の手でフローラ王女の肩を抱きながら歩いてくる。ちょっと、その態度は王女に失礼じゃないのか?と思ってパンドラの顔を見ると……、顔が真っ赤だ!
「パンドラ?酔っぱらってるのか!」
「あによ~?あんた、私のニーナちゃんにちょっかい出してんじゃないわよ~?」
ヤバい!酔っ払いが絡んできた!
「バ~ン?あんた勘違いしちゃダメよ~?ニーナちゃんにはね~、好きな人がいるんだから~。」
「ちょっ!!!こらパンドラ!!!余計なことを言うな!!!」
真っ赤な顔をしてパンドラの口をふさごうとするニーナ。それを意に介さずケラケラ笑うパンドラ。
「えっ?!何それ?聞きたい。誰なの?」
「ふっふ~ん。どうしても知りたいって言うなら、教えてやってもいいけど~。」
「だから余計なことを言うなって!!!」
「ニーナちゃんにはね~、いつも守ってくれていた騎士のお兄さんがいたのよ~。」
「わー!わー!」
「それって古代超帝国時代の話か?」
「そうよー。その人は戦争で亡くなっちゃったんだけどね~。生まれ変わってまた会った時に、すぐに分かるようにって、ニーナちゃんは今の身体で年を取るのを止めたのよ。健気よね~。」
「わー!バカバカ!恥ずかしいだろ!!!」
恥ずかしさで顔を真っ赤にするニーナと、悪い顔でニヤリと笑うパンドラ。
「え~、素敵ですねえ~。」
パンドラの横のフローラ王女が、目をキラキラさせてそう言った。
「へえ~。」
なんだかニーナの意外な一面を見た気がした。
「こら!笑うな!」
「いやいや、笑ってないよ!俺はそこまで誰かを好きになったことがないから、素敵だなあって思っただけだよ。」
「嘘だ!絶対バカにしてる!バーンのくせに!」
「ニーナちゃんをバカにするなんて許せない!」
「許せないって、元はと言えばパンドラが全部しゃべったからじゃないか!俺を悪者にするなよ!」
「何よ!あんたがニーナちゃんにデレデレするからじゃないの!ニーナちゃんの大好きなあの人はね~、みんなから慕われてて、優しくて、とっても強くて、それにあんたと違ってすごくいい男だったんだからね!」
「デレデレしてないし、さりげなく人の容姿を貶すなっ!!」
俺が凹んだ顔をしていたのか、優しい王女が俺をフォローしてくれる。
「だ、大丈夫ですよ。バーンさんはそんなに不細工ではないですよ。決してかっこいいわけじゃないけど、不快感のある顔ではないですよ。」
「王女…全然フォローになってないからそれ……」
やれやれ、パンドラがこんなに酒癖が悪いとは…。まだ余計なことをしゃべろうとしているパンドラの口をニーナが必死で手で塞ぐので、パンドラはうーんうーんと唸っている。
「主賓の二人がこんなとこにいても仕方ないだろう。そろそろ中に戻ろう。」
俺はそう言って、三人を大広間に連れ戻す。
俺が一歩部屋に足を踏み入れた時、そこでばったり出くわしたのは国王陛下だった。
「へ…陛下!申し訳ありません!」
俺はうっかり、お付きの者を引き連れ歩く国王の進行方向を塞ぐように飛び出してしまった。こんなに失礼な事はない。こういう行為は、貴族によっては激怒する者もいるという。思わず数歩戻り、片膝を付き謝罪する。いくらニーナが国王の上に立ったとしても、俺はあくまで一介の剣士。国王陛下なんて顔を間近で見るのも今日が初めてなくらい、俺にとっては雲の上の存在なんだから。
「おお、そなたはバーン!よいよい。顔を上げてくれ。まだそなたには直接礼を言ってなかったな。此度はご苦労であった。」
「恐れ多いです!ありがとうございます。」
そんなビビる俺の予想に反して、国王陛下はご機嫌だった。今回の立役者の一人として認めてもらえていたみたいだ。良かった。一応立ち上がるものの、また頭を下げる。
「そういえばアークより聞いたぞ。そなた騎士団への入団を希望しているとか?」
「あ、はい。アーク様には個人的に剣術のご指導をいただいていまして、常々アーク様に私の騎士団入団を推薦していただけないかとお願いしています。」
それを聞いた国王は、笑顔で言葉を続けた。
「そうかそうか。この度のそなたの活躍は聞いている。王国最強の騎士アークをも倒した異国の戦士を、そなたが打ち破ったそうだな!だとしたら、そなたこそ現在王国最高の剣士だということだ。そんな腕のある若者こそ、我が騎士団にふさわしい。しかも自ら志願してくれているというのであれば、断る理由など一つもない。どうだろうバーンよ。私の推薦で、セントラール騎士団へ入団してくれないだろうか?」
青天の霹靂とはこういう事を言うのだろう。俺は言葉を失った。
ずっと憧れていた騎士団入団の夢。アークさんみたいな立派な騎士になる夢。貴族でも何でもない自分でも、アークさんと知り合いというコネを使えばいつかなれるのではないかと思っていたが、まさか国王陛下から推薦をもらえるなんて!とても光栄な事だ。
あまりに突然の言葉に、俺は言葉を失ってしまった。
「どうした。あっけにとられた顔をして。まさか私の誘いを断るつもりではないだろうな?」
とても喜ばしい事だが、同時にアークさんの言葉が頭に浮かんできた。『お前はもっと色々な世界を見て来た方がいい。俺のコピーではなくお前自身になれ。』俺は今までセントラールの街の中の出来事しか知らなかった。セントラールの街の外、フィックスの街や、遠くの世界から来た強敵。これから向かおうとしているインフェルノの故郷。それらの方が、今まで憧れていた騎士団入団の夢よりも魅力的に思える自分がいた。
アークさんの言っていた言葉の意味って、こういう事だったのかもしれない。
「陛下…。騎士団へのお誘いありがとうございます。ですが、俺はやっぱりお断りさせていただきたいと思います。」
「何と!?」
その返答には、国王よりもその横のお付きの者たちの方が驚いた。そりゃそうだろう。国王直々の誘いを断るなんて、ちょっと考えられない事だ。それこそ失礼極まりないというか、怒られても仕方がない。でも俺は決めたんだ。
国王は先ほどまでのご機嫌な笑顔と打って変わって、俺の顔を真剣な顔でじっと見つめている。まるで俺の本意を探るかのように。
するとその時、ずっと横で一部始終を聞いていたニーナが割り込んできた。
「国王よ、すまないな!バーンは私に仕える騎士だ。私に勝手に王国に仕える事はできん。」
「な!ハッハッハッ!そうでしたかニーナ様!勝手にニーナ様の騎士をスカウトしてしまって申し訳ありません!でも、だとしたら私にとってもありがたい話です。王国を守る魔法使いニーナ様の騎士ならば、結果我が国のために力を貸していただけるという事ですから。」
「うむ!」
国王とニーナが笑顔で笑い合う。
「バーン君、そうとは知らずに失礼な誘いをしてしまって申し訳なかったね。フフフ。とても嬉しい反面、君みたいなとても人材を国のものにできなかったのは残念だよ。もっと早くに騎士団へ誘っておけばな。ハハハ。しかし愉快だ。これからもよろしくな!」
「は、ハイ!」
俺の肩をポンと叩くと、国王は楽しそうに笑った。
そしてその後インフェルノの話を国王に伝え、明日の朝すぐに旅立てるよう支度をしてもらうお願いをすると、国王は快諾しその場を去った。
「ところでニーナ、俺がお前の騎士になるっていう契約って、そんな重要なもんだったの?」
「あたりまえだろう?お前はもう私の許可なしに、どこかの国に就職はさせんぞ。」
インフェルノを倒す力を貸してもらうために、気軽な気持ちで契約しただけだったんだけど………ま、いいか!
こうして、このセントラールの街を脅威が襲った、とてもとても長い一日が終わった。
第二章 完
これにて第二章本編完結となります。
この後、閑話、登場人物紹介を1話ずつ投稿予定です。
拙い文章ですが、いつもお読みくださりありがとうございます。
もしよろしければ作品評価をいただけると嬉しいです。
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