47.王都セントラールの一番長い日12
その夜、俺とニーナとパンドラの3人は、国王との謁見の儀式に出席するように言われた。今回の騒動についてその謁見で城内の者に何があったかを話し、今回の騒動は終わったと説明するためだ。
謁見の内容については、事前に宰相から説明があった。国王も既に今回の事件の全容を、だいたい把握しているらしい。サイコパワーという邪法を使う三つ目の男トライアイズが、インフェルノを操って王国の秘宝龍の宝珠を奪わせようとしたこと。インフェルノはバーンが正門前で撃退したが、別行動をしていたトライアイズが王城内部に潜入し龍の宝珠を手に入れてしまったこと。龍の宝珠を手に入れたトライアイズは強大な力を手にしてしまい、セントラールの街に暗黒エネルギーの塊を落とし破壊しようとしたが、それをニーナが阻止しトライアイズも撃退した事。それが今回の王都襲撃の全容だ。
謁見の儀式では、それらの内容について国王より集めた者たちに説明を行い、そしてニーナたちの功労を称えるのが目的らしい。
「面倒くさいな」とニーナが苦笑いしていたが、宰相は少し怯えながらも厳しい表情で「出てもらわねばなりません」と強く言った。
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国王との謁見の儀式の準備がされている間、俺たち三人は別室で待たされていた。
長椅子に座ったニーナは、両足を前後に振りながら、なんだか寂しそうな顔をしていた。
「結局国中に私が魔法使いだという事がバレてしまったな。」
俺がニーナを千年の森から連れ出してから、ニーナが魔法使いであること、パンドラが吸血鬼であることは隠してきた。今の世界では魔法使いという職業が珍しく、魔法を使いこなせるようになるまで長い年月を有する。そのため王国内では魔法使い=老人というイメージがあり、見た目は少女のニーナが魔法使いであることが知れると騒ぎになるのを恐れてだ。パンドラが吸血鬼であることは、当然吸血鬼=悪者というイメージがあるからだ。
実際は二人とも正義感が強く、弱いものに優しい、まさに正義の味方だ。
「バーン。お前に森から連れ出してもらって、魔法使いであることを隠して過ごした1か月間、楽しかったな。サリィやパンドラたちと一緒にカフェの店員をやってて、もし私が魔法使いとして生まれてこなかったら、こんな風に毎日を過ごしていたのかなって思ったよ。少しでもそんな体験ができて感謝してるよ。」
「えっ?!や、カフェは俺関与してないし、ニーナたちが始めたことだし、俺はそんな…」
改めて感謝の気持ちを伝えられると戸惑ってしまう。それと同時に、もう正体を隠して暮らすことは難しいであろうことと、王国のニーナに対する立ち位置がどうなるのかという不安も感じた。
するとパンドラが恐ろしいことを呟いた。
「ねえ、もし私たちの存在もこの国の脅威になるからと、国外に追放されたり、処刑されたりすることになったらどうする?」
パンドラはニーナを森から連れ出す前から、森と街の行き来をしていた。だから人里で吸血鬼であることを恐れられ迫害されたことがあるのかもしれない。いずれにせよ人間が絶対的に信用できるとは限らないという事を知っているのだ。
「そんな事…、だってパンドラは国王と姫を、ニーナは街を救った英雄だろう?」
俺は慌てて楽観論を言った。普通に考えて称えられる他は考えにくい。でも、俺は国王がどんな人なのか良く知らない。自分の制御できない大きな力を前にした権力者がどういう行動に出るかと考えると、当たり前が当たり前ではない気もしてきた。
「その時はあれだ。3人でとこかへ逃げよう。」
ニーナは笑顔でそう言った。むしろそれを望んでいるかのように。
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王城の会議室では、激論が交わされていた。王国の危機を救ったニーナとパンドラの今後の扱いについてだ。
国王はまだ自分の意見を言えずにいた。判断に困っているようだ。
騎士団長アークを始めとする肯定派は、国を救った英雄として最大限の歓迎をすべきだと言う。
また肯定派でも一部の者は、魔女の力を利用して国益とすべきと言う。
宰相を始めとする反対派は、制御しきれない力は危険であるため、処刑、もしくは封印できる方法を考えるべきと言う。
また、コントロールできないなら難癖をつけて国外追放すべきという意見や、それでは禍根を残し後で王国に不利益をもたらしかねないという意見もあった。
いずれにせよここまで意見が割れてしまっては、ニーナとパンドラの処遇については、国王の最終判断を仰ぐしかない。
そこで、魔法機関最高責任者の魔法使いセガールが口を開いた。
「みなさんは、あの二人の人柄についてどうお考えかな?」
この場にいる者たちが話しているのは、二人が持つ力に対しての対応方法だけだった。その力を扱う者の人格について語る意見はまだ出ていなかったのだ。
「ご存知の通り、魔法というものはその力の行使者によって善にも悪にもなる。人助けにも役に立てば、私利私欲のために使ったり、人を傷つける事にも使われる。大いなる力を使うには、その行使する人間の人格こそ重要だというのがワシの意見です。」
「ならば間違いない。彼女たちは自分の利益と関係なくこの国を護ってくれた。彼女たちの心は善だ。」
人の気持ちは変わるなどという悲観論も出たが、概ね二人を支持する声が大きくなった。そして最後にアークが発言した。
「私は少しだけ彼女たちと話しましたが、信用に足る人物です。」
その言葉で会議に参加しているほぼすべての人物が納得をした。
そして最後に国王が、その重い口を開いた。
「いや、違うぞセガール。」




