40.王都セントラールの一番長い日5
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少し時間を遡り、場所は千年の森。そこではバーンとニーナが魔法の修行をしていた。
「いいかバーン。今からお前が覚えなくてはいけないのは、火の精霊魔法だ。それ以外はとりあえず必要ない。だから集中して炎を念じ続けろ!」
「火球!」
先ほどからずっと続けているのは、ファイヤーボールの魔法だ。
この千年の森の奥は魔力に満ちており、バーンがその少ない魔力を使い切っても少し休めば回復する。そのため王城では指先に小さな火を灯しすぐに魔力が尽きてしまったバーンだが、この森で魔力を回復しながら何度もその魔法を繰り返すうちにだんだんとより大きな炎を起こすことができるようになってきた。そして今では直径5cmほどの火球を使えるようになってきた。
通常で考えれば驚くべき程の習得スピードである。しかし即席のその魔法は、王城で出会った少年の放つ火球にもまだまだ劣るレベルだった。
「はぁ、はぁ……、」
「いったん休むか?」
「いや、続ける。早くしないとあいつが…。」
「ちょっと様子を見てみるか?」
ニーナがそう言うと、遠視窓の魔法で王都の様子を映し出す。視点を街の正門へ移すと、人だかりの真ん中に二つの甲冑姿の男の姿が見えた。仁王立ちする赤いマントの甲冑の男と、大地に伏している白い甲冑の男は、自分の師匠、セントラール王国騎士団長アークだった。シンエモンさんとビャクヤさんがアークさんを救出する。
「アークさんっ!!!」
バーンは叫んだ。こちら側から向こうに声は届かない。
「ニーナ!もうダメだ!ゲートを開けてくれ!」
「まだ今のお前が行っても勝てんぞ!」
「だけど…」
「バーン、この短期間で魔法を上達させるのはこれが限界だ。だが一つだけ方法がある。バーン、私の剣となる気はないか?」
「え?元より俺はいつでもニーナのためなら剣を振るうつもりでいるけど?」
「そうじゃない!私の騎士となって仕えるつもりはあるかって聞いてるの!」
「あ、ああ。全然構わないよ。」
「コイツ意味分かってるのかなあ……?」
「何をブツブツ言ってるんだ?ニーナの騎士にでも何でもなるから、俺に力を与えてくれ!」
「分かった。それじゃフレイムソードを貸して。」
言われるがまま剣を出しニーナに手渡す。自分が手放すといつものように消えてしまうかと思ったが、手渡しだとフレイムソードは消えずにニーナの手に持たれる。どういう仕組みになっているのかまだよく分からない。
ニーナは少し重そうにそれを両手で持つと、俺に片膝を付くよう指示するので素直に従う。するとニーナはフレイムソードを俺の肩に乗せた。
「バーンよ。私の騎士となり、今後私のためにその剣を振るえ。」
「…。」
「返事しろ!」
「あ、はい!」
「よし!これで私とおまえの間に主従関係が構築された。主人である私から従者であるお前に魔力の供給が可能になった。」
「本当か?」
「ちと容量オーバーな魔力を送るぞ。酔うなよ?目をつぶれ。」
俺が目をつぶると、ニーナの華奢な手が俺の顔を抑える。そしてまた俺の唇に彼女の唇が触れる感触があると、口移しで溢れるほどの魔力がニーナから送り込まれてくるのを感じる。
「これは?」
まるで強い酒を飲んだ時のように、体中が火照るのを感じる。風邪を引いた時のように顔が熱い。
「今お前の体の中に今までなかった魔力がみなぎっている。魔力を暴れさせるな。全身の魔力を鎮静化させコントロールできるようにしろ。」
ニーナの説明はさっぱり分からないが、要するに落ち着けってことだろう。深呼吸を何度かして、心を落ち着かせる。こういうところは剣の修行と同じだ。しばらくすると全身の熱気が収まってきたように感じた。
「そうだ。それでいい。今ならお前の力でゲートも開けるだろう。」
そう言ってフレイムソードを返される。遠視窓の向こう側では、セントラールの正門が破壊されてしまった。急がなければ。
「フレイムソード!」
受け取ったフレイムソードに炎を宿す。そして転移門を開く。
「ゲート!」
切り裂いた空間の向こう側にはセントラールに乗り込むインフェルノの姿が。迷わず俺はゲートの向こう側に飛び込んだ。
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